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子どもも大人も悩むアトピー性皮膚炎―啓発アンバサダーに片岡愛之助さん就任

公開日

2021年09月27日

更新日

2021年09月27日

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2021年09月27日

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近年増加しているアトピー性皮膚炎。その患者数は51万人にのぼります(2017年厚生労働省データ)。子どもの病気と思われがちですが、大人になるまで再発を繰り返したり、大人が発症したりする場合もあります。主症状であるかゆみを伴う湿疹がひどくなるとQOL(生活の質)を著しく低下させるという問題がありますが、近年新たな治療法が開発され、適切な治療を行うことでよい状態を維持できるようになってきました。2021年9月16日、歌舞伎役者の片岡愛之助さん(以下、愛之助さん)がアトピー性皮膚炎啓発アンバサダーに就任*。その発表会で、皮膚の「良い状態」を“たもつ”エキスパート、タモツさんに扮した動画が公開されました。

*登壇者:サノフィ株式会社 代表取締役社長 岩屋孝彦さん

ゲスト:片岡愛之助さん、川島眞先生(東京女子医科大学名誉教授)

アトピー性皮膚炎 治療のゴールは?

川島眞先生

アトピー性皮膚炎の治療のゴールは「よい状態をキープする=保つ」ことです。

ここ10年ほどで、病態に対する考え方や治療法は変化しました。アトピー性皮膚炎には▽皮膚の炎症▽かゆみ▽バリア機能の低下(外界からの刺激や侵入物に弱い状態)――という3つの病態があります。従来はそれぞれ別の治療法でアプローチしていました。たとえば皮膚の炎症にはステロイド外用薬(塗り薬)やカルシニューリン阻害外用薬を、かゆみには抗ヒスタミン薬(飲み薬)、バリア機能の低下には保湿剤、という方法です。

しかし近年、3つの病態に関連するサイトカイン(細胞同士の情報伝達に使われるタンパク質)の解明などが進みました。積極的に新しい治療法を取り入れることで、以前よりも容易に「よい状態」を保つことが可能になっているのです。

提供写真

川島眞先生

片岡愛之助さん アンバサダー就任への思い

片岡愛之助さん

私自身、歌舞伎役者として活動するなかで、よい皮膚の状態をキープすることを常々心がけてきました。ただ、それは簡単なことではありません。肌の状態が悪いと化粧がうまくのりません。ですから普段からスキンケアには気を使っていますね。舞台後は刺激の少ない方法で化粧をしっかりと落とし、さらに保湿して肌を守ることを意識しています。

アンバサダー就任に際しては、自分と同じようにアトピー性皮膚炎で悩んでいる方々に向けて情報を発信する大切さを感じています。啓発動画の撮影では、「タモツさん」を演じました。すごい勢いで人に迫るシーンがあって、演じるのは少し大変でしたね。ドラマ「半沢直樹」で演じた黒崎駿一のイメージが残っているのか、最近はそういう勢いのある役柄のオファーが多いです。

片岡愛之助さんと川島眞先生のトークセッション

Q 愛之助さんから川島先生に質問はありますか?

片岡愛之助さん

子どもの頃からアトピー性皮膚炎で悩んでいました。私の場合は塗り薬に頼りがちでしたが、今はほかの治療法もあるのですか。

川島眞先生

現在でも、アトピー性皮膚炎の治療の基本はあくまで塗り薬です。ただ、塗り薬ではすぐによくならない患者さんもいらっしゃいます。たとえば1日2回薬を塗る必要があるとしても、全身に皮疹が出ているような場合、薬を塗ること自体がストレスになりうるのです。そういう方に何かよい治療法ができないかと思っていたのですが、近年はアトピー性皮膚炎の炎症を抑えられる新たな薬(内服薬や注射薬)が登場しました。それを使うと、塗り薬を控えて治療を行うことが可能です。そのような薬を活用することで、現在は以前よりも簡易によい状態を維持することができるようになりました。

 

Q 日常的な肌のケアについてのアドバイス(アトピー性皮膚炎の場合)

川島眞先生

「正しい洗顔(洗浄)と保湿」は、スキンケアの基本中の基本ですね。アトピー性皮膚炎の場合、皮膚がとても敏感な状態になっています。お化粧をする人は特に気を付けたほうがよいでしょう。正しい洗顔(洗浄)と保湿は、バリア機能を補強することにもつながります。

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Q 愛之助さんが普段、健康を保つために行っていることは?

片岡愛之助さん

仕事で体を動かすので、基本的な体力を維持することを心がけています。ジョギングやウオーキングでリフレッシュしながら運動するようにしていますね。ジムは週に1〜2回、多くて3回ほど行きます。こういった定期的な運動を行うことで、心身の健康を保つよう意識しています。

川島眞先生

アトピー性皮膚炎には肉体的・精神的なストレスが大きな関わりを持ちます。大人の場合には仕事上のストレスも重なって病気の状態を悪化させる可能性があり、注意が必要です。ストレス解消はとても重要なポイントですね。心身の状態を良好に保つためにも、定期的な運動習慣はとても大事だと思います。

 

Q アトピー性皮膚炎の症状に悩んでいる方へ

川島眞先生

皮膚の病気というのは軽視されてしまう場合があります。たとえば病院に行かず、市販されている薬を使っているケースが見受けられますね。あるいは悩んだ結果、怪しい民間療法に飛びついてしまい大変な思いをされている方もいらっしゃいます。ある程度症状が続いている場合は、なるべく早めに皮膚科を受診してほしいです。今は治療法も増えており、患者さん一人ひとりに合った治療が見つかる可能性があります。一緒に方法を考えましょう。

片岡愛之助さん

1人で悩まずによいドクターを見つけて相談し、「2人3脚」で乗り越えていくことが大事なのですね。とても勉強になりました。

治療法が進歩するアトピー性皮膚炎 1人で悩まないで

アンバサダー就任発表会では、任命証の贈呈式や、愛之助さんが「タモツさん」として登場するウェブ動画も公開されました。

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