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日本小児神経学会学術集会が栃木で開催――小児神経疾患治療が迎える“転換点”

公開日

2026年05月26日

更新日

2026年05月26日

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2026年05月26日

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第68回日本小児神経学会学術集会が、2026年6月3日~6日に栃木県のライトキューブ宇都宮およびホテルマイステイズ宇都宮で開催されます。会長を務める小坂 仁(おさか ひとし)先生(自治医科大学 小児科学 教授)に、学術集会の見どころや、小児神経疾患の診療にかける思い、患者さんやご家族と向き合うなかで大切にしてこられたことなどを伺いました。

提供:小坂 仁先生

提供:小坂 仁先生

「どんな子どもにも可能性がある」――学会テーマに込めた思い

今回の学術集会のテーマは「多様性の中で輝く次世代 ~子どもの未来を育む~」としました。日本小児神経学会では、神経や筋肉に障害のあるお子さんに関するさまざまな相談を受け止め、治療や支援を考える役割を担い、診療の場ではお子さんの“伴走者”となってその成長や生活をサポートしています。本学術集会のテーマ「多様性の中で輝く次世代」には、どのような障害を抱え、どのような環境で生まれ育つとしても、一人ひとりの可能性を最大限に発揮できるよう、お子さんとご家族にとって希望のある未来を作りたいという思いを込めました。

小児神経診療の最前線――福山 幸夫記念講演

今回のプログラムの中でも特に多くの方に聴講していただきたいのが、日本小児神経学会初代理事長である福山 幸夫先生の記念講演(Yukio Fukuyama Memorial Lecture)です。今回は、重度の知的障害をきたすATR-X症候群という病気の研究に生涯にわたって取り組み、原因を解明されたRichard Gibbons先生(オックスフォード大学)にご講演いただきます。ATR-X症候群に対する治療は対症療法が中心ですが、現在、日本の研究者が中心となって治療法の開発が進められています。小児神経疾患領域の進歩と呼応するかのように、知的障害の原因が遺伝子レベルで明らかになり、分子メカニズムに基づく治療の開発がグローバルに展開されている現状から、福山先生という偉大なパイオニアに冠をとる記念講演に相応しい講演となるはずです。

注目のプログラム――国内外の参加者が知見を共有

特別講演としては、村松 慎一先生(自治医科大学神経遺伝子治療)による日本の遺伝子治療に関する講演や、安藤 寿康先生(慶應義塾大学大学院社会学研究科)による“氏(生まれ)か育ち(環境)か”という行動遺伝学的人間観についての講演を予定しています。また、生命に欠かせない機能“オートファジー”の研究において日本の第一人者である水島 昇先生(東京大学大学院医学系研究科分子生物学分野)や、シナプスの生理学的な研究で知られる柚﨑 通介先生(慶應義塾大学ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター)にもご講演をいただきます。

さらに、海外からも4名の演者をお招きしています。オートファジーが関与する新しい疾患概念のお話から、細胞を培養して作るミニチュアの臓器“オルガノイド”を活用した研究、デジタル時代の発達障害の研究、台湾における新生児スクリーニングまで、幅広い演題が揃いました。

ほかにも、16題の教育講演をはじめ、若手向けのワークショップ、日本遺伝子細胞治療学会との連携シンポジウム、災害対策委員会が主催する研修会など、多彩な企画を用意しています。多くのプログラムが並列で行われるため、当日は学会員の発表を中心に聴講して討議にご参加いただき、残りの演題はオンデマンドでの視聴をご検討ください。

なお、ポスター会場では2日間にわたり、夕方から軽食を取りながらのディスカッションの場を設けています。ぜひ積極的に参加していただき、終了後は宇都宮の町へも足を伸ばして親睦を深めていただければと思います。

患者さんやご家族と共に歩む学会へ

最終日の6月6日には、市民公開講座「こどもまんなか×家族まるごと支える社会のために」を開催します。障害があるお子さんの預かりや見守りなどを提供する「認定NPO法人うりずん」の理事長である髙橋 昭彦先生をはじめ、地域で尽力されている先生方が登壇します。こうした公開セミナーを通じて、市民の方々との交流も深めていきたいと考えています。

また、今回は染色体異常疾患や遺伝性疾患など30以上の「患者家族会」のブースが出展される予定です。広いスペースを準備しているので、ぜひ大勢の方に立ち寄って交流を行っていただければ幸いです。

近年、小児神経疾患領域では、医師と患者会との連携が欠かせないものとなっています。特に希少難病においては患者会が中心となって研究・開発が進む側面があり、医師と患者さんやご家族との信頼関係こそが新しい治療薬の開発の基礎となります。私自身、先天性大脳白質形成不全症家族会と30年ほど活動を共にするなかで、患者さんやご家族と膝を突き合わせて語り合う機会もあり、その重要性を実感してきました。ぜひこの機会に横のつながりを広げていただければと思います。そして、今回の交流の場が、新たな治療の開発や発信につながる基盤となることを期待しています。

長く寄り添う診療の中で見えてきたこと

私が診療において大切にしていることは、患者さんとご家族に寄り添い、見て、聞いて、的確な診断を行うということです。そのうえで、治療が可能な病気については現在の知見に基づいて最善を尽くし、現時点では治せない病気でも患者さんの伴走者となって支え続けるように努めています。小児期医療では適切な時期に成人期医療へ移行することも必要ですが、移行が困難なために引き続き小児科の医師との関わりを継続するケースも少なくありません。神経疾患は長く付き合うことが必要な病気であるからこそ、患者さんの一生を見通してサポートしていく覚悟が必要な分野であると思っています。

患者さんと長くお付き合いしているうちに、5年、10年と月日がたって根本的な治療が見つかることがあります。近年では、遺伝性の病気である“脊髄性筋萎縮症”や“デュシェンヌ型筋ジストロフィー”に対する遺伝子治療薬が新たに登場しました。今回の学術集会でも、遺伝子治療を大きなテーマとして取り上げます。これまで私たちが何とかしたいと願い続けてきた病気に対して、治療法を考えられる時代が来たことは非常に感慨深く、歴史的な転換期を迎えていると感じています。

最後に――学会員の皆さんへのメッセージ

日本小児神経学会は、小児の脳・神経・筋障害を幅広く診る専門家を育成し、障害を抱えるお子さんに寄り添う医師集団として活躍してきました。一方で、学問領域の国際化がまだ十分に進んでいないといった課題もあることが現状です。そこで、本会では海外との交流や国際発信を強化すべく、若い世代を中心として海外への成果発表を後押しできるような企画を準備しています。

私たち小児神経学会員はさまざまな立場や環境におかれていますが、共通して「この領域に貢献したい」「一緒に取り組んでいこう」という思いを持っている方が多いのではないかと思います。こうした思いを共有し、それぞれの現場で患者さんやご家族の声に耳を傾け、確かな知識と技量をもって、最大限できることを果たしていってほしいと願っています。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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