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知っていますか?1型糖尿病のこと——自身も発症を経験した医師が語る治療の実際

公開日

2026年04月08日

更新日

2026年04月08日

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2026年04月08日

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糖尿病・甲状腺・内科 はっとりクリニック知立 院長/服部 麗

糖尿病と聞くと「生活習慣の乱れが原因」と考える人は少なくない。しかし近年の医学では、糖尿病の発症は生活習慣だけで説明できるものではなく、さまざまな要因が関わると考えられるようになってきている。

特に1型糖尿病は、自己免疫異常や体質的要因によってインスリンがほとんど分泌されなくなる病気であり、生活習慣が直接の原因になるものではない。

それでもなお、「自己管理ができていない人がかかる病気」という誤解は広がったままであり、病気のことを周囲に打ち明けられず、孤独感を抱える患者もいる。

そこで本記事では、自身も1型糖尿病の患者である、糖尿病・甲状腺・内科 はっとりクリニック知立(愛知県知立市)院長の服部 麗(はっとり  れい)先生にお話を伺った。1型糖尿病の概要や治療法だけでなく、患者として孤独や苦悩とどう向き合ってきたのか、そして病気と共に生きるなかで、どのように希望を見いだしてきたのか。その思いを語っていただいた。

1型糖尿病とは?

1型糖尿病は、遺伝的な体質や自己免疫の影響、あるいはウイルス感染などをきっかけに、膵臓(すいぞう)のβ細胞が障害され、多くの場合、体内で血糖を下げるホルモン(インスリン)がほとんど分泌されなくなる病気です。小児期に発症することが多いですが、思春期以降に発症するケースもあります。成人発症の場合は、緩徐進行1型糖尿病でありながら初期に2型糖尿病と診断されることもあるため、正しい診断が重要です。

治療では、毎日複数回のインスリン注射やインスリンポンプ(インスリンを24時間持続的に注入する機器)を用いたインスリン補充が欠かせません。

糖尿病は、その病名のイメージから誤解されやすい病気ですが、実際には体質や遺伝、免疫の異常など、さまざまな要因が関わって発症します。

糖尿病にはいくつか種類がありますが、中でも1型糖尿病は自己免疫の異常などによって発症し、生活習慣が直接の原因になることはありません。

1型糖尿病と2型糖尿病、どちらも「多様で複雑な病気」

同じ「糖尿病」という名前がついていますが、1型と2型では、発症のメカニズムや治療のアプローチが大きく異なります。ただ、どちらにも共通して言えるのは「決して単なる生活習慣の乱れだけで起こる病気ではない」ということです。

糖尿病患者さんの多くを占める2型糖尿病は、インスリンの効果が現れにくくなったり、分泌量が不足したりすることで発症します。「生活習慣病」という言葉のイメージから誤解されがちですが、実際にはインスリン分泌が低下しやすい遺伝的な体質や加齢がベースにあり、そこに食生活や運動不足、ストレスなどの環境要因が複雑に絡み合って発症します。治療は適切な食事と運動から始め、必要に応じて薬物療法が行われます。

一方、1型糖尿病は、体内でインスリンがほとんど作られなくなる病気です。多くは自己免疫の異常などが原因とされていますが、原因がはっきりと分からないケース(特発性)もあり、その発症メカニズムは多様です。生活習慣が引き金になることはなく、発症時からインスリン注射やインスリンポンプによるインスリン補充が治療の基本となります。運動療法は推奨されますが、1型では運動により低血糖を起こすリスクがあるため、運動量やタイミングなどに配慮し慎重に行う必要があります。食事に関しては大きな制限はありませんが、摂取する糖質量を見積もってインスリン量を調整するカーボカウントが必要な場合もあります。

1型であっても2型であっても、糖尿病は「誰にでも起こり得る、多様な要因を持った病気」です。病名によるレッテル貼りをなくし、正しい理解が広まることが求められています。

技術の進歩で軽減されつつある治療の負担

近年、1型糖尿病の治療を支える環境は少しずつ整ってきています。従来は、指先に針を刺して血液を採取し、その都度血糖値を測定する方法が一般的でしたが、現在では上腕などに小型センサーを装着する「持続血糖測定器(CGM)」が用いられるようになっています。厳密には皮下の間質液中の糖濃度(グルコース値)を測るものですが、スマートフォンなどで24時間の変動をリアルタイムに確認できるため、指先に針を刺す回数を減らせるだけでなく、離れた場所にいるご家族が患者さんの血糖値の変動を把握することも可能です。

さらに、CGMとインスリンポンプを連携させ、リアルタイムのグルコースデータに基づいてインスリン注入量を自動調整するAID(自動インスリン注入システム)機能を備えた機器も普及しています。こうした技術の進歩によって、血糖値を目標範囲内に保ちやすくなり、患者さんの日常生活の負担は着実に軽減されつつあります。

もっとも、日々の自己管理が欠かせないのは変わりありません。長期にわたる自己管理には心理的な負担も伴うため、こうした治療機器の活用と併せて、専門医や教育を受けた医療スタッフによる継続的な支援を受けることも大切だと考えています。

糖尿病と共に生きていくために

実は私自身、学生時代に1型糖尿病を発症しました。当時は将来への不安が大きく、病気を抱える自分を肯定できずに過ごしていました。転機となったのは、同じ病気である医師の講演で耳にした「あなたは1人ではない」という言葉です。自分も支えられている存在なのだと気付き、気持ちが楽になったのを覚えています。

適切な血糖管理と、人とのつながり。治療の際にはこの両方を大切にして、まずは信頼できる医療機関を見つけてください。また、「患者会」など、同じ病気のある人同士が経験を共有できる場もあります。患者会は書籍や雑誌、インターネットなどで探すことができますし、通院している医療機関にある場合はスタッフに話を聞いてみるのもよいでしょう。仲間作りの場の1つとして、参加と活用を検討してみてください。

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