新百合ヶ丘石田クリニック 院長/石田 一雄
長く咳が続いているのに、「そのうち治るだろう」と市販の咳止めでしのいでいる――そんな経験はないだろうか。
長引く咳の背景には、気管支喘息や、その一歩手前とされる咳喘息が潜んでいることがある。また、すでに喘息と診断されていても、症状が落ち着いたからと自己判断で治療を中断してしまうケースも少なくない。
喘息は、正しく診断し、正しく付き合い続けることが何より重要な病気だ。
そこで、新百合ヶ丘石田クリニック院長であり、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医・ 日本喘息学会認定喘息専門医である石田 一雄(いしだ かずお)先生に、喘息との正しい向き合い方についてお話を伺った。
風邪をひいた後、咳だけがなかなか治まらないという経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。こうした「長引く咳」の背景には、咳喘息が潜んでいることがあります。
咳喘息は、気管支喘息と同じように気道に炎症があり、刺激に敏感になっている状態です。ただし、ゼイゼイ・ヒューヒューといった喘鳴を伴う典型的な喘息症状は現れにくく、「咳だけが長引く」という形をとることが多いのが特徴です。放置すると、風邪などをきっかけに本格的な喘息へと移行するリスクがあります。
また、長引く咳の原因は咳喘息だけとは限りません。百日咳やマイコプラズマ感染症などによって引き起こされる場合もあります。
市販の咳止め薬を使っても改善しない場合や、咳が長引く場合は、自己判断で様子を見続けず、専門的な医療機関を受診することをおすすめします。
喘息と聞くと、「アレルギー体質の人がなる病気」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし実際には、アレルギーが確認されない人でも発症することがあります。
喘息に共通しているのは、アレルギーの有無にかかわらず、気道に炎症が起こり、刺激に対して過敏になっているという点です。そのため、通常なら問題にならないような刺激でも、咳や息苦しさなどの症状が現れたり、悪化したりすることがあります。
たとえば、香水や線香の煙、気温の変化、長時間の会話やカラオケといった日常的な刺激で咳が出たり、喉に違和感を覚えたりする場合は、喘息のサインである可能性があります。「アレルギーがないから喘息ではない」という思い込みが、受診の遅れにつながることもあるため、注意が必要です。
喘息と診断されて治療を始めると、吸入薬などの効果で症状が落ち着いてくることがあります。しかし、ここで「もう治った」と自己判断し、治療を中断してしまうのは危険です。
喘息は、症状が出ていないときでも気道の炎症が続いていることがあり、何かのきっかけで突然発作が起こる可能性があります。喘息の治療は、症状をコントロールするだけでなく、発作を起こさないための「備え」でもあるのです。
治療の過程では、症状や検査結果が安定していれば、医師の判断で薬の量や種類を段階的に減らす「ステップダウン」を行うことがあります。一方で、国際的な喘息のガイドラインでは、成人および思春期の患者さんについて、吸入ステロイド薬を完全に中止しないことが推奨されています。
大切なのは、必要最小限の治療を継続することです。調子がよいからといって、自分の判断で薬を減らしたり、完全にやめたりせず、治療内容については必ず医師にご相談ください。
喘息のある方が見落としがちな注意点として挙げられるのは、一部の解熱鎮痛薬が喘息を悪化させる可能性があることです。
市販薬としても広く使われているNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類される解熱鎮痛薬は、一部の喘息患者さんにおいて、咳や息苦しさなどの症状を悪化させることがあります。
注意が必要なのは、飲み薬だけではありません。NSAIDsを含む湿布やテープなどの貼り薬を使用した後に、咳などの症状が悪化するケースもあります。頭痛や生理痛、腰痛などで何気なく使用した薬が喘息症状に影響する可能性があることは、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。
喘息と診断されている方は、痛み止めを選ぶ際に必ず医師や薬剤師に相談するようにしてください。症状に応じた代替薬もありますので、自己判断せず、専門家に相談することが大切です。
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