連載新型コロナと闘い続けるために

新型コロナ第4波抑制はこれからが正念場―新型コロナワクチン と“適正”な対策で身を守る

公開日

2021年06月28日

更新日

2021年06月28日

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2021年06月28日

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年06月28日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルスの感染者が2020年1月に日本国内で初めて確認されて以来、大都市を中心として感染の増減が続いています。2020年11月には従来ウイルスよりも感染性が高いとされる変異ウイルスが報告され、世界各国で変異ウイルスによる感染者数が増加しています。人が集まる大都市ではウイルスの伝播(でんぱ)が起こりやすく、感染拡大を防ぐために積極的な対策が求められる一方、“対策の過剰”を指摘する声も上がっています。感染の連鎖を断ち切り第4派を抑え込むために、大都市ではどのように生活をしていけばよいでしょうか。東京都医師会の尾﨑治夫会長にお聞きしました。

大都市で感染症が拡大しやすい理由

なぜ、大都市と感染症の“親和性”が高いのでしょうか。

東京都などの大都市にはさまざまなお店が存在し、交通の便もよく、暮らすには非常に便利な場所です。その便利さゆえに多くの人が集まりますが、新型コロナウイルスは人から人にうつるウイルスですので、人が多く集まるところほど感染拡大のリスクが高まります。

また、地価や家賃との兼ね合いで大都市には比較的狭いお店や環境が多いために人との距離が近くなりやすく、密閉、密集、密接の“3密”が生じやすいのです。このような性質上、日本のみならず世界各国においても感染拡大の中心は大都市となっています。

第4波は今までの傾向とは異なる

新型コロナウイルスのこれまでの流行状況をみると、第1波で国内初の死者が報告され、第2波では大都市を中心に夜の街をはじめとする飲食店などでの流行が注目されました。これ以降、元の生活に戻そうという動きに変わったこともあり、年末年始に差し掛かる時期に感染者が増加し第3波となりました。第3波では感染者の年齢層が上がり、重症者が増えたことが特徴です。さらに2021年4月以降は各地で「まん延防止等重点措置」の適応や、都内では3度目となる「緊急事態宣言」が発令され、今まさに第4波のさなかにあります。

第4波の大きな特徴としては、変異ウイルスが流行したことです。この変異ウイルスは従来のウイルスに比べ、感染力や重症化リスクが高い可能性などが指摘されています。さらに、今回は重症化する割合が若い年代で多いことも懸念されています。

新型コロナワクチンが今後の感染拡大を左右する

この第4波を食い止める1つの手段として期待されているのが、現在急速に広がっている新型コロナワクチンです。2021年2月から医療従事者や高齢者から優先接種が始まり、同年6月中旬以降からは65歳以下の方にも段階的な接種券の発送を予定しています。

なお、高齢の方の接種状況から見ると、地域の医療機関(かかりつけ医)では人や設備などの点から何か起きたときに十分な対応ができない可能性から、新型コロナワクチン接種を受け付けていないところも多いです。また、これから接種が開始される一般の若い年代の方はかかりつけ医がいらっしゃらない方も少なくありません。これらを踏まえ私は、今新型コロナワクチン接種を受け付けていない医療機関の医師を含め、一般の方には集団接種会場での接種にご協力いただき、今後は集団接種会場を基本としてスムーズに接種が進められるような体制に変えていければと思い、検討しています。

皆が最低限の対策を行うことが大切

新型コロナワクチン接種も重要ですが、このような状況で自身や家族を守るためには、前述のとおり「引き続き基本的な感染対策を行う」ということが大切です。新型コロナウイルスは人から人にうつります。マスクの着用、手洗い・うがい、咳エチケット、ソーシャルディスタンスの確保など、皆で最低限の感染対策をしていきましょう。

大都市は便利な反面、今回のようにウイルスが流行したときには混乱が起きたり、不自由が生じたりします。それでも、皆がルールを守って感染を抑えていけば徐々に新規感染者が減少に転じ、規制や制限が緩和されていくはずです。

感染リスクの高い場所 再訪には10日の間隔を

新型コロナウイルスの感染がいつ収束するのか先行きが見えないなか、いつまでもじっと家に閉じこもっているのは不健全。時には外で楽しむことも必要です。しかし、接待を伴う飲食店、居酒屋やカラオケなどのお店は3密の環境であることが多いものです。感染対策を徹底しているところもたくさんありますが、それでもマスクを外して大声を出すことがある場所や人との距離が近い場所では感染しやすくなります。

感染のリスクが高い場所へは毎日・毎週と行かず、せめて月2回程度に抑え、間隔を10日程度開けるようにしましょう。そうすることで、外出で感染したとしても拡大を防ぐことができます。

さらに今後の方策としては、迅速抗原検査を利用し、飲食店の従業員および当日のお客さん双方に検査をして、検査陰性すなわち感染力がない状態の人たちでアルコールを含む飲食を可能にするという仕組みの導入も考えられます。2021年6月末に新宿区医師会、新宿区の協力も得て歌舞伎町で実証実験を行う予定です。こうしたことがうまくいけば、いつまでも時短要請を繰り返すことなく、飲食店以外にもさまざまな経済活動を広げていくことにもつながっていくと思っています。

感染対策は重要だが、過剰な対策は考えもの

これまでの経験などから、新型コロナウイルスの感染経路や予防方法は明確になってきています。感染拡大を防ぐための対策は重要ですが、度が過ぎるといつまでも不自由な生活が続いてしまうので、メリハリをつけて対策を行うことが大切です。

たとえばマスクは、人の多いところでは着用すべきですが、屋外で周囲に人がいなければ着用しなくてもよいと思います。また、物へのアルコール消毒もきりがないので、あまり神経質になりすぎる必要はないでしょう。

基本的な対策を行いながら普通に生活していれば感染する可能性は低いと考えられます。正しい情報に基づいて過剰な対策を取り除き、正しく恐れて生活していくようにしましょう。

また現在、早ければ今秋遅くても年内には新型コロナワクチン接種を希望する全国民のワクチン接種が完了させられるよう、国をあげて取り組んでいるように思います。私共も、できる限り歯科医師会、薬剤師会、看護協会などほかの医療団体と協力して、ワクチン接種が迅速に進むよう尽力していきたいと思っています。今予約ができなくて不安に思われている方も、ワクチンは順次供給されますので、安心してお待ちいただければと思います。

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