しゃばなこどもクリニック院長/謝花 幸祐 先生
「咳が続いているが、熱もなく元気そうなので様子を見ている」「保湿をしても湿疹を繰り返すが、受診するほどではない気がする」。このように、子どもの症状に気付きながらも、受診のタイミングを迷った経験のある保護者は少なくないだろう。
長引く咳や繰り返す湿疹は、かぜや乾燥によるものと思われがちだ。しかし、その中には喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患が隠れていることもある。
日本小児科学会小児科専門医として、大学病院や総合病院で小児診療の経験を重ねてきた、しゃばなこどもクリニック院長・謝花 幸祐(しゃばな こうすけ)先生はこう語る。
「長引く咳や繰り返す湿疹は、“体質だから”と自己判断せず、一度医療機関に相談してほしい症状です」。
今回は、見逃されやすい子どものアレルギー性疾患の特徴や受診の目安について、謝花先生に伺った。
気管支喘息は、調査方法や年齢によって差はあるものの、小児で比較的多くみられる病気です。かぜの後も咳だけが続いていると、「治りかけだから様子を見よう」と考えてしまうことがあると思いますが、そうしたケースの中には、背景に喘息が潜んでいる場合もあります。
保護者の方に注目していただきたいのは、お子さんの咳が、いつ、どのようなときに出るかという点です。「夜寝ている間に激しい咳が出る」「運動した後に激しく咳き込む」「冷たい空気を吸うと胸が苦しくなる」といった症状は、他の病気の鑑別も必要ですが、喘息を疑う手がかりになることがあります。
かぜ症状は落ち着いたものの、咳だけが数週間にわたって続いている場合や、かぜをひいていないのに咳が日常的にみられる場合は、医療機関で一度状態を確認してもらうことが大切です。
アトピー性皮膚炎も、見逃されやすい病気の1つです。「うちの子は乾燥肌だから」「乾燥する季節だから仕方がない」と考えていたところ、実はアトピー性皮膚炎だったということも少なくありません。
保護者の方に注意していただきたいのは、保湿してもよくならない肌荒れです 。保湿薬を毎日きちんと塗っているにもかかわらず、皮膚の赤みやかゆみが続いているなら、アトピー性皮膚炎の可能性もあります。また、「かゆみを伴う湿疹が長く続く」「よくなったり悪くなったりを繰り返す」といった特徴も、代表的なサインです。
特に乳幼児では、「成長とともによくなるだろう」と様子を見ているうちに、受診のタイミングを逃してしまうこともあります。しかし、アトピー性皮膚炎は早期から適切なスキンケアや治療を行うことが重要です。
その理由の1つが、食物アレルギーなどとの関連です。アトピー性皮膚炎によって皮膚のバリア機能が低下すると、食物などのアレルゲンが皮膚から体内に入り込みやすくなり、食物アレルギーやその後の喘息・アレルギー性鼻炎などの発症につながる可能性があると考えられています(アレルギーマーチ)。
「肌が弱いだけ」と自己判断せず、早めに適切なスキンケアや治療につなげることが求められます。
受診を迷う背景には、「子どもが採血を嫌がりそう」「検査でつらい思いをさせたくない」といった保護者の方の不安もあります。
しかし、アレルギーの診断は必ずしも検査だけで決まるものではありません。まずは症状や経過を丁寧に確認し、そのうえで必要に応じて血液検査などを検討します。
近年では、お子さんの負担を軽減するため、指先からのごく少量の採血で検査できる機器を導入している医療機関もあります。お子さんの状態によっては従来の方法で採血する必要がありますが、こうした機器の導入によって採血に伴う痛みや恐怖感の軽減も図られています。
「採血が苦手だから」と受診を避けるのではなく、まずは検査が必要な状態なのかどうかも含めて、医師に相談してみるとよいでしょう。
「これくらいの症状で病院に行ってもよいのだろうか」と迷う方もいるかもしれません。しかし、長引く咳や繰り返す皮膚症状は、体からの大切なサインです。
喘息やアトピー性皮膚炎は、適切な治療・管理を行うことで、症状をコントロールしながら日常生活を健やかに送ることを目指せる病気です。一方で、対応が遅れたり、治療が不十分な状態が続いたりすると、病状が悪化するだけでなく、睡眠不足や集中力の低下など、日常生活や学校生活に影響を及ぼすことがあります。
子どもは自分のつらさを十分に言葉で表現できないことがあります。さらに、喘息による咳や息苦しさ、アトピー性皮膚炎によるかゆみを、本人も保護者も「いつものこと」と捉えてしまい、症状がある状態そのものを当たり前だと思っているケースも少なくありません。
こうした思い込みが、受診や治療の遅れにつながることがあります。気になる症状が続く場合は、まずはかかりつけの小児科に相談してみてください。
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