現在、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)への対策として全国でワクチン接種が進んでいます。初めて接種するワクチンに対して疑問や不安を抱えている方もいるでしょう。本記事では、7月9日(金)に行われたオンライン講座「新型コロナウイルスの今~安全なワクチン接種と千葉市医療機関の取り組み~」から、参加者の質問に対する瀧口恭男先生(千葉市立青葉病院呼吸器内科統括部長 兼 感染対策室主査)と谷口俊文先生(千葉大学医学部附属病院感染制御部・感染症内科 講師)の回答をまとめました。
参加者からの質問:
これからワクチンを接種する予定です。接種後に熱が出た場合、解熱剤や痛み止めなどの薬を服用してもよいのでしょうか。服用する薬の種類に指定はありますか。
谷口俊文先生の回答:
新型コロナワクチンの接種後に熱や頭痛が出た場合には、解熱剤や痛み止めの薬を飲んでいただいて問題ありません。はじめの頃はアセトアミノフェン(一般名)が推奨されていましたが、ロキソプロフェンナトリウム水和物(一般名)やイブプロフェン(一般名)という成分が入っている薬でも大丈夫です。
ただし、1点だけ注意点があります。それは、ワクチン接種前に予防的に解熱剤や痛み止めの薬を飲むことはやめてほしいということです。というのも、予防的にそれらの薬を飲むとワクチンの効果が薄れてしまう可能性が指摘されているのです。そのため、解熱剤などを飲むなら必ず「ワクチン接種後」に、「症状が出てから」服用するようにお願いします。
写真:PIXTA
参加者からの質問:
ワクチン接種後、効果はどのくらい続くのですか。
谷口俊文先生の回答:
これまでの研究結果から総合的に見て、新型コロナワクチンは接種してから少なくとも1年ほどは重症化を予防する効果や死亡を防ぐ効果が続くと考えられています。ただし、感染予防効果や発症予防効果は接種してから時間が経過すると効果が低下してくることが知られています。
さらに最近の研究では、終生免疫(一度できた免疫が生涯にわたり続く)がつくのではないかという可能性が示唆されています。ただし、終生免疫の可能性についてはもう少していねいな研究がいくつか必要な段階です。
参加者からの質問:
今年の冬にはインフルエンザワクチンを接種する予定ですが、いつもどおり打っても問題ないでしょうか。ほかのワクチンを接種する場合はどのくらい期間を空けたらよいのかを教えてください。
谷口俊文先生の回答:
インフルエンザワクチンはいつもどおりに接種いただいて問題ありません。
次に、ほかのワクチン接種をする際にどのくらい間隔を空けたらよいかという点についてです。厚生労働省では原則として、新型コロナワクチンとそのほかのワクチンは、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種することを推奨しています(ただし緊急性を要する場合は例外とする)。一方、アメリカの疾病対策センター(CDC)では特に間隔を空ける必要はないとしています。
これまでの研究結果や他国の対応を鑑みると、新型コロナワクチンを打ったからほかのワクチン接種を遅らせる、あるいはその逆のような対応は不要と考えています。
参加者からの質問:
先日2回目の新型コロナワクチン接種を行いましたが、副反応が何もありませんでした。副反応がなくても抗体は十分にできているのでしょうか。
谷口俊文先生の回答:
千葉大学で行った研究(ファイザー社mRNAワクチン、対象は1774人)では、副反応の有無に関係なく抗体価がしっかりと上昇していることが確認されました。そのため、副反応が出ているかどうかを心配する必要はないと思われます。
また、新型コロナワクチンの作用の中で、私たちの体を守ってくれているのは抗体だけではありません。たとえば、キラーT細胞などがウイルスを覚えて再び侵入してきたときにすぐに反応する「細胞性免疫」というはたらきがあります。これは抗体価としては現れませんが、新型コロナワクチンを接種することで獲得できる大切な免疫機構の1つです。
参加者からの質問:
病院によりCOVID-19の治療に違いはありますか。たとえば、感染症専門の病棟を持っている病院とそうでない病院で治療は変わるでしょうか。
瀧口恭男先生の回答:
多くの病気と同様に、COVID-19に対しても「診療ガイドライン」という共通の手引きがあります。そのため、感染症専門の病棟を持っているか否かにかかわらず、どの病院であっても治療内容は大きく変わりません。
千葉県では2週間に1回の頻度で「新型コロナ重点医療機関」の会議を開き、COVID-19の標準治療に関して最新の情報をシェアしています。また、病状が急激に悪化した患者さんの受け入れに関しては地域内のネットワークが構築されており、連携して迅速な対応ができるような体制を整えています。
参加者からの質問:
デルタ株によるクラスターが保育施設で発生したというニュースを見ました。うちには3歳の子どもがいて心配です。家庭で何か気を付けるべきことはありますか。
写真:PIXTA
瀧口恭男先生の回答:
変異ウイルスであることを過度に心配する必要はありません。変異ウイルスであるか否に関係なく、これまでと同じように感染対策などを行うのがよいと思います。
谷口俊文先生の回答:
瀧口先生の回答のとおりで、基本的な感染対策は同じです。一方で「ワクチンを接種したので感染対策をしなくてもよいか」と聞かれることがありますが、現状ではワクチンを接種した後もマスク着用・手洗い・手指消毒などの感染対策を継続していただきたいです。
参加者からの質問:
先日家族がCOVID-19のPCR検査で陽性となりました。私自身は免疫を抑制する治療を受けていますが、COVID-19にかかりやすいのでしょうか。また、新型コロナウイルスに感染した人からほかの人へ感染する可能性はいつまでありますか。
瀧口恭男先生の回答:
現在免疫を抑制する治療を受けているならば、感染症にかかりやすい状態であるとはいえると思います。新型コロナウイルスに感染した人からほかの人に感染する可能性があるのは、発症の2日前から発症後7〜10日間ほどといわれています。また、解熱剤を使わない状態で平熱が3日続けば周囲に感染させるおそれはほとんどないといわれていますので、その期間を過ぎたらいつもどおりの対応で問題ないでしょう。
入院治療後に退院された場合に関しては、退院が可能ということはほぼ感染力がない状態であると判断していただいて結構です。ただし、退院可能になってもせきが続く方も中にはいらっしゃるので、そのような場合は念のためせきエチケットとマスクの着用をしていただくことをおすすめします。
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