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連載新型コロナと闘い続けるために

医療現場における新型コロナウイルス感染管理の実態と情報収集の重要性

公開日

2021年04月05日

更新日

2021年04月05日

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2021年04月05日

掲載しました。
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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年04月05日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新興感染症として人々の生活にさまざまな影響を与えた新型コロナウイルス感染症。なかでも医療機関は多大なる影響を受けたといっても過言ではないでしょう。新型コロナウイルス感染患者を受け入れながら、そのほかの患者さんや医療機関で働く人々を守るために実施された感染管理とは――。聖路加国際病院QI(Quality Improvement)センター感染管理室でマネジャーを務める坂本史衣さんに聞きました。

手探りで始まった感染管理―既存の感染症対策に基づいた運用

私が所属するQIセンターは医療の質の改善を行う部門で、なかでも感染管理室は、院内における感染予防策の方針・方法を関係者と調整しながら決め、評価、改善する役割を担っています。そのため、今回の新型コロナウイルス感染症の流行を受け、どのような感染予防を行っていくか、病院の中心となって施策を進めてきました。

現在では新型コロナウイルス感染症の疫学的、臨床的特徴は、徐々に明らかになっています。しかし、流行当初は、どのような感染症かがはっきりしないまま手探りで感染管理をしていくしかありませんでした。そのような状況下で初めに行ったのは、新型インフルエンザへの対策に準じた、飛沫、接触、空気感染の予防です。

医療現場においては「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」という基本的な感染対策を日常的に実践することが推奨されています。この対策は、手指衛生をはじめ、手袋やマスクといった個人防護具の使用、あるいは針などの鋭利物の安全な取り扱いなどによって、血液や体液を介した感染のリスクを最小限に抑えることを目的としています。

標準予防策は古くから知られている感染対策ですが、多くの医療現場において、その意義や内容について詳しく理解、徹底されていることは少ないように思います。しかし、新型コロナウイルスのような未知の病原体からの感染を防ぐには、標準予防策を見直し、あらゆる医療現場で確実に実践することが重要であるとも考えています。こうした考えのもと、当院でも標準予防策をベースにした感染対策を構築しました。

また、当院では元々MERS(中東呼吸器症候群=2012年に中東地域の一部で新たに確認された感染症)の疑いがある帰国者の受け入れや、今後、新型インフルエンザが流行した場合を想定した患者受け入れ訓練を保健所と定期的に実施していたため、新型コロナウイルス感染症の流行当初はそうした経験が非常に役立ったと感じます。

適切な感染管理のための情報収集―「不要なことは実施しない」運用を目指して

当然、これまでも新興感染症が流行したことはありました。2009年の新型インフルエンザや2012年のMERSの流行が比較的記憶に新しいのではないかと思います。

今回、新型コロナウイルス感染症の流行でこれらと大きく異なった点の1つが、情報が出てくるスピードです。流行の早い段階から論文やポッドキャストなどで新型コロナウイルス感染症に関する情報発信が行われていました。流行当初から現在に至るまで、信頼できる発信元からの情報収集は重要視しています。

こうした情報を活用することで2020年の4月頃には、どのような感染経路に比重を置いて予防を行うべきなのか、検査の精度はどれほどかなど、感染症を管理するための勘所をつかめていたように思います。

そのため4月以降は、いかに重要なことのみに絞って感染管理をしていくかという点に注力しました。これは、不要(無意味)な対策によって職員の負荷だけが増大し、疲弊するという状況を避けるためです。同時に、可能な限りリスクを減らすことを前提として、そのために力を入れるべき部分はどこなのか、という思考錯誤を繰り返した1年でした。

感染を「広げない」ための体制づくりを徹底

感染管理室の仕事は、感染を「広げない」体制づくりです。新型コロナウイルス感染症は、無症状感染者や症状が軽微な感染者と知らずに濃厚接触することで、感染が水面下で広がる可能性が高い感染症です。だからこそ、仮に患者さんや職員が新型コロナウイルスに感染していたとしても、周囲の人間が曝露するリスクや濃厚接触者となるリスクを最低限にするということが重要であると考えました。

具体的には、新型コロナウイルスへの感染が疑われる基準を病院で独自に定め、その基準に基づくスクリーニングを全ての患者さんと職員に実施し、該当した患者さんには陽性とみなした対応(隔離など)をするという運用を行いました。職員に関しても少しでも感染が疑わしい場合には就業停止をするという点を徹底しました。

また、対応状況を把握するため、関係部署と毎朝30分ほどのオンラインミーティングを実施し、どのような状態の患者さんがどの病棟に何人入院しており、何科が担当しているのか、あるいは予定されている入退院はあるか、感染対策上の課題や改善策はあるか、国や都の政策はどのようになっているのかといった情報を常に共有しています。

こうした運用をすることで、患者さんや職員の新型コロナウイルスへの感染リスクをできるだけ早く感知し、周囲への影響が最小限になるよう努めています。

新型コロナウイルスワクチンの登場―接種に向けた体制の構築とワクチンへの期待

2月17日から、ついに日本でも新型コロナウイルスワクチンの先行接種が始まり、当院でも3月上旬から接種を行っています。
接種開始に向けた取り組みの1つとして、職員にワクチンに関する研修を実施しました。一口に医療機関の職員といっても、医療に関する知識量はまちまちです。そのため、ワクチンの接種を希望するかどうかのアンケートに回答する前に、必ずその研修を受けるという仕組みになっています。

ワクチンの有効性や安全性のデータを見る限り、ワクチンの効果に対しては一定の期待をもっています。私自身も先日1回目の接種を受けたところです。

新型コロナウイルス感染症の流行当初は、1年後にワクチンが完成しているとは予想もしませんでした。1年以上、新型コロナウイルス感染症対策を続けながら、病院の機能を保ってきたという点は職員の大きな自信になっている一方で、この状況に疲弊してきていることも事実です。こうした状況で、ワクチンが平時に戻るために大きな役割を果たしてくれることに期待しつつ、今後も気を緩めることなく医療現場を支えていきたいと考えています。

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