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認知症の40%は予防が可能?―医学誌が示した12の「修正可能」な危険因子

公開日

2021年07月28日

更新日

2021年07月28日

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2021年07月28日

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年々増加する認知症の患者数。2025年には65歳以上のうち5人に1人が認知症になると推測され、その治療・ケアは社会の大きな課題と認識されています。一方で、根本的な治療法がない現状で認知症をいかに予防するのかという問題は世界中で注目される研究テーマでもあります。そのようななか、世界的な医学誌ランセットの国際委員会が2020年に「認知症の12の危険因子」を発表し話題になりました。認知症の予防において重要なポイントは何か、内門大丈先生(湘南いなほクリニック院長)にお話を伺います。

認知症は予防可能か?

現代の医学では認知症を完璧に予防することは難しいですが、危険因子に対する対策・管理によって認知症の発症や進行を遅らせることは可能です。

認知症の予防には▽発症を防ぐための「一次予防」▽早期診断により進行を遅らせるための「二次予防」▽認知症になっても住み慣れた地域で役割を果たし、自分らしく暮らし続けるための「三次予防」――という3段階の考え方があります。

たとえば、認知症の発症予防として生活習慣病の治療は重要であり、認知症になってからも同様に生活習慣病の改善が認知症の悪化を防ぐために必要です。さらに、自分らしく暮らすために社会的な交流を絶やさないことも重要になります。認知症の予防では、これら3つの視点で対策・管理方法を考える必要があるのです。

予防のポイント「12の危険因子」とは?

ランセットのレポートでは、認知症の40%ほどは修正可能な危険因子によるものであり、それら12の危険因子を改善することで理論上は認知症のおよそ40%が予防可能としています。

では、認知症の予防でポイントとなる12の危険因子とはどのようなものか――同レポートによると、45歳未満では「教育不足」、45〜65歳では「難聴」「頭部外傷」「高血圧」「過度の飲酒」「肥満」、66歳以上では「喫煙」「うつ病」「社会的孤立」「運動不足」「大気汚染」「糖尿病」が危険因子になり得るといいます。

予防のポイント「12の危険因子」とは?

生活習慣病を放置しないで

12の危険因子のうち、予期しにくいものや環境的なものを除くと、ほかは主に生活習慣に関わるものです。中でも高血圧や肥満、糖尿病などの生活習慣病が危険因子になることが分かっているため、まずは生活習慣を改善してそれらの病気を予防すること、あるいは病気が分かった時点で適切に治療することは認知症予防において非常に重要です。

しかしながら、働き盛りで生活習慣病が判明しやすい時期、たとえば40〜50歳代くらいの方は健康診断で生活習慣病を指摘されても「忙しいから」「痛みがないから」という理由で放置してしまうことがあるようです。しかし、生活習慣病はさまざまな病気の危険因子になりますし、認知症にも大きな関わりを持ちます。決して放置せずに、早めに病院を受診してほしいです。

コロナ禍を経て今はオンライン診療の敷居が以前よりも低くなりました。そのようなサービスを活用することで通院の負担が軽くなるケースもありますので、ぜひご検討ください。

進む「認知症と生活習慣」に関する研究

世界では、科学的根拠に基づいた認知症発症リスクの軽減についてさまざまな研究が行われてきました。その1つが、2009〜2011年にかけてフィンランドで行われた「FINGER(フィンガー)研究」です。これは高齢の方の生活習慣に介入することで認知機能障害を予防する可能性を調べる研究で、1260人の高齢の方を対象に食事指導・運動指導・認知トレーニング・生活スタイル指導が行われました。その結果、それらの介入によって軽度の認知機能障害の進行を抑制することが可能であると世界で初めて証明されたのです。

日本でもこのFINGER研究をベースに全国規模の社会実装プログラムが行われています。認知症の予防法を探る研究「J-MINT」についてはこちらをご覧ください。運動・栄養指導・認知機能訓練・社会参加という4つのサービスプログラムを継続的に実施することでどのような結果がもたらされるのか、今後の分析に注目が集まっています。

「いつかは認知症になる」という意識で

「人生100年時代」と称される今、85歳を越えたら4割以上が認知症に、90歳を超えたら6割を超える方が認知症になるといわれています。この数字から分かるように、人は長く生きれば生きるほど認知症になる可能性が上がるのです。つまり、認知症は私たちにとって「人生のライフステージの1つ」とも捉えられます。一人ひとりが「いつかは認知症になる」という意識で認知症について学び、準備しておくことで、自分や家族が認知症になったときに慌てずに済み、より豊かな日々を送ることができるかもしれません。

写真:PIXTA
写真:PIXTA

認知症予防は「医療モデル」から「社会モデル」へ

先ほど認知症の予防には3つの視点があるとお話ししました。中でも、認知症の方が住み慣れた地域で役割を果たし、自分らしく暮らし続けるための「三次予防」は医療機関だけでは到底かなえることができません。認知症の治療においても、単に薬を投与すれば治るということはなく、周囲との関わり合いが患者さんにとって非常に重要な要素となります。

このような点を考慮すると、認知症という病気は「医療モデル」だけでは解決し得ない問題であり、周囲の人々や地域などを含めた「社会モデル」が必要だと分かるのです。

SHIGETAハウスの取り組み

そのような社会モデルによる認知症ケア・三次予防を地域の中で進めようとして生まれた取り組みの1つが「SHIGETAハウスプロジェクト」です。

SHIGETAハウスプロジェクトは、認知症診療のオピニオンリーダーである繁田雅弘先生(東京慈恵会医科大学精神医学講座 主任教授)の生家(神奈川県平塚市)を拠点にして「安心して認知症になれるまち」をつくるための活動です。繁田先生が代表理事を務め、私を含め5名の理事とボランティアで協力してくださる方々を中心とした「一般社団法人栄樹庵」が主体となり、2018年8月にスタートしました。認知症がある人とそのご家族が安心できる場所、地域に開かれた認知症啓発の場となっています。

平塚にあるSHIGETAハウスの外観
平塚にあるSHIGETAハウスの外観

 

SHIGETAハウスでは毎週「平塚カフェ」を開催し、音楽ライブや畑仕事、繁田先生による勉強会、音楽療法の視点を取り入れたウクレレカフェ、お茶会など種々のイベントを行っています。コロナ禍を経て一部はオンライン化され、遠方からでも参加できるようになりました。

SHIGETAハウスで行われている平塚カフェの様子

SHIGETAハウスで行われている平塚カフェの様子
SHIGETAハウスで行われている平塚カフェの様子

 

対面式とオンライン式の2つを軸にそれぞれのよさを生かしながら、認知症のある方とそのご家族が安心して暮らせるまちを実現するために今後も活動していきます。ご興味のある方はSHIGETAハウスプロジェクトのページをご覧ください。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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