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連載特集

オンライン診療活用でコロナ流行下でも適時に心臓治療を

公開日

2020年04月27日

更新日

2020年04月27日

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2020年04月27日

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感染者の増加が止まらない新型コロナウイルス。院内での感染などで従来の外来診療に影響が及ぶことを防ぐため、2020年4月13日、「感染が収束するまで」の時限措置として、これまで一部の再診患者に限られていたオンラインを利用した保険診療が、一部を除いて全面的に解禁されました。

心臓病などで普段から病院にかかっている方の中には、感染リスクを不安に思い、病院への受診をためらう方も出ているようです。しかし、受診控えが恒常化すると、本当に必要なときに適切な治療が受けられない恐れがあります。では、直接病院に行かずとも診察が受けられるオンライン診療が活用できるとすれば状況はどう変わるでしょうか。他施設とも連携しながらオンライン診療を積極的に活用している東京ベイ・浦安市川医療センター心臓血管外科部長、虎の門病院循環器センター外科特任部長の田端実先生に、なぜ心臓病の治療にオンライン診療が有用なのかを聞きました。

オンラインで対応可能な患者さんのニーズは

――コロナウイルス感染対策で“ソーシャルディスタンス”の重要性が叫ばれる中、オンライン診療が話題になっています。

田端先生 ご存じの通り、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐには、人と人との接触を減らすことが非常に大切です。オンライン診療は、スマートフォンやカメラ付きのパソコンなどを通じ、自宅にいて医師の診察を受けることができます。患者さんの外出や、院内での人と人の接触を減らすことで、感染拡大を予防するメリットがあります。

画面越しにできることは限られますが、コロナウイルスへの感染が疑われる方への対応はもちろん、通常の診療でもオンライン診療は有用です。

――先生は以前よりオンライン診療を取り入れていました。

田端先生 以前から無料のメール相談や、オンラインでのセカンドオピニオン外来を行ってきました。心臓血管外科といえば、心臓や大動脈の手術をする診療科ですが、我々の患者さんにとっても、オンライン診療の果たす役割は大きいと実感しています。

――心臓血管外科でオンライン診療がどのように役立つのでしょうか。

田端先生 心臓血管外科を初診で受診する患者さんのほとんどは、すでに他科や病院で診断がついており、心臓血管手術が必要、あるいは必要かもしれないといわれている患者さんです。そのような患者さんのニーズは、「手術が本当に必要なのかどうかを知りたい」「どの治療法が最適なのかを知りたい」「手術の詳細な方法やリスクのことを知りたい」「まず外科医の人となりを知りたい」――といったところが中心になります。これらのニーズにはオンライン診療で十分対応できます。患者さんの中には心臓外科の外来受診に「ハードルが高い」「怖い」というイメージを抱かれている方もいらっしゃるので、まずその病院の様子を知りたいという患者さんのニーズにも合っているのではないかと思っています。また、心臓手術を受ける患者さんはより良い治療を求めて遠方からも多くいらっしゃいます。遠方の患者さんにとっては、わざわざ飛行機や新幹線に乗らずともまず気軽にオンライン診療で医師と話ができるというメリットがあります。

遠隔診療の様子

セカンドオピニオンで別の治療法情報を提供も

――オンライン診療が具体的に有用だった事例はありますか?

田端先生 私が以前行ったオンラインセカンドオピニオンで印象に残っている事例があります。

2週間後に他施設での手術を控えた高齢患者さんのご家族からの相談で、「今度手術を受ける予定の病院では、胸骨を切って心臓を手術する方法しかないと言われた。他の方法は本当にないのでしょうか?」とのことでした。患者さんの詳しい容体などを聞いたうえで、実際には低侵襲心臓手術(MICS)やカテーテルといった胸骨を切らない治療法もあることをお伝えし、最終的にその患者さんは地元の別の病院でカテーテル治療を受けることになりました。当院まで来ていただくこともできましたが、地元にカテーテル治療を行っている良い施設があったので、そちらをお勧めしました。患者さんにとっては、オンライン診療を活用して複数の治療オプションの情報を得て、よりご自身に合った治療を受けることができた事例といえます。

これはあくまで一例ですが、全国にある全ての病院が、あらゆる治療の選択肢を患者さんに説明した上で治療法を決定しているわけではないのが事実です。オンライン診療には、そのような情報量の格差を埋めるという役割も期待されるのではないでしょうか。

通常診療萎縮のリスク

――新型コロナウイルス感染対策で外来の受診を控えている患者さんも増えてきています。どのようなリスクが想定されますか。

田端先生 心臓病などで普段から病院にかかっている方の中には、感染リスクへの不安から病院への受診をためらってしまっている方がいるかもしれません。手術が必要と言われたものの病院へ行くのが怖くてためらっている患者さん。手術が必要な患者さんを抱えているにもかかわらず、コロナを考慮して病院への紹介を控えている医師。そして、外来や手術診療の縮小を余儀なくされている病院――。しかし、受診控えで通常診療が委縮すると、本当に必要なときに適切な治療が受けられないリスクが出てきます。本来であれば普通に手術すれば助かるはずの方がそのチャンスを逃してしまうようなことは、絶対に避けなければなりません。患者さんが適切な時期に適切な治療を受けるためにも、オンライン診療の活用が重要です。

――東京ベイ・浦安市川医療センターや虎の門病院ではどのような形でオンライン診療を行っていますか。

田端先生 東京ベイ・浦安市川医療センター心臓血管外科ではさまざまな形でオンライン診療を行っています。これまでも行っていた、メールを介して医師とコンタクトを取れる「無料オンライン相談」、自由診療の「オンラインセカンドオピニオン外来」に加えて、今回解禁された「初診オンライン診療」を4月20日から開始しました。それぞれ特徴があるので、患者さんのニーズに合わせて使い分けてもらうことが可能です。虎の門病院では、まだオンライン診療を行っていませんが、以前より「無料オンライン相談」を行っており、多くの患者さんに活用していただいています。

また、これらとは別に医師向けの相談窓口である「無料オンラインコンサルト」を始めました。

――医師向けのオンライン相談も窓口は同じですか。

田端先生 オンラインコンサルトの窓口は「ハートアライアンス」のウェブサイトに設けています。ハートアライアンスは、東京ベイ・浦安市川医療センター、虎の門病院、聖路加国際病院の心臓血管外科チームが連携し、多職種で構成された病院の垣根を越えたハートチームです。

オンラインコンサルトでは、3病院の心臓血管外科専門医が心臓血管手術の適応やタイミング、手術方法やリスクに関する疑問にお答えします。心臓血管手術について専門医に相談する機会がない医師や、新型コロナウイルスが拡大する昨今の状況を鑑みて外来への紹介を控えている医師にも気軽に相談していただきたいと思っています。

コロナとも心臓病とも闘いが必要

――感染対策と心臓病治療の両立は可能でしょうか。

田端先生 新型コロナウイルスは、私たちが皆で力を合わせて闘わなければならない相手です。ただし、それと同じように、私たち心臓血管外科医や私たちの患者さんは、心臓病とも闘わなければなりません。両立は難しい課題ですが、新型コロナウイルスへの対策も、心臓病の治療も、どちらも大切なのです。

現在は新型コロナウイルスの影響で、日本を含めた世界中の医療界で本来必要なコミュニケーションまでもが委縮してしまっていると感じます。必要なコミュニケーションを補っていく意味でも、オンライン診療やオンラインコンサルトの活用が重要になるのではないでしょうか。

オンライン診療や複数の病院間連携を最大限に活用して、新型コロナウイルスと心臓病の治療を両立していきたいと思います。

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