日本医学会連合は、近年注目が集まる「ゲノム編集」について解説したウェブサイトを開設。一般には馴染みのないゲノム編集について、多くの国民が理解しやすいよう、平易な文章とイラストを使った分かりやすい解説がなされている。「ゲノム編集」は新たな治療法の開発につながる一方で、適切に使用しないと社会に不利益をもたらす恐れもある。ウェブサイトでは、ゲノム編集とは一体どのようなもので、何に役立ち、何に注意しなければならないのかなどについて学ぶことができ、夏休みの自由研究の参考にもなりそうだ。
「ゲノム編集」とは、人間、動物、植物まであらゆる生物が持っている遺伝情報であるゲノムの一部を書き換える技術のことだ。ヒトの体は約37兆個の細胞から成り立っており、一つひとつの細胞の中には細胞核がある。さらにその細胞核の中に、遺伝情報の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)が存在。DNAは二重らせん構造(鎖のような形状)をしており、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4塩基が並ぶ。これら塩基の並び(配列)に何らかの変異(置き換わり、欠損、増加など)が生じると、遺伝性の病気やがんを引き起こすことがある。
近年、狙った場所のゲノムDNAを“切り貼り”するゲノム編集技術が開発され、これを使って変異した遺伝情報を書き換えることができる。医薬品開発や農作物の品種改良ではすでに応用され始めており、病気に対する新たな治療法の開発にも期待がかかっている。
ただし、ゲノム編集技術は負の結果をもたらす恐れがある点にも留意しなければならない。生じ得る倫理的課題についても考慮する必要がある。
「ゲノム編集とその応用の可能性について正しく理解してほしい」という目的で、日本医学会連合は「ゲノム編集解説ウェブサイト」を開設。一般人向けに、ゲノム編集の基礎知識、医療への応用例、研究開発の動向、倫理的課題などについて、イラストを使いながら平易な文章で分かりやすく解説している。中学生・高校生の夏休みの自由研究の材料に選んでもらえることも目指しているという。
作成は日本医学会連合 教育・研究推進委員会傘下の「ゲノム編集技術の医学応用に関する検討作業部会」(松原洋一座長<国立成育医療研究センター>)。公開されている情報が最終版ではなく、今後の研究の進歩を反映するように常時更新していく予定だという。
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