ライフスタイルクリニックLokahi 院長/久場 良吾 先生
在宅で家族の介護をしていると、褥瘡(じょくそう)のケアが日々の負担の1つになることがある。丁寧に処置を続けていてもなかなか傷の改善がみられず、「私のやり方が悪いのでは?」と自分を責めてしまう家族も少なくない。
ライフスタイルクリニックLokahiの院長・久場 良吾(くば りょうご)先生は、日本形成外科学会形成外科専門医として在宅医療に取り組むなかで、こうした悩みを抱える家族の姿を診療の現場で数多く目にしてきた。
今回はそんな久場先生に、褥瘡が治りにくい理由と、日々ケアを担う家族に知っておいてほしいポイントについてお話を伺った。
褥瘡は、長時間にわたって同じ部位が圧迫されることで血流が妨げられ、皮膚や組織が傷んでしまった状態です。寝たきりの方や長時間同じ姿勢で過ごすことが多い方では、特に発生しやすいとされています。
背中やお尻、かかとなど、体重がかかりやすい部位に生じることが多く、皮膚の赤みやただれ、傷として現れることがあります。また褥瘡は、単に圧迫が加わるだけでなく、体が動いた際に皮膚とその下の組織の間に「ずれ(せん断力)」が生じることでも起こるとされています。こうした力が組織の内部に加わることで、皮膚の深い部分で組織障害が生じることがあります。
一度できると治癒までに時間がかかることもあり、日々のケアが重要とされています。
褥瘡が治りにくい背景には、傷そのものの状態だけでなく、その方の生活環境や体調も深く関わっています。
たとえば、日常的なおむつの着用による汚染、日中に処置を担えるご家族の不在、食事量の低下による栄養不足――こうした生活上の課題が複合的に絡み合うと、丁寧に処置を続けていても傷の改善に時間がかかることがあります。
また、褥瘡の予防やケアのために導入される福祉用具も、使い方が適切でなければ十分な効果を発揮しません。たとえば、エアマットや車椅子クッションの空気圧が適切に調整されていない場合や、車いすの角度調整やポジショニングピローの使用が不適切な場合には、体にかかる圧力がうまく分散されないこともあります。
加えて、褥瘡は日々状態が変化する傷でもあります。傷そのものだけでなく、患者さんの体調も変化していきます。そのため、同じケアを続けていればよいとは限りません。「先月と同じケアをしているのに悪化した」という場合、それはケアが間違っていたというより、傷や全身状態が変化したサインかもしれません。
毎日ケアをしているのに傷がよくならないとき、「自分のやり方が悪いのではないか」と不安になるご家族もいらっしゃいます。しかし、それはケアをしている方の責任とは限りません。
そもそも褥瘡は、全身状態が低下してきたことを表現しているとも言えます。褥瘡は目に見える傷だからこそ、どうしても気になってしまうものです。毎日目にすることで、「治っていない」という事実を繰り返し意識し、ご家族がつらい気持ちになるのは自然なことです。
しかし大切なのは、ケアの改善点を模索し続けること。そして、悪化したときに医療や介護の専門家に相談できる環境を整えておくことです。専門家が関わることで、現状について説明を受けたり、今後の見通しを共有できたりすることがあります。それだけでも、不安を和らげることができると思います。
褥瘡の在宅ケアは、ご家族だけで担うものではありません。
「今のケアで本当に合っているのだろうか」
「もっとよい方法があるのではないか」
そうした疑問や不安を感じたとき、専門家への相談をためらう必要はありません。「こんなことを聞いてよいのだろうか」と思うような小さな疑問でも、遠慮なく声をかけていただきたいです。
在宅医療に関わる専門家が目指すのは、患者さんの病気を治すことだけではありません。毎日ケアをしながら不安を抱えているご家族が、少しでも安心して日々を過ごせるようになることも大切な役割だと考えています。まずは、かかりつけの医師や、地域のケアマネジャー、訪問看護ステーション、地域包括支援センターなどに相談してみてください。そうした一歩が、状況を見直すきっかけになると思います。
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