新型コロナウイルス感染症特設サイトはこちら
連載新型コロナと闘い続けるために

「遺伝子の操作」「不妊になる」はデマ―新型コロナワクチンの疑問に回答

公開日

2021年08月11日

更新日

2021年08月11日

更新履歴
閉じる

2021年08月11日

掲載しました。
0d15ae34e8

この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年08月11日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)のワクチンは高い有効性が証明されている比較的安全なワクチンです。しかしワクチン接種に対して不安を抱える方も一部おり、中には誤情報やデマを信じてしまっている方も見受けられます。今回は、デマを打ち消すお話とワクチンに関する最新の情報について、7月9日(金)のオンライン講座「新型コロナウイルスの今~安全なワクチン接種と千葉市医療機関の取り組み~」から、谷口俊文先生(千葉大学医学部附属病院 感染制御部・感染症内科 講師)のお話をまとめました。

ワクチン接種で遺伝子が組み換えられる?

よく目にする誤情報の1つに「新型コロナワクチンで遺伝子が組み換えられる」というものがあります。mRNA(メッセンジャーアールエヌエー)ワクチンというのはウイルスの遺伝情報、すなわち設計図を使って作られるワクチンです。

そのメカニズムを簡単にご説明しましょう。新型コロナウイルスの表面には細胞への侵入にかかわる突起状の「スパイクタンパク」というタンパク質があり、ウイルスの中にはスパイクタンパクを作るための設計図が存在します。

mRNAワクチンは、このスパイクタンパクを作るための設計図をmRNAという形で脂の膜に包み、擬似的にウイルスに感染した細胞を再現するのです。これがワクチン接種によってヒトの細胞内に入ると、リボソーム(タンパク質を作る工場)にmRNAが届き、スパイクタンパクが生成され、新型コロナウイルスに対する抗体ができるというわけです。

ヒトのDNAというのは核の中にあり、ワクチンのmRNAはそもそも核に入ることができないため、「遺伝子が組み換えられる」ことはありません。

ワクチン接種で遺伝子が組み換えられる?

ここで従来のワクチンの種類についても少し触れておきましょう。

麻疹(ましん)や水ぼうそう(水痘)などに対するものは「生ワクチン」といい、弱毒化したウイルスを接種してヒトの細胞に感染させ、免疫反応を引き起こすワクチンです。

ワクチン接種で遺伝子が組み換えられる?

次がインフルエンザなどに対する「不活化ワクチン」です。これはウイルスの毒性を完全になくして接種し、ウイルス粒子によって免疫反応を引き起こします。

また、帯状疱疹やB型肝炎に対するものが「組換えタンパクワクチン」と呼ばれ、タンパク質の成分のみを抽出してワクチンとして使用するものです。新型コロナワクチンは、先ほどご説明した設計図を使う「mRNAワクチン」が主流ですが、アメリカでは組換えタンパクワクチンも新たに開発されています。

「不妊になる」は根拠のない誤情報

「新型コロナワクチンで不妊になるのではないか」というのも最近よく目にする誤情報です。しかし、不妊が起こりやすくなるという科学的根拠はありません。

これは、困ったことにファイザーの元社員マイケル・イードンという人が発信したデマなのです。彼は胎盤にある「シンシチン-1」というタンパクがスパイクタンパク質と似ていることから、交差反応(スパイクタンパク質の抗体がシンシチン-1を攻撃する)が生じる可能性を主張しました。しかし、実際には交差反応が起こるようなアミノ酸配列の類似はなく、不妊になるという臨床データも存在しません。

流産や先天異常との関連は?

ワクチンと流産、あるいは先天異常(奇形など)との関連について心配される方もいるでしょう。しかし新型コロナワクチンの接種によって流産が起こりやすくなるというデータはありません。アメリカでは3万5000人ほどの妊婦さんが実際にワクチンを接種して調査対象として登録され(2021年2月28日時点)、妊娠を完了した827人を調べた結果、流産が起こりやすくなるというシグナルは確認されませんでした。

新型コロナのmRNAワクチンは生きたウイルスを含まないため、不妊や妊娠前期または中期の流産、死産、先天異常のリスクを高めることはないと考えられています。PMDA(医薬品医療機器総合機構)の試験では、動物実験において生殖関連の臓器と胎児をくまなく観察し、影響がないことも確認されています。

妊娠中や授乳中のワクチン接種はOK?

「妊娠中や授乳中に新型コロナワクチンを接種してもよいのか」と聞かれることも多いのですが、これはぜひ接種しましょう。妊娠中のワクチン接種により新生児にも新型コロナウイルスに対する抗体ができて守られる可能性があること、あるいは授乳中のワクチン接種により母乳にも抗体が移行して赤ちゃんが間接的に守られる可能性があることが分かってきました。

写真:PIXTA
写真:PIXTA

新型コロナワクチンは治験が終わっていない?

「治験が終わっていないワクチンをなぜ使うのか」という質問を受けることがあります。ここで誤解を解いておきましょう。新型コロナワクチンはこれまでにないスピードで承認されましたが、承認に必要な基礎研究・動物実験・治験(第1〜3相)は省略されることなく行われ、リスクを上回る臨床的に意味のある有効性が科学的に証明されています。

そのうえで、現在は予防接種のより安全な使用のために、長期的な情報収集を目的とした試験が継続している状況です。ワクチンが承認に至るまでの安全性・有効性に関する確認は完了しているため、心配せずに接種を受けてください。

変異ウイルスにワクチンの効果はあるの?

近頃は変異ウイルスが特に話題になっていますね。少し前まではイギリス型(アルファ株)で、最近はインド型(デルタ株)の伝播性(でんぱせい)(感染のしやすさ)に注目が集まっています。特にデルタ株は免疫逃避といって、ヒトが獲得した免疫が効きにくくなる可能性があると懸念されていますが、mRNAワクチンの効果を見ると効果を損なうことはないようです。

大切なことは、現在日本で使用されているファイザー・モデルナのmRNAワクチンがまったく効かないような変異ウイルスはないということです。

正しい情報を入手できる場所を知りたい

インターネット上には多くの情報があふれ、取捨選択するのも一苦労だと思います。そこで、正確な情報を入手できる場所として「こびナビ」というサイトをお伝えします。

COVID-19の最新情報や、今日お話ししたような誤情報やデマに対するお話などを分かりやすく動画やスライドなどにまとめていますので、ぜひ参考にされてください。

正しい情報を入手できる場所を知りたい

新型コロナと闘い続けるためにの連載一覧