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連載特集

新型コロナウイルスで変容する医療と社会に「あるべきオンライン診療」の条件は

公開日

2020年05月19日

更新日

2020年05月19日

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2020年05月19日

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新型コロナウイルス感染症のリスク減少を目的として、厚生労働省は2020年4月24日、オンライン診療に対応しているおよそ1万件の医療機関のリストを発表しました。ところが、このリストでは「新型コロナ出現後の社会」にも対応できるオンライン診療を行っている医療機関を一目で見つけることはできません。どこに問題があるのでしょう。そして、新型コロナウイルス感染症の終息後、オンライン診療は日々の診療にどのように組み込まれるのでしょうか。さらに、地域医療に携わるかかりつけ医は、オンライン診療そのものの拡大が見込まれる今後、どのように対応するべきでしょうか。すでにオンライン診療を開始している、東京都医師会理事/目々澤醫院院長の目々澤肇先生に聞きました。

※本記事は、2020年4月28日取材時点の情報に基づいて記載しています。

オンライン診療対応「1万件のリスト」の現実

元来かかりつけ医の本質とは、患者さんの事情や現場の状況に応じた診療を行うことです。私自身も以前から患者さんに万が一のことがあれば夜間・休日を問わずに駆け付けたり、ご本人からお話を伺うことが難しい場合はご家族に来院いただいて話を聞いたり、必要に応じて電話で診察(電話再診)を行ったりと、患者さんのニーズに合わせた診療を行ってきました。

2020年4月24日に厚生労働省がオンライン診療対応の医療機関のリストを発表しましたが、これには大きな問題点があります。それは、「電話による再診のみ対応」の医療機関と、テレビ電話などを用いた本来の意味での「オンライン診療」対応の医療機関を、同じ枠組みで掲載していることです。つまり「これまで」と「これから」が同じ地平に混然と並んだ1万施設のリストなのです。

電話再診は、新型コロナウイルス感染症への対策とは関係なく、今まで当たり前に行われていた診療で、テレビ電話などを用いた「オンライン診療」とは別物です。では、「新型コロナウイルス感染症出現後の日本社会」にあるべきオンライン診療に対応している施設はどこなのかというと、現時点ではどこにも書いていません。両者の切り分けを明確にすることが求められます。

かかりつけ医にとっての初診オンライン診療――今までとこれから

初診のオンライン診療も一括りにはできない

かかりつけ医は自分の患者さんの既往歴や服薬歴、基礎疾患、体質などをよく理解しています。ですから、普段から診ている患者さんが軽い風邪を引いた場合などであればオンライン診療を行い、薬を処方することはありえるでしょう。むしろ、新型コロナウイルスへの感染リスクを負わせてまで来院していただくことは避けたいと考えることもできます。かかりつけの方に対してオンライン診療で状態を伺い、過去のデータなどを参照して処方箋を送るというスタイルでの診療は、初診であっても十分有用であると思っています。

一方で、顔や人となりが全く分からないようなかかりつけでない患者さんの初診をオンライン診療で対応することにはそれなりのリスクが伴います。まず、初診が電話のみであれば、本人確認のために身分証明書と保険証などを提出いただくこと自体も難しくなるでしょう。また確認できたとしても、電話でお話を聞くだけでは、本当にご本人が困っていることや初診に至るまでの背景などを、対面で診療するときほど正確に把握することはできないように思います。どうしてもやらざるをえないシーンもあるかと思いますが、これらのリスクを軽減するためには、自動問診(患者さん自身のスマホ端末などでAIによる質問に回答する)や本人確認ツールの導入など、さまざまな工夫が必要になると考えます。

新型コロナ疑い患者を初診オンライン診療できるのか

今回初診オンライン診療が解禁された目的は、新型コロナウイルス感染症の影響で通常通り受診できずに困っている患者さんが、安心して診療を受けられるようにすることです。そしてその意味では、初診オンライン診療で新型コロナウイルス感染疑いの患者さんを地域の開業医が診るケースはあり得ると考えています。

以前、新型コロナウイルス感染疑いの患者さんが電話などでの問い合わせもなしに医院玄関から直接来院してしまい、なんの防備もなしに対面で診察を行ったケースを聞いています。診察後は電話診療を行いながら保健所と連絡を取り合い、最終的にはPCR検査を受けていただいて陽性と診断、入院されたそうです。また、同居の家族で新型コロナウイルス感染疑いの症状が現れ、最初から電話で診療をしたケースもありました。

ただし、新型コロナウイルスに感染した方の中には目立った所見がないケースもみられますから、電話だけでは限界があるのも事実です。「息苦しいですか」と医師に聞かれても自分の状態が客観的にはわからない方もいます。一方で、発熱やせきがあれば新型コロナウイルスに感染していなくても息苦しくなります。そうした判断をオンラインでの所見のみで行うことは難しいので、最低限、患者さんに来院していただかなければならないケースもあると考えます。

患者さんの受療行動に変化も

よく言われることですが、電話での再診や薬の処方のみを希望される患者さんが多くなりました。また、今の状況下では、感染した患者さんやご家族が医院の中に入ることが感染者でない患者さんや医療関係者にとってのリスクになるので、自宅待機中の患者さんへの薬の処方の場合はあらかじめ来院時間を設定し、玄関の前で会計をしていただき処方箋を受け取っていただくという対応を取っています。

新型コロナ終息後のオンライン診療の行方

一人一人のニーズに応じた医療の幅の広がり

新型コロナウイルス感染症が終息した後も、医療が完全に元の形に戻る可能性は低いと考えています。初診オンライン診療の解禁はあくまで新型コロナウイルス感染対策の一時的な措置ですが、患者さんが安心して病院に来ていただけるようになるまでは時間がかかります。受療行動の変化に応じて、将来的には各医療機関の柔軟な対応が求められることになるかもしれません。今後はスマホやパソコンのアプリ、テレビ電話などのさまざまなツールを用いながら、オンライン診療が社会的なシステムの1つとして導入されていくでしょう。ただし、すべての診療が電話診療やオンライン診療に置き換わることもないと思っています。今後は患者さんのニーズに合わせた診療を組み立てられるように、診療の幅がさらに広がっていくのではないかと感じています。

LINEなどの汎用的なプラットフォームでオンライン診療できる未来も?

オンライン診療の受け付けや医療機関への橋渡しを行うベンダーは多数あります。しかし、全ての医療機関がオンライン診療専用のアプリなどのツールを設定してベンダーに運営を委託することは現実的ではありませんし、患者さんがツールをうまく導入できない、あるいは初期登録ができないなどの場合もあるのが現状です。ですから、今後はGoogle DuoやFacebookのメッセンジャー、LINE TV電話、さらにはZoomなどのすでに多くの方が日常的に使用しているプラットフォームを用いたオンライン診療も検討すべきではないかと考えますし、実際に利用し始めている診療所もあります。こうしたプラットフォームが診療の窓口となることで、オンライン診療はやがて、社会的システムの1つとして定着していくかもしれません。現時点では、オンライン診療に使用可能なツールについての厳しい規則がつかなかったことは今後の可能性を限定しないのではないでしょうか。

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