港北肛門クリニック 院長/山腰 英紀 先生
肛門(こうもん)まわりの不調は、痔だと思って「そのうち治るだろう」と放置したり、市販薬で対処したりするケースが少なくない。恥ずかしさや忙しさを理由に受診を先延ばしにしがちだが、痔のようにみえる症状の背後に別の大きな病気が隠れていることもある。
神奈川県横浜市都筑区にある港北肛門クリニックの院長・山腰 英紀(やまこし ひでき)先生は「気になる症状を抱えたまま日々を過ごすのではなく、できるだけ早めに受診して、専門医による診断と治療を始めることが大切です」と話す。
長年、肛門科医として肛門疾患の診療に携わり、日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医でもある山腰先生に、肛門の痛みや出血などの症状を放置してはいけない理由について、お話を伺った。
肛門の症状が1日で治まり、その後まったく繰り返さない場合は、そのまま様子を見ても問題ないケースもあります。ただし、同じような症状を何度も繰り返す場合は、一度受診していただいたほうがよいと考えています。
早い段階で受診してもらえれば、必要な検査や治療を早く始めることができます。その分、治療期間が短く済み、スムーズに回復することが期待できます。「こんなことで受診していいのか」と迷われる方も少なくありませんが、些細なことでも構いません。気になる症状が出た時点で、専門医に相談してもらえればと思います。
痛みや出血は、痔ではよくみられる症状です。ただし、痔の種類によって症状の出方は異なります。
いぼ痔の場合、痛みは少ないものの便器が真っ赤になるほど出血することがあります。切れ痔では、痛みと出血の両方がありますが、出血量はそれほど多くないことが一般的です。痔瘻(じろう)の場合は痛みや発熱などがあり、痛み止めを使って痛みを我慢しているうちに膿がたまり、状態が悪化してしまうことがあります。
痛み止めを飲まないとつらいほど痛む場合は、我慢せず早めに受診したほうがよいでしょう。特に痔瘻では、鎮痛薬で痛みを抑え続け適切な治療を受けずにいると、病状を悪化させてしまうこともあるので注意が必要です。また、いつもの出血だと思って放置していると、貧血が徐々に進行し、疲れやすくなったり、めまいが出たりすることもあるので、その場合も受診を検討されるとよいでしょう。
痔は初期の段階であれば、薬などによる保存治療で改善することも少なくありません。しかし、放置して悪化させると入院や手術が必要になることも考えられます。
肛門の痛みや出血があると、「おそらく痔だろう」と考えてしまう方も少なくありません。そういった症状はいぼ痔や切れ痔といった身近な病気によることが多い一方で、中には大腸の病気が隠れていることもあります。市販の塗り薬で様子を見ていたものの症状がなかなか治まらず、検査した結果、大腸ポリープやがんが見つかるケースも珍しくありません。
また、痔があると自覚している方の場合、痔そのものががんになることはありませんが、痔があることで症状を自己判断してしまい、結果としてがんの発見が遅れてしまうことは避けたいところです。
そのため、症状が続くときには、一度原因をきちんと確認しておくとよいでしょう。がんでないと分かれば安心につながると思いますし、大腸ポリープや大腸がんが見つかったとしても、早期であれば内視鏡での治療が可能なケースもあります。
痔の治療が必要になった場合、選択肢は1つではありません。症状の強さだけでなく、排便習慣や仕事・運動・飲酒などの生活習慣もさまざまですから、それに合わせた治療法を選択することも大切です。
また治療が必要かどうかにかかわらず、クリニックで診察を受け、原因がはっきりするだけでも、気持ちが前向きになる方もいます。不安を抱えたまま生活を続けるよりも、状況を整理することで、気持ちが落ち着くこともあるでしょう。
肛門の診察に対して「恥ずかしい」「患部を見せたくない」と感じる方は少なくないと思いますが、プライバシーへの配慮を大切にし、できるだけ受診しやすい環境づくりを心がけているクリニックも多いです。
不安を解消し笑顔になっていただくためにも、肛門の症状が気になる場合は、早めの受診を選択肢の1つにしてもらえればと思います。
取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。