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高血圧はすでに「心不全ステージA」だった――循環器専門医が語る、“心不全パンデミック”時代を生き抜く知恵

公開日

2026年08月19日

更新日

2026年08月19日

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2026年08月19日

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松本 佐保姫 先生/まつもとメディカルクリニック 院長

「血圧が高め」と言われても、まだ心臓の病気とは無関係だと思っている人は多いのではないだろうか。しかし近年の考え方では、高血圧の症状がみられた時点ですでに「心不全のはじまり」の段階だと位置づけられている。心不全は高齢化にともない患者数が増え続けており、“心不全パンデミック”という言葉さえ使われるようになっているほどだ。

東京大学医学部附属病院などで循環器診療に携わり、現在は東京・江東区のまつもとメディカルクリニック院長で、日本循環器学会認定の循環器専門医・松本 佐保姫(まつもと さほひめ)先生に、とりわけ中高年に多いとされる心不全についてお話を伺った。

高血圧は、すでに心不全の「ステージA」

心不全というと、すでに心臓が弱ってしまった状態を思い浮かべるかもしれません。しかし近年は、症状が出てから始まるものではなく、症状のない時期から進行していくものとして段階(ステージ)でとらえる考え方が広まっています。

この考え方では、心不全はステージAからDまでの4段階に分けられます。その出発点にあたるステージAは、まだ心臓自体に構造的な異常はないものの、高血圧や糖尿病などのリスクを抱えた段階です。
つまり、高血圧を指摘された時点で、すでに心不全の入り口に立っていると考えられます。決して患者さんを怖がらせたくて言っているのではなく、早い段階から手を打てるという前向きな意味に捉えていただければと思います。

「身近な病気」が、心不全の要因をつくる

高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、多くの方がかかる身近な病気です。医療の世界では「コモン・ディジーズ」と呼んでいますが、実は、こうした身近な病気こそが心不全の要因を静かにつくっていきます。

高血圧は、自覚症状のないまま血管や心臓に負担をかけ続けます。糖尿病も同様に、気付かぬうちに動脈硬化を進めます。目立った不調がないまま、長い時間をかけて心臓のはたらきがむしばまれていく――そこに、生活習慣病の見過ごせない怖さがあります。

中高年以降に増える、「心臓は動いているのに心不全」

心不全にはいくつかのタイプがあります。中でも近年増えているのが、心臓を収縮させるポンプのはたらきは保たれているのに、心臓の筋肉が硬くなってうまく広がらず、血液を十分に受け入れられなくなるタイプです。専門的には「拡張障害」や「HFpEF(ヘフペフ)」と呼ばれるもので、加齢が要因になることも多く、中高年によくみられます。

このタイプは、心臓の収縮が正常に見えやすいことが特徴です。動くと息切れがする、足がむくむ、疲れやすいといった症状は、「年のせい」や「運動不足のせい」と思い込んでしまうことも少なくありません。

しかし、ここで見過ごせないのが、その先に起こる悪循環です。
少し歩くと息が切れるために動くのが億劫になり、筋力が落ちていく。すると体力が低下し、動かないことがさらに心臓の状態を悪化させてしまう。少しずつ、寝たきりに近づいてしまうのです。

最初の段階で少し体を動かすことを習慣化するなど、適切に対処していれば、まだまだ元気に過ごせたはずです。小さな変化を見過ごさないことが、動ける体を維持する第一歩になるといえます。

“心不全パンデミック”時代を生き抜くために

日本では高齢化を背景に心不全の患者さんが増加しています。この傾向は少なくとも2035年ごろまで続くとみられており、 2030年には年間35万人以上が新たに心不全を発症するとも推計されています。感染症の大流行になぞらえて“心不全パンデミック”とも称されるほどに患者数が増加の一途をたどっている今、心不全はもはや誰にとっても他人事とはいえません。

だからこそ鍵になるのが、発症する前の「予防」です。とりわけ40歳代・50歳代からの生活習慣の見直し(減塩を心がける、適度な運動を習慣にする、年に一度は健診を受けて自分の数値を把握するなど)が、将来の心臓を守る土台になります。

血圧が高めに出ている、高血圧だと判明したということは、これから心不全の対策を始められるということでもあります。「血圧が高いだけ」と軽く考えず、将来の心不全につながり得る危険因子として受け止めていただきたいと思います。
気になる変化があれば、年齢のせいと決めつけず、一度、専門医にご相談ください。

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