私たちの生活に種々の影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症。現在も、地域によっては油断できない状況が続いています。コロナ禍で患者さんが受診を控えることで病気が重症化する例が増えており、がんも例外ではありません。近年、日本での死亡者数が増加する大腸がん。2021年3月20日(土)に行われたメディカルノートオンライン講座「コロナ禍における医療機関へのかかり方」から、大腸がんの症状や検診で分かることをまとめました。【3 大腸がん検診:講師 山口和也先生】
【講師】
山口和也先生 公益財団法人ちば県民保健予防財団 総合健診センター診療部 消化器担当部長
【司会】
井上祥 株式会社 メディカルノート 共同創業者・代表取締役
大腸がんは通常ゆっくりと進行し、初期には症状がまったくありません。しかし、進行すると血便や下痢、便が細くなる、貧血、腹痛、腫瘤がお腹に触れるなどの症状が現れます。さらにがんが大きくなると腸閉塞(腸が閉じて塞がる)となり、便が出なくなって腹痛や嘔吐などを引き起こすことがあります。
男女共に、40歳以上の方は大腸がん検診の対象です。大腸がんの症状として血便がもっとも多いため、大腸がん検診では問診と「便潜血検査」を行います。これは、目で見て分からないほど微量の血液を検出する検査です。便の採取は自宅で行うことが可能です。専用のブラシで便の表面をまんべんなくこすり、2日間にわたって便を採取します。
大腸がんは、症状が出た段階ですでに進行している状態であることが多いです。そうなると治療が大変ですし、命に関わる可能性もあります。しかし、便潜血検査で陽性となるような早い段階で発見することができれば、治療できる可能性があります。
ただ残念なことに、検診で「要精密検査」と出ても精密検査を受けないまま放置される方がいらっしゃいます。こちらのページでもお話ししたように、「治るがん」があり、治るがんを発見するためには検診で指摘された際に精密検査を受けることが重要です。「要精密検査」と言われたときには、必ず受けていただくようお願いします。
大腸がんを疑う際の精密検査では、拡大機能が付いた高画質スコープを使って内視鏡検査を行います。先端にはライトとレンズが付いており、検査者が手元のダイヤルを動かすことで先端が上下左右に動きます。
こちらは、内視鏡で捉えた大腸内部の様子です。赤い筋状に見えるものは血管です。
下の画像は大腸のポリープです。画像処理技術を用いて、色や模様の違いを見やすく加工しています。大腸にできるポリープの8割ほどは「腺腫」というがんになりやすいポリープです。大腸がんは、大きさや色がタイプによって異なります。これらはいずれもある程度進んだタイプの大腸がんです。
精密検査ではこのように大腸がんの状態を調べます。小さなものであれば、内視鏡を使ったEMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などを行い、がんとその周辺を切除します。
※膵臓がん検診については次のページをご覧ください。
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