「コロナの流行はもう終わった」――そう思っている方は多いかもしれません。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は5類感染症になりましたが、今もなお私たちの健康への脅威は続いています。2024年に入ってからも1~2月に第10波、7~8月には第11波の流行が観察されました。また、過去1年間の新型コロナによる死亡者数はインフルエンザの10倍以上だったことも分かっています。こうした状況を踏まえ、新型コロナの重症化・死亡リスクが高い65歳以上の高齢者を対象*に、2024年度から新型コロナワクチンの定期接種が開始されました。今冬の流行に備えて、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会の3学会は1月17日、ワクチン接種を呼びかけるリーフレットを公表しました。
*60~64歳の方でも心臓・腎臓・呼吸器の機能障害やヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害があり生活が
不自由な場合には定期接種の対象となる。
今年度の新型コロナワクチンの定期接種は、2024年10月1日から2025年3月31日までの期間に行われます(自治体により実施期間が異なる場合があります)。医師が必要と認めた場合は、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなど、ほかのワクチンと同時に接種することが可能です。接種費用については、お住まいの自治体で定められた自己負担額がかかります。65歳以上の高齢者の定期接種について、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会は「強く推奨する」という見解を公表しています。
新型コロナワクチンの接種を考えるとき、まず頭に浮かぶのは「ワクチンは本当に安全なのか」という不安かもしれません。現在、日本では5種類の新型コロナワクチンが承認されており、いずれも臨床試験で安全性が確認されています。高齢者では接種と因果関係があると判断された死亡例は認められていません。また、専門家により接種後の有害事象の継続的なモニタリングも行われています。副反応としては発熱や接種部位の痛みなど軽度なものが大半で、多くは自然に回復することも分かっています。
ワクチンの効果についても科学的に証明されています。世界規模の研究では、新型コロナワクチン接種により多くの命が救われたことが示されており、日本国内でも重症化や死亡のリスクが大きく減少したことが確認されました。また、新型コロナ罹患後の長引く症状(疲労感、息切れ、集中力の低下など)、いわゆる“Long COVID”のリスクを減らす効果も期待されています。
新型コロナワクチンの効果はずっと続くわけではなく、時間の経過とともに徐々に弱まります。また、新型コロナウイルスは次々と変異株が発生しています。ウイルスは変異するたびに、ヒトの免疫を回避する力が強まっているため、新たな変異が起こると既存の免疫では十分に対応できなくなることが懸念されます。2024年3月に国内で行われた調査では、若い世代に比べて、高齢者の方で感染経験者の割合が低いことが報告されています。この結果は、高齢者の方が感染リスクを適切に避けてきた一方で、自然感染による追加的な免疫を得る機会が少なかったことを示しています。なお、過去1年間の新型コロナウイルス感染症による死亡者数は、インフルエンザの10倍以上でした。日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会の3学会は65歳以上の方に向けて、新型コロナワクチンの接種を呼びかけています。
2025年1月21日
https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/statement/20250117105622.html
取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。