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「手術が終わってからが、本当のスタート」 脳の病気と向き合うための医療が、なぜ地域に必要なのか

公開日

2026年02月24日

更新日

2026年02月24日

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2026年02月24日

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脳神経外科ブレインピア坂戸西 院長/伏原 豪司 先生

脳梗塞(のうこうそく)や脳出血といった脳の病気は、入院や手術を終えると「ひとまず落ち着いた」と感じられやすい。しかし、治療が一区切りついた後も日常生活は長く続いてゆく。

また脳の病気には、一時的に症状が出て短時間で治まる病気や自覚症状はないものの経過をみていく必要がある病気などもあり、「何か起きてから受診する」という考え方だけでは対応しきれない場面も少なくない。

そこで、こうした脳の病気と向き合い続ける地域診療の役割について、埼玉県坂戸市にある脳神経外科ブレインピア坂戸西の院長であり、日本脳神経外科学会認定の脳神経外科専門医や日本脳卒中学会認定の脳卒中専門医などの専門医資格を複数持つ伏原 豪司(ふしはら ごうじ)先生にお話を伺った。

脳の病気の再発予防で大切なのは、薬を飲むことだけではない

脳梗塞や脳出血といった脳の病気は、手術や入院治療を終えた時点で全てが解決するわけではありません。急性期の治療を終えた後、後遺症に対するリハビリテーションなどを経て多くの方は日常生活に戻られていきますが、再発を防ぐための管理はその後も続いていきます。

再発予防というと、薬をきちんと飲むことがまず思い浮かびますが、それだけでは十分とはいえません。脳の病気の背景には、高血圧症や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が関わっていることが多く、生活リズムや運動量、食事内容、水分摂取の状況なども影響します。

そのため、服薬に加えて、血圧や血糖値、コレステロールといった数値が安定しているか、生活の中で無理が生じていないかを、継続的に確認していくことが重要になります。

症状が消えても見過ごせない「一過性脳虚血発作」

また、脳の病気の中には、症状が一時的に現れ、しばらくすると元に戻るものがあります。たとえば、一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)は、手足のしびれや力の入りにくさ、ろれつの回りにくさなどが短時間で治まるもので、症状が消えたことで安心してしまう方も少なくありません。

しかし、こうした症状は脳への血流が一時的に不足したサインである可能性があり、症状の内容や持続時間によっては数日以内に脳梗塞を起こす危険があるといわれています。自覚症状がなくなったとしてもその後の経過を確認していく必要があり、状態に応じて内服治療や精密検査が行われます。

症状が軽かった場合や、すぐに治まった場合ほど受診が後回しになりがちですが、違和感があった段階で一度状態を確認することが、結果的にリスクの把握につながります。

自覚症状がほとんどない「未破裂脳動脈瘤」

一方で、未破裂脳動脈瘤(みはれつのうどうみゃくりゅう)のように、本人に自覚症状がほとんどないまま見つかる脳の病気もあります。脳ドックや画像検査をきっかけに指摘されることが多く、日常生活に支障がないため、経過観察の意味が分かりにくいと感じる方もいます。

未破裂脳動脈瘤は、脳の血管が破裂するとくも膜下出血が起こるため命に関わりますが、全てが直ちに治療の対象となるわけではありません。動脈瘤の大きさや形、部位などを踏まえ、定期的な画像検査で変化がないかを確認しながら経過をみていくケースもあります。

このような場合も、「症状が出ていないこと」「大きな変化が起きていないこと」を継続して確認すること自体が、病気と向き合ううえで重要になります。

地域診療で脳の病気を相談できることが、安心につながる

脳の病気と付き合っていくなかでは、「何か大きな症状が出たら病院に行く」という考え方だけでは足りない場面もあります。再発予防に取り組む場合や、一過性脳虚血発作・未破裂脳動脈瘤などの経過をみていく必要があるものでは、状態を定期的に確認しながら生活することが重要です。

そうした場合、専門的な視点を持つ医師に継続的に診てもらう必要がありますが、必ずしも大学病院や中核的な病院を受診しなければならないわけではありません。現在では、脳の病気を専門に診てきた医師が在籍する地域の脳神経外科クリニックも、退院後の経過や日常生活の中での変化を見守る役割を担っています。

症状の重さにかかわらず「これは様子を見てよいのか」「一度確認したほうがよいのか」と迷ったとき、身近なクリニックで相談できる環境は、患者さんにとって大きな支えになると思います。

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