連載クリニックの現場から

糖尿病ではなく「ダイアベティス」へ――受診の心理的ハードルを下げる工夫

公開日

2026年03月27日

更新日

2026年03月27日

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2026年03月27日

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むらい内科ダイアベティスクリニック 院長/村井 啓了 先生

健康診断で血糖値の異常を指摘されても「症状がないから」「まだ大丈夫だろう」と受診を先延ばしにしてしまう人は少なくない。その背景には、糖尿病という病名に対するマイナスイメージや心理的抵抗感があるとも指摘されている。

近年、医療現場ではこうした“言葉の壁”にも目を向け、あえて英語の「diabetes」(以下、ダイアベティス)という呼び方を用いる取り組みもみられる。病名を言い換えること自体が治療になるわけではないが、「怖い病気だから」「自分のせいだから」と1人で抱え込み、受診が遅れる状況を少しでも減らしたい――そうした問題意識から、院名に「ダイアベティス」を掲げる医師もいる。

その1人である、大阪府三島郡島本町のむらい内科ダイアベティスクリニック 院長・村井 啓了(むらい ひろのり)先生に、糖尿病治療の考え方や、受診をためらう気持ちとの向き合い方についてお話を伺った。

ダイアベティスとは?――糖尿病とほぼ同義

ダイアベティスは「糖尿病」とほとんど同義の言葉です。英語では糖尿病のことをダイアベティス・メディテスと呼び、縮めてダイアベティスと呼ぶことも一般的です。呼び方が変わることで、診断基準や治療方針、合併症の考え方に違いが生じるわけではありません。

それでも、医療機関がこの言葉に注目したのは、診療の現場で「糖尿病」という言葉が患者さんに与える心理的影響を重く受け止めていることが背景にあります。病名を聞いた瞬間に「一生治らない」「厳しく管理される」「怒られるのではないか」と身構えてしまい、気持ちが追い付かずその後の説明が届かなくなってしまう方もいます。

私自身も患者さんとの対話を通じて、医学的に正しい病名でも、受け取る側の気持ちによっては医療を遠ざけてしまう恐れがあると感じてきました。

「糖尿病」という言葉そのものが、受診のハードルになることも

糖尿病は、生活習慣の乱れが引き起こすと思われがちな病気です。「自分の生活が悪かったせいだ」「だらしないと思われそうだ」と、必要以上に自分を責めてしまう人も少なくありません。そうした心理的な負担が、受診を遅らせる一因になっていることもあります。

そんななか病名を「糖尿病」ではなくダイアベティスと呼ぶのは、病気を軽く見せるためではありません。風邪や花粉症、高血圧などと同じように、体の状態を確認し、必要に応じて対処していく病気の1つとして、過度な恐怖や罪悪感を持たずに向き合ってほしいという思いがあるからこそです。

「糖尿病」予備軍になっていないか、早めの確認が大切

糖尿病の特徴は、初期にはほとんど症状が出ないことです。そのため、健康診断で指摘されても実感がわかず、様子を見てしまう方が多くいます。しかし、血糖値が高い状態が続くと、知らないうちに血管が傷つき、将来的に目や腎臓、神経などに影響が出る可能性があります。

もし、健康診断で異常を指摘されたら、体がサインを出す前に発見できたと考えていただきたいです。

この時点で医療機関を受診し、今の状態でどの程度病気が進行しているのか、将来どのようなリスクがあるのか、専門的な視点から確認してもらうことで、その後の治療の選択肢が広がります。

生活習慣の見直しは完璧を目指すよりも、まず「今日できる一手」を

糖尿病の治療のために生活習慣を改善するというと、「食事を全部変えなければ」「運動を毎日しなければ」と身構えてしまう方もいます。しかし、最初から完璧を目指す必要はありません。

たとえば、糖分の入った飲み物を控えることは、血糖値への影響が大きいうえ、比較的取り組みやすいと思います。実際、おやつを全てやめるのは難しくても、飲み物なら変えやすいという方もいます。そうした小さな改善を積み重ねていくようにすることで、治療が続けやすくなります。

糖尿病の治療は、長く取り組んでいくことが多いからこそ、無理なく続けられる形を一緒に作っていくことが重要です。まずは、糖尿病を過度に恐れず、ご自身の今の状態を知るところから始めましょう。

 

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