国内最初の感染者が2020年1月に見つかって以来、新型コロナウイルスとの闘いは1年を超え、なお出口は見えてきません。日本ではこれまで感染者、死亡者とも欧米に比べてはるかに低い水準に押さえ込んできましたが、近隣諸国と比べるとうまくいっていない面もみられます。医師でもある今枝宗一郎衆議院議員(愛知14区)に伺う、新型コロナと政治。後編では日本の政策がうまくいったことや、他国との違いについてお話しいただきました。
感染症としての新型コロナ対策についてお話しします。
前提として、日本は欧米に比べると重症者数、死亡者数とも非常に低い水準にあります。「ファクターX」「東アジア特有」などいろいろな仮説はありますが、どれもエビデンスはありません。
「東アジア」に理由を求める方は中国、韓国、台湾、日本の4か国を見ているのでしょう。ただ、詳細に見ていくと、台湾は水際作戦が非常にうまくいったことに加え、ITで人の動き、きちんと療養をしているかといったことを全管理しているのが大きいでしょう。
中国は監視カメラと顔認証システムによって、どこで誰が何をしていたのか政府が抑えています。ある人が感染したら、濃厚接触者の濃厚接触者までが半日で判明するような超管理社会です。多くの人は日本がそうなったらいやだと思うでしょうが、感染症を管理するという意味ではとても効率的です。韓国は、中国に近いことをやってある程度抑えていると思います。
日本は管理社会でない割に、うまくやっているのではないでしょうか。ただ、水際対策をもう少し厳しくすべきでした。何度にもわたって提案した結果、ようやくしっかりとした入国制限ができるようになっています。ただ、ここに至るまで与野党を含む政治だけでなく、ほかの分野でも外交関係などを重視する人たちもいる中で、時間がかかってしまったことを申し訳なく思っています。
新型コロナウイルスについて、その性質などがよく分からなかった昨年春ごろには「有効な治療薬やワクチンができないまま冬を迎えると、インフルエンザのように流行が再燃して感染者が急増し、それに伴い重症者数や死者数も大きく増えるのではないか」と危惧する声がありました。確かに、2020年の冬から2021年にかけて「第3波」といわれる感染者の急激な増加がありましたが、一方で重症化率は昨春と比べて3分の1ほどに抑えられています。
それは、重症化を防ぐための治療方法が分かってきたことが非常に大きな要因です。そこに至るには、自民党の新型コロナ対策医療系議員団本部が大きく関わっています。新型コロナの流行が始まった当初、新型コロナの診療のガイドラインを策定する「診療の手引き」検討委員会のメンバーは、縦割りで一部の専門家だけでしたし、体制としても脆弱でした。そこで、厚生労働省に必死に働きかけつつ、日本でトップレベルのいろいろなドクターにもお声がけをさせていただき、オールジャパン体制を構築し、検討委員会を抜本的に体制強化・充実させてきました。呼吸器内科の先生はステロイドの使用に慣れておられ、感染症の専門家はウイルスとの戦い方のプロフェッショナルです。そういった知恵がうまく合わさって、いまにつながる治療法がだんだんできて、それが結果として出ていると思っています。
ですから、医療が適切に提供されて今スタンダードになっている治療を受けている限り、重症化する方、死亡する方はある程度の水準で抑えられています。
もちろん、いくら重症化率が低くても、感染者が増えれば重症者数は増えてしまうので、感染対策は非常に重要であることは言うまでもありません。
第3波は皆さんの力で乗り切れました。その後はある程度社会経済を動かしていかなければなりませんが、そうするとまた感染者が増えてくることは避けられません。特に変異ウイルスがあるなかで、あらためて感染拡大防止に対する行動変容を行ってもらわねばなりませんが、それがないと3度目の緊急事態は非常に厳しいものにならざるをえないでしょう。
中国や台湾のように、ITで全員の行動を管理できれば、社会経済活動は100%近い状態で動かせるとは思います。経済で影響が出た人に補助金を出すにしても、ITでお金の動きを管理していれば無駄なばら撒きにもならず、必要な人に手間をかけさせずに行き渡るようにできないこともありません。でも、そんなふうに管理されるのはいやだなと思う方が多いので、民意を無視して行うことはできません。
そうしたなかで、医療従事者に続いて高齢の方にもワクチンの接種が始まりました。それによって、更に重症化が抑えられるということであれば、命を守りながら社会活動が自由に行える度合いが増やせるかもしれません。それを願って、ワクチンに関する正しい情報が皆さんに届くよう、これからも情報提供に努めていきたいと思っています。
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