連載新型コロナと闘い続けるために

2021年に国民が気をつけるべき感染対策や第3波収束後の展望―東京都医師会・尾﨑会長ウェブセミナー【後編】

公開日

2021年02月26日

更新日

2021年02月26日

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2021年02月26日

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年02月26日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

東京都医師会の尾﨑治夫会長は2021年1月29日に行われたメディカルノート主催のウェブセミナーに登壇し、新型コロナウイルス感染症に関する現在の取り組みや国民が気をつけること、今後の取り組みなどについてお話しされました。後編の今回は、コロナ禍において国民が気をつけることやできること、今後の医療体制の展望などについてお届けします。

コロナ禍で医療機関を受診することは危険なのか?

医療機関では人一倍感染対策を熱心に行っていますので、外来で受診される分には感染リスクはかなり低いと考えます。いわゆる院内感染として報道されるのは、入院患者さんなどの間で広がった場合です。そのため外来の診察で次々感染してしまうという心配はほとんどなく、他人と食事に行ったり出かけたりするよりも、よほど安全なのではないかと思います。マスクの着用など感染対策をしたうえで、怖がらずに受診していただきたいと思います。

発熱などがあって医療機関にかかるときの注意点

発熱の症状がある場合、直接医療機関に来院するのではなく、まずは電話やオンラインなどで相談しましょう。医療機関では発熱の有無などによって受診の導線や時間帯を区別して、院内の感染対策を行っています。万が一新型コロナウイルスに感染している方が気付かずに来院されると、周囲の患者さんにも感染の恐れが生じます。医療機関によって対応も異なりますので、感染を広げないためにもまずは電話やオンラインで相談してください。

国民が普段から心がけておくとよいこと

新型コロナウイルス感染症が流行しているかどうかにかかわらず、日頃から全ての人にかかりつけ医を持っていただきたいと思っています。初診の医師はその患者さんの日頃の様子が分からないので、異変を見極めるのが困難な場合があります。いつもの様子を知っているかかりつけ医なら、普段との違いに気付きやすいこともあるでしょう。気になることがあれば何でも相談できるかかりつけ医を見つけておくことが大切です。

出典:尾﨑 治夫先生(東京都医師会 会長)「新型コロナウイルス感染症セミナー」
出典:尾﨑 治夫先生(東京都医師会 会長)「新型コロナウイルス感染症セミナー」

コロナ禍で子どものために保護者が気をつけることは

子どもを持つ保護者の方には、ぜひ医療機関の受診による感染を恐れすぎず、決められた予防接種や乳幼児健診を必ず受けるようにしていただきたいです。ご存じのとおり、新型コロナウイルス感染症で子どもが重症化する割合は低いといわれています。むしろ決められた時期に予防接種や健診を受けないことによって、ほかの病気で命を失うことも懸念されますので必ず受診するようにしましょう。

コロナ禍で高齢の方が気をつけることは

糖尿病や高血圧症などの基礎疾患をお持ちの方は、現在行っている治療を中断しないようにしてください。現在、救急医療のひっ迫が生じており、重症な救急患者さんが入院できない可能性があります。持病を重症化させないためにも治療薬などをしっかり服用し、コントロールすることを心がけましょう。不安なことがあれば、かかりつけ医を受診し相談することも大切です。

高齢の方の中には新型コロナウイルスへの感染を過度に恐れ、外出をまったくしない方もいるようです。体を動かさない生活を続けていると、心身が衰えた状態である「フレイル」となり、自力で動けなくなってしまうケースもあります。

また、家から出ないことによって他人と会話する機会も激減し、脳を使わなくなるために認知症が生じやすくなることもあります。過度な自粛を避け、散歩をする、電話やオンラインなどで会話を楽しむなどの工夫をしていただきたいです。

感染を食い止めるために一人ひとりができること

国民の皆さんができることは、新型コロナウイルスの感染を広げないことです。ウイルスは人から人にうつり、感染した人の細胞を利用して増殖しますので、人と人との接点を減らすことで感染者は減少するでしょう。一番簡単なのは、第一波の時のように全員の行動を規制し、ステイホームをしていただくことですが、それでは経済や学業が立ち行きません。現在では感染しやすい場面が明らかになってきたので、それをできる範囲で避けながら生活を送っていただきたいと思います。

新型コロナウイルスが感染しやすい場面は、保健所の指定する濃厚接触者の定義を見るとよく分かります。保健所では「お互いにマスクをしない状態で、1m以内の位置で15分以上食事や会話をした場合」に濃厚接触者とみなされます。つまりこのような場面を避ければ、新型コロナウイルスの感染を広げることを予防できるわけです。なにか行動を起こすときは、この定義に当てはめて「この行動は危険かな?」と考え、判断してください。

コロナ後の医療で大切なことは

今後は超高齢社会が本格化しますので、限られた医療資源を有効に使うためにも病気を治すだけではなく、病気を予防する「予防医療」にさらに注力が必要となるでしょう。予防医療の観点では、医療に対するリテラシーの向上と検診の充実が欠かせません。子どものうちから義務教育で医療的なリテラシーを身につけてもらえるよう、健康教育により力を入れる必要があります。

また現在、義務教育終了後から特定健診の開始される40歳までは公的な検診や健康指導などの体制がなく、この時期に飲酒・喫煙などを含む悪い生活習慣が身につきやすいです。そのため、大学卒業頃から特定健診を行い、若いうちに健康的な生活習慣を身につけていただく体制が理想的だと思っています。医療機関においても、病気の治療だけでなく、予防医療に診療報酬がつくような制度ができるとよいと考えます。

出典:尾﨑 治夫先生(東京都医師会 会長)「新型コロナウイルス感染症セミナー」
出典:尾﨑 治夫先生(東京都医師会 会長)「新型コロナウイルス感染症セミナー」

第3波が収まったら取り組むべきこと

新型コロナウイルスの感染拡大対策としては、クラスター対策がよく知られています。しかし、クラスター対策は感染者が出てから濃厚接触者を追っていくという、事後的な対策です。

これまでの教訓を生かすならば、今後はこのクラスター対策に加えて先回り的な対策、いわば「前向きな検査」をするべきではないかと考えています。たとえば、重症化しやすい方が多くいらっしゃる高齢者施設や、一度に多くの方が休まれると社会に大きな影響が生じてしまうエッセンシャルワーカーの皆さんに対して、定期的に検査を行うことです。このように無症状の感染者を特定し、感染拡大を防ぐような措置が必要になるのではないでしょうか。

おわりに―尾﨑先生からのメッセージ

人類は長い歴史の中で、これまでもさまざまな感染症を克服してきました。今回の新型コロナウイルス感染症も、全国・全世界が一丸となって対策に取り組めば未来が開けるものだと信じています。皆さん互いに助け合い、この難局を乗り切っていきましょう。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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