連載新型コロナと闘い続けるために

医師出身国会議員が考える「本当に必要なコロナ支援」

公開日

2021年04月26日

更新日

2021年04月26日

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2021年04月26日

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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年04月26日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

今枝宗一郎衆院議員が語る新型コロナと政治【前編】

出口がいまだ見えてこない新型コロナウイルス感染症の拡大で、日本の社会・経済・医療はさまざまな影響が出ています。それらを緩和し、国民が安心して生活できるために必要な施策はどのようなことが考えられるでしょうか。医師でもある今枝宗一郎衆議院議員(愛知14区)に、国会議員として考える、あるべき国民支援の姿、できたこと・やりたいことなどについて伺いました。

「密集」を避けることで出る影響

新型コロナウイルス感染症が国内で拡大を始めて以降、国民の皆さま、なかんずく医療関係の方々に多大な影響が及んでいます。

新型コロナ拡大を防止するための行動が必要ですから、3密は避けてマスクを着用し、手洗いをきちんとするといったことに普段から気を付け、可能であれば人と人の距離を取ってくださいとお願いしています。

密集しているということは、経済・社会活動ではある意味“効率的”でした。ところが、新型コロナの感染拡大が低水準な期間であっても、かつてのように密集して十分に活動するというわけにはいきません。そうなると、どうしても経済や皆さんの暮らしに影響が出るということになってしまいます。

「粗利補償」「中小企業支援」を提言

「経済」といっても漠然としていますので、具体的なわれわれの生活に落とし込んで影響を考えてみましょう。

たとえば、お勤めされている方の給料はこの1年間平均で1~2%ほど減少しています。私たち国会議員は、国民の皆さんと一緒に痛みを受け止めなければいけないということで、昨年(2020年)5月から1年間、歳費を2割カットして国庫に返納しています。この措置は衆議院の任期満了(10月)まで延長する方針です。

それから、雇用にもダメージがありました。コロナ前の雇用状況は全国的に非常によくなって、地方にも波及しているところでした。有効求人倍率は1.5倍ですから、2人の求職者に3つの仕事があったわけです。いわゆる“売り手市場”で、仕事を選べるような状況がありました。ところが、最近はこの数字が1ぐらいになり、地域によっては1を割り込むところも出てきました。働きたいという人全員が働けないという状況ができてしまったわけです。

写真:PIXTA

雇用と表裏の関係にある失業率はどうでしょうか。これも過去最低レベルの2.5%ぐらいで推移していましたが、3%程度まで上がってしまいました。自殺者は、自民党が政権に復帰して以来経済が好調だったこともあり、ずっと減り続けていました。ところが、2020年は一転上昇し、その前年に比べて約900人も増えてしまいました。

失業率が1%上がると自殺者が2000~3000人増えるといわれています。73兆円の追加経済対策を打ったこともあり、900人増で収まったのかもしれませんが、それでも亡くなった方1人1人にそれぞれの人生があり、家族や友達がいて、人がそこにいたわけですから、本当にやるせない思いになります。

もう1つ、多くの方に関わるのが、“自粛”で自由や消費を楽しめないということではないかと思います。そうなるとメンタルにも響いてきます。

数字に出るものも出ないものもありますが、どれも大きな影響だと思っています。

経済的なさまざまなダメージに対しては、財政出動をもっとやるのが理想です。

自民党に財政出動や積極財政の“エンジン”となる「日本の未来を考える勉強会」という会があります。そこで僕は「粗利補償をしましょう」「中小企業を支援しよう」といった提言を書いています。

だた、国民からお預かりした血税から企業に直接現金を給付するということは、東日本大震災でもやっていません。復興のための設備投資をするとか、商店街がイベントをするなどに対し、ある程度自己負担をしていただいたうえで補助金によってフォローするという形の支援をしてきました。

僕は自民党の中小企業委員長でもあるので、いろいろと訴えて200万円の持続化給付金や、国民1人あたり10万円の特別定額給付金をやるべしということも主張してきました。定額給付金はもう1度やりたいという声もありますが、なかなか実現には至りません。積極財政でいきましょうと言っても、党内調整、政府との調整もあって100%実現に至らず、申し訳ない思いでいます。

コロナ患者受け入れ施設以外にも支援必要

次に医療への影響です。

新型コロナの患者さんを受け入れている医療機関も、受け入れていない医療機関も、「受診抑制」が大きく響いて収入が減り、病院経営が厳しくなって働いている方の給料も減ってしまうといったことも起きています。

それに加えて、風評被害も当事者にとってはきついことだと思います。われわれがやめてほしいと言っても、なかなか分かっていただけない方もいらっしゃいます。医療従事者のお子さんが学校で「おまえの親は病院に行ってるんだろ。怖いなー」と言われたというような話を聞くだけで、胸が張り裂けそうな思いになります。聞いているだけの僕らでもそうなのですから、当事者の皆さんは本当につらいだろうと思います。

医療の経営的な部分への影響に対して、われわれも必死に財政的な支援を政府にお願いして、提言もたくさん出しています。たとえば、医療機関に関しては減収した分を100%補償すべきじゃないかとか、中小企業や普通のお店なども減収分を100%粗利補償するというようなものです。

ただ“財務省の壁”というか、財政的に厳しい意見もあります。

それでも、医療機関の補償に関しては、新型コロナの患者さんを受け入れている病院には診療報酬を5倍にする、あるいは重症ベッド1床につき1500万円出すといったことは順次やってきました。ただ、負担はその何倍もあるので、減収補償でプラスマイナス0にするだけではなく、本当は特別手当が出せるというところまで、頑張っている医療機関の方々に報いる必要があると思っています。

これから新型コロナワクチンの接種では、全医療機関に対応していただくことになるでしょう。地域医療を担っている先生方(医師)には、ワクチン接種でも在宅医療の支援でもご協力いただかなければいけませんので、きちんと報いることができるようにしていかなければなりません。

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