とよだクリニック 院長/豊田 翔 先生
健診で血圧、血糖値、コレステロール値が高いと指摘されても、「体調に問題がないからまだ大丈夫」と、検査結果を引き出しにしまい込んでいないだろうか。自覚症状がないまま静かに進行し、ある日突然、脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞を引き起こすのが生活習慣病の怖いところだ。
しかし、問題はこれだけではない。大阪府羽曳野市のとよだクリニック院長・豊田 翔(とよだ しょう)先生は、クリニック開業前の15年間、外科医として手術と術後管理に携わってきた。そのなかで実感してきたのは、生活習慣病が手術や手術後の回復にも影響することがあるという事実だ。外科医として現場で感じてきた生活習慣病の「もう1つのリスク」について話を聞いた。
患者さんに「血圧が高いですね」とお伝えすると、「でも、体調はええんですよ」と返ってくることがあります。確かに、高血圧は自覚症状に乏しく、自分では気づきにくい状態です。そのため、血圧が高くても、日常生活の中で異常を感じないことがあります。コレステロール値や血糖値が高くても同じで、痛みや息切れなどの症状が出ることはまれです。だからこそ「まだ大丈夫」と思ってしまう方も少なくないのでしょう。
ただ、自覚症状がないからといって、体の中で何も起きていないわけではありません。高血圧は血管に負担をかけ続け、動脈硬化を進めます。脂質異常症では血管の内側にコレステロールが蓄積し、糖尿病は血管や臓器を少しずつ傷つけていきます。こうした変化は長い年月をかけて静かに積み重なり、ある日突然、脳梗塞や心筋梗塞という形で表面化するのです。
「もっと早く受診してくれれば……」医師として多くの患者さんを診てきたなかで、何度そう感じたか分かりません。
生活習慣病の影響は、他の病気で手術が必要になった場面でも表れることがあります。
たとえば、糖尿病の患者さんでは手術後に血糖値のコントロールが難しくなるほか、傷の治りが遅くなったり感染症のリスクが高くなったりすることが知られています。また、高血圧症がある場合には、手術や麻酔の影響で術中や術後に血圧や心拍が不安定になりやすく、循環器への負担が大きくなることもあります。
外科医として手術後の回復を見守るなかで、生活習慣病の影響を実感する場面は少なくありませんでした。
手術そのものだけでなく、その後の回復の過程にも影響する可能性がある――これが、私が手術現場で感じてきた生活習慣病の「もう1つのリスク」です。
生活習慣病は自覚症状が乏しいまま進行し、気付いたときには血管や臓器に影響が及んでいる場合があります。だからこそ、症状がない段階で見つけて対応することが大切です。
早い段階であれば、生活習慣の見直しによって数値が改善し、薬の減量や中止を検討できるケースもあります。
「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状がない今こそ、自分の体の状態を確認する機会」と捉えていただきたいと思います。
生活習慣病を指摘されたからといって、必ずしもすぐに薬物療法が開始されるとは限りません。数値の程度や合併症の有無などを踏まえ、食事や運動などの生活習慣の見直しを優先する場合もあります。
診療では、「薬に抵抗がある」「まずは生活習慣の改善に取り組みたい」といった考えを伺いながら、医学的な評価とあわせて治療方針を検討していきます。必要に応じて薬物療法を含めた選択肢を提示し、段階的に対応していくことが一般的です。
健診での数値が気になるものの受診していない場合には、「症状がないから」と油断せず、一度医療機関で評価を受けることが重要です。10年後、20年後の自分の健康を守るために、現時点でどのような対応が適切かを医師とともに整理していくことが、長期的な健康管理につながります。
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