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連載新型コロナと闘い続けるために

新型コロナウイルス変異株の現状と今後の対策方針―政府主導での体制強化と抑え込みを

公開日

2021年03月16日

更新日

2021年03月16日

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2021年03月16日

掲載しました。
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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年03月16日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

日本でも新型コロナウイルスワクチンの接種が始まるなど、事態の収束に向けた希望となるような動きがある一方、国内でも徐々に新型コロナウイルス変異株の報告数が増加しつつあります。それにより不安を覚えている方もいるのではないでしょうか。本記事では、医師であり自民党の「医療系議員団新型コロナ対策本部」幹事長を務める今枝宗一郎・衆議院議員(愛知14区)に変異株に対する日本の対策方針についてお話しいただきました。

日本における新型コロナウイルス変異株の確認状況

2021年3月14日時点のデータでは、日本で確認されている変異株感染者は498人です。そのうち空港検疫で発見された75人を除く423人が国内感染者です。また、国内ではイギリス型、南アフリカ型、ブラジル型のほか、新たにフィリピン型の変異株感染が確認されています。

都道府県別にみていくと、3月14日時点でもっとも変異株感染者数が多いのが兵庫県で、75人が確認されており、次いで大阪府が69人です。ただし、これは変異株陽性となった方の周囲に対して積極的にPCR検査を行ったことも影響しており、単純に変異株がほかの地域より蔓延しているということとイコールではないという点はご留意ください。

こうした状況を受け、国として早急に変異株への対策を進めることが与党議員、および政府の大切な使命の1つであると考えています。なかでも、現時点で特に力を入れて進めている対策は、大きく分けて次の5つです。

  1. 早急な感染者把握と抑え込みのための変異株PCR検査体制の強化(全例検査と積極的疫学調査*の大幅拡充)
  2. 変異株陽性者に対する医療体制の強化
  3. 新たな変異株が出現した場合の早期探知
  4. 変異株やワクチンに関する研究と臨床のデータ集約・活用
  5. 渡航者の一定期間の隔離徹底などによる水際対策の強化

それぞれについて詳しく説明します。

*積極的疫学調査:感染症などの病気の感染拡大防止対策のために行われる調査。集団感染が発生した場合にその全体像や病気の特徴などを調べる。

変異株PCR検査の全例実施と積極的疫学調査の大幅拡充

主な変異株対策の1つ目が変異株PCR検査体制の強化です。変異株の感染拡大を防ぐためには、何よりも感染者の早期発見・早期隔離が鍵を握ります。

これまで、変異株の調査は全ゲノム解析(ウイルスの全遺伝子配列の解析)で行っていました。しかし、それでは時間がかかってしまうため、私は変異株用のPCR検査を行うべきであると昨年の秋から提案をしてきました。

政府も、国立感染症研究所のようなごく限られた機関では検査を始めてくれましたが、私はさらに検査できる機関を増やすべきだと考え、その必要性を訴え続けました。そのかいあって、ついに本年3月より、全国の地方衛生研究所*で変異株PCR検査を用いた変異株のスクリーニング(新型コロナウイルス感染者のなかから変異株感染者のみを拾い上げる)体制を確立することができました。ただし、変異株が確認されていない、あるいは確認されてもその感染経路などが明確な自治体においては、基本的に全陽性者のうち5~10%程度の方に対して変異株PCR検査を実施している状況です。この5~10%という割合は、変異株の拡大状況を把握するために必要な割合として、諸外国でも基準とされている数値です。

しかし、私は現在全陽性者、100%に対して変異株PCR検査を行うべきであると考えています。新規陽性者数が1日あたり1200人前後となっている現在の変異株感染拡大規模であれば、広がりを抑え込める可能性がまだ残されていると考えているためです。

そのためには、さらに変異株PCR検査体制を強化して全例検査を実現する必要があります。

さらに、変異株感染した方の周囲では、濃厚接触者だけでなく、幅広に検査を行う「積極的疫学調査」も徹底すれば、PCR検査で変異株の感染を抑え込めるかもしれません。

それだけの検査を実施するためには、当然、試薬(特定の物質を検出するためなどに使用される化学物質)の確保が1つの課題です。この点に関しては、今週とある企業から発売される試薬が非常に役立つのではないかと考えています。この試薬は、通常のPCR検査で陽性になった場合、その検査で使用した検体にそのまま別の試薬を入れて再検査を行うことで感染していた新型コロナウイルスが変異株かどうか45~70分前後で分かるものです。すでに約3万回分が国内で確保されているうえ、供給体制にも問題がないことから、通常PCR検査が陽性だった方全員に変異株PCR検査を行うことも十分可能です。

*地方衛生研究所:都道府県、政令指定都市と中核市、特別区の一部に設置されている機関

医療体制の強化

変異株陽性者を早期に把握するだけでなく、医療機関などにおいても適切な医療を行えるようにしなければなりません。医療体制の強化が2つ目の対策です。

現在、医療現場では「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」に沿って新型コロナウイルス感染症の診療が行われています。この手引きに一刻も早く変異株について記載を行い、医療現場での対応を策定すべきです。また、変異株は感染力が強いとされる中で、感染防御についても一層慎重な対応をすべきであり、その方針を早急に定めるべきだと考えています。

早期探知

一方で、現在確認されている変異株とはまた別に新たな変異株が出てきた場合に重要となるのがその存在の早期探知であり、このための体制強化が3つ目の対策です。

新たな変異株を探知するためには、きちんとウイルスの動向を調査(監視)する必要があり、それに必要となるのが全ゲノム解析実施です。しかし、現状では全ゲノム解析も限られた機関でしか実施することができず、1日当たりの実施件数は非常に限られています。そのため、全ゲノム解析をできるだけ多く実施できるよう体制の強化を進めています。

昨年の秋~年末頃と今年の2月時点での全ゲノム解析の実施可能件数を比較すると、すでに3倍程度にはなっていますが、それでもやっと週800件程度という状況です。

新たな変異株を早期探知するためには、やはり変異株PCR検査と同様に全陽性者に対して全ゲノム解析ができることが理想といえるでしょう。こちらも、とある日本のベンチャー企業が1日で5000件の全ゲノム解析を行える検査機器を開発しました。全陽性者に対する全ゲノム解析実施を実現するためにも、こうした検査機器をいち早く社会実装すべきです。

ほかにも、今後、大学などの研究機関や保健所、地方衛生研究所といったところにも国として協力を要請していく予定です。

研究と臨床のデータ集約・活用

対策の4つ目が、新興・再興感染症データバンク事業の立ち上げです。これは簡単にいえば、研究施設と医療(検査)機関双方がもつデータを集約・一元管理し、新しい変異株などの重症度やワクチンの効果などを検証する事業です。この事業は、国立感染症研究所および国立国際医療研究センターの連携のもと、感染症の感染力や重篤性を早い段階で評価・情報発信できるような仕組みの整備を目的としています。

医療機関が持つデータを、各大学などを含む研究機関や製薬企業に提供することで、新たな変異株が出現した場合でも迅速にワクチンや検査キットの開発を進めることができたり、院内感染対策へ応用したりすることが可能となります。

また、さまざまな医療機関からの情報が集まることで、さらにその情報を解析し、どういった場合に重症化するのか、あるいはこれまでの新型コロナウイルス感染症と異なる経過をたどるか否かなど、実際の治療現場に有益なフィードバックができるのではないかと期待しています。

水際対策の強化

国内での感染を防ぐことはもちろんのこと、海外からのウイルス流入を防止する必要もあります。そのためには、5つ目の対策となる水際対策の強化が必須です。

現在入国者に対してPCR検査を行っていますが、PCR検査の精度は100%ではなく、偽陰性(実際は感染しているのに検査では陰性と判定されること)という可能性もあります。そうした場合も考慮し、入国者の14日間隔離をあらためて徹底すると同時に、位置情報を用いて外出をしていないかチェックするアプリなどを1日も早く社会実装できるよう対応を進めていきます。

国民の方々の不安を解消できる体制づくりと変異株流行の抑え込みを

変異株の感染者数が徐々に増加してきていることに対して非常に不安を感じている方もいらっしゃるかと思います。こうした状況のなかでもっとも重視しているのが、政府主導での早急な変異株流行の抑え込みです。そのうえで、抑え込みができなかった場合、あるいは新たな変異株が現れた場合に備え、迅速かつ適切な対応が取れる体制づくりをすることが重要であると考えています。そのためにも、与党の側から引き続き政府に向けて積極的な提言をしていきます。
 

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