近年、セカンドオピニオンは一般に普及しつつあります。セカンドオピニオンを希望する患者さんも増えてきていますが、さまざまな理由によって受けられない人がいることも事実です。今回は、メディカルノートが2020年11月に会員を対象に行った「がん治療に関するアンケート調査」で見えてきたセカンドオピニオンの課題をご紹介します。
アンケートでの「家族・主治医以外にがんに関する相談をしたか」という質問に対し、有効回答者数424人中192人(45%)が「相談できた」と回答しました。一方で、「希望したが、できなかった」と回答した人も63人(15%)に上りました。さらに相談できなかった人が本来相談したかった相手として、もっとも多かったのが「主治医以外の医師」でした。
このことから、主治医以外の医師への相談を希望しているものの、実際にはできていない人が少なからずいることが分かります。
また、同じ調査で「セカンドオピニオンを受診したか」という質問に対し「受けた」と回答した人は全体の21%(87人)、「受けていない」と回答した人は79%(337人)でした。セカンドオピニオンを利用しなかった理由としては、「すでに検討している病院・医師を信頼していたから」が多数を占めています。しかし、「知らなかった」「病院を変えられると思っていなかった」「受診の仕方が分からなかった」など、情報が足りなかったことを挙げる層も一定数いることが分かりました。
また、治療選択において弊害を感じるものは何かという質問に、約半数の人が「情報不足」を挙げました。
近年、セカンドオピニオン外来を設置する病院が増えてきているほか、インターネットの普及によって知りたい情報を探しやすくなりました。しかし、まだセカンドオピニオンは完全に浸透している状況ではありません。本来受けたい人がセカンドオピニオンを受けられるよう、適切な情報を発信することが重要であると考えられます。
セカンドオピニオンを受けなかった理由に、「遠方だったから」を挙げた人も一定数いました。遠方の医療機関にかかるには移動のために時間もお金もかかります。オンラインで医師に相談できるオンライン・セカンドオピニオンを行う病院も出てきていますが、まだあまり普及しておらず、現状は病院を受診して対面で行う形が一般的です。そのため、身体的・金銭的な問題から希望する病院や医師のセカンドオピニオンを受けられない人もいるようです。
なお、患者さん本人が別の病院を受診するのが難しい場合、本人の同意があれば家族などが代理受診できることもあります。病院によって対応が異なりますので、代理受診を希望する場合は事前に問い合わせましょう。
また、セカンドオピニオンを受けることで、現在の主治医との関係が悪くなってしまうのではないかと考える人が少なくないといわれています。主治医に言い出すことをためらい、その結果としてセカンドオピニオンを受けないという選択肢を取る人もいるかもしれません。
しかし、そもそもセカンドオピニオンは転院することではなく、今後も主治医と共に治療を行うことを前提に利用するものです。病気や治療についての理解が深まることで、結果的に主治医との信頼関係を築くことにもつながります。
また、病気は患者さんに起こっているもので、治療を受けるのも患者さん自身です。不安や疑問を抱えたままだと納得して治療に臨めない可能性もあるので、セカンドオピニオンを受けたい場合にはその旨を率直に主治医に伝えることが大切です。
主治医への伝え方に不安がある場合は、「先生の治療方針について理解はしていますが」「先生に治療をお願いしようと思っていますが」というように前置きをしたうえで、「できるだけ多くの情報を集めたいので○○病院でも話を聞いてみたい」「もっと納得して治療を始めたいのでセカンドオピニオンを聞いてみたい」などと伝えてみましょう。
主治医に直接言いづらければ、がん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」や、受診している病院の看護師などに相談することもできます。
セカンドオピニオンは、主治医の話に納得がいかない部分がある場合、主治医から提示された治療の中から納得のいく治療を決められない場合などに有効な手段の1つです。しかし、さまざまな要因によって、受けたいけれども受けられないという人がいるのも事実です。希望する人がセカンドオピニオンを受けるために、まずは適切な情報にアクセスしやすい環境ができることが重要だと考えられます。
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