全国的に進んでいる新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)に対するワクチン接種。新型コロナワクチンを接種する際は実際にどのような流れになるのか、注意するべき点について、7月9日(金)に行われたオンライン講座「新型コロナウイルスの今~安全なワクチン接種と千葉市医療機関の取り組み~」から、谷口俊文先生(千葉大学医学部附属病院 感染制御部・感染症内科 講師)のお話をまとめました。
千葉県のワクチン接種会場の1つである蘇我コミュニティセンターで、実際の接種の流れを撮影させていただきました。
会場には受付があり、そこで予診票や接種券(クーポン)の確認をします。
受付を済ませたら、次に問診ブースに行きます。問診ブースでは医師(医療者)によるワクチン接種のための問診が行われます。
問診が完了して問題なければ、次は接種ブースへ。看護師(医療者)が待機しており、そこで新型コロナワクチンの筋肉注射を行います。ちなみに、筋肉注射は皮下注射(インフルエンザワクチンなど)よりも接種時の痛みは少ないといわれます。
新型コロナワクチン接種をするときには、肩のもっとも上部「肩峰」という部分が出せる服装でお越しください。
接種を受ける際には腕に力を入れず、下にダランと降ろしましょう。手を腰に当てる必要はありません。ワクチン接種の担当者は「上腕三角筋」を確認し、その中央に注射を打ちます。
接種部位はアルコールで消毒します。アルコールで肌がかぶれてしまう方は、接種の担当者にその旨を申し出てください。その際には、アルコール以外の消毒方法で対応できるはずです。また、注射針を刺した後に痛みやしびれがあればその場でお知らせください。一度針を抜いて刺入し直します。
接種が完了したら「新型コロナワクチン接種記録書」を交付します。その後は、会場で15分待機していただきます。なお、問診の結果によっては30分待機していただくこともあります。30分の待機が必要な方は、過去にアナフィラキシーを含む重いアレルギー症状を起こしたことのある方、採血などで気分が悪くなったり失神したりしたことのある方です。
ワクチンの種類によって2回目の接種の時期が異なります。
ファイザーのワクチンは1回目の接種から3週間後に2回目の接種を行います。もしその日にスケジュールが合わない場合、6週間以内に2回目を接種しましょう。一方、モデルナの場合は1回目の接種から28日(4週間)後に2回目の接種を行います。スケジュール上その日が難しければ、6週間以内に2回目の接種を行うことが推奨されています。
ワクチン接種後の副反応*についても心配されている方が多いのではないでしょうか。
以下のグラフは、ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチン接種後の副反応についての調査結果です。
*副反応:ワクチン接種に伴う反応。局所症状としては接種部位の腫れ、痛み、発赤などがあり、全身症状としてだるさ、頭痛、筋肉痛、寒気、発熱などがある。
mRNAワクチンを接種した方が青色、プラセボ(偽薬)を打った方がオレンジ色で示されています。「発熱」については、ファイザーもモデルナも15%ほどに見られますね。そして「接種部位の痛み」はファイザーが80%近く、モデルナが90%近くの方が経験するようです。さらに、だるさ、頭痛、筋肉痛、寒気などの副反応が見られます。新型コロナワクチン接種後にはこれらの副反応が出ることをあらかじめ想定しておくとよいでしょう。
副反応は、ワクチンを接種したことで体が免疫反応を起こして抗体をつくっていることを表しているので、「よい反応」だと考えてください。
また、発熱や頭痛などの症状がつらいときには、市販の解熱剤や痛み止めを飲んでも問題ありません。ただし、ワクチン接種前に予防的に解熱剤や痛み止めを服用することはやめましょう。ワクチンの効果が低下してしまう恐れがあります。
また、ほかの薬を内服している場合や妊娠中・授乳中、高齢の方、あるいは症状が強く持続する場合などは主治医や薬剤師にご相談いただくようお願いします(詳細は厚生労働省のページをご確認ください)。
ワクチン接種に関するアレルギーやアナフィラキシーについても心配されている方がいらっしゃると思いますので、ご説明します。
「アレルギー」は注射部位以外の皮膚・粘膜の症状で、▽蕁麻疹▽皮膚が赤くなる・紅潮する▽口唇・舌・口蓋(口内の上側の壁)の腫脹や刺激感▽くしゃみ・鼻水・鼻のかゆみ・鼻詰まり――などが起こります。
アレルギーのもっと重度なものが「アナフィラキシー」です。たとえば▽皮膚・粘膜症状▽気道・呼吸器症状(喉頭の閉鎖感、呼吸困難、呼吸時にゼイゼイ・ヒューヒューと音がする、強いせき、低酸素血症)▽循環器症状(血圧低下、意識障害)▽消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢)――のうち2つ以上の症状が出た場合、アナフィラキシーと診断されます。
アナフィラキシーはどのくらいの頻度で起こるのでしょうか。アメリカでの報告によると、ファイザーのmRNAワクチンでは100万回に4.7回、モデルナは100万回に2.5回でした。以下の表では、アナフィラキシーを起こした人の特徴を示しています。
この表から分かるのは、アナフィラキシーを起こした方の年齢の中央値は40歳前後で、女性が多いこと、そしてほとんどのケースで接種後30分以内にアナフィラキシーを発症していることです。さらに、アレルギーの既往歴がある方がファイザーで77%(アナフィラキシー既往歴は34%)、モデルナで84%(アナフィラキシー既往歴は26%)でした。
また、日本におけるアナフィラキシーの頻度は2021年6月13日の時点で、100万回のうちファイザーで10例、モデルナで0例という報告がありました*。モデルナのワクチンは接種が開始されたばかりの報告なので、これから頻度が増えることが見込まれます。
*2021年7月25日時点で、日本におけるアナフィラキシーの頻度は100万回のうちファイザーで5例、モデルナで2例という報告されている。
新型コロナワクチンを1回接種して重度のアレルギー反応が出て治療が必要になった方は、2回目の接種を控える必要があります。また、mRNAワクチンに含まれる成分(たとえばポリエチレングリコール、ポリソルベートなど)にアナフィラキシーを起こしたことがある方は接種できない場合があります。かかりつけ医とご相談ください。
日本では現状、16歳未満の方には接種をしていません。また、COVID-19に感染し隔離期間中の方も接種すべきでないとされています。免疫抑制剤などの薬を使って病気を治療中の方はワクチン接種のタイミングを調整することがありますが、そのような方は恐らく主治医から新型コロナワクチンに関してお話しされているはずです。不明なことがあれば主治医に相談してみましょう。
新型コロナワクチンを接種できないのはごく一部の方です。別のワクチンや花粉に対するアレルギーを持っていても接種できます。何かしらのアレルギーがあり過去にアナフィラキシーを起こしたことがあれば、接種後の待機時間を30分にします。アナフィラキシーを起こしたことのない方であれば、通常どおり15分の待機時間で問題ありません。
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