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連載皮膚が映すココロとカラダのメッセージ

“ボーっと生きてる”と進む老化 お肌の若さを保つためには

公開日

2020年01月23日

更新日

2020年01月23日

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2020年01月23日

掲載しました。
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東邦大学医療センター大森病院 皮膚科 臨床教授

関東 裕美 先生

オリンピックイヤーの2020年が幕を開けました。世界中から観客が訪れる華やかなスポーツの祭典の舞台となる日本は、一方で世界に類を見ないスピードで高齢化が進行しています。総務省統計局などによると、2018年現在、日本の人口の28.1%が65歳以上で、14.2%が75歳以上です。出生率が低下し、1997年には65歳以上の高齢者の数が15歳未満の子供の数を上回り、2011年には出生数が死亡数を下回るなどして人口の減少が始まりました。そして、大人用のおむつの売り上げが赤ん坊用おむつを上回ったという驚きの事実が明らかになりました。そうした日本の現状を踏まえ、今後は医療者としても、自分自身のためにも、老化を“病”ととらえて立ち向かっていくべきだと、このめでたい年の始まりに考えるに至りました。老化対策には見た目も大切です。今回は、外見の印象に大きく影響する皮膚のケアについてお話しします。

「化粧で皮膚症状を隠せなくなった」70歳代女性の訴え

70歳を過ぎてからも積極的に美容治療を受け、気持ちよく過ごされていた女性Aさんのケースです。「前年の9月からシミ、しわに外用薬、注射、レーザーなどの美容治療を続けたところ、12月になって赤みが出て顔も腫れてしまうようになったため、近くの皮膚科クリニックで治療を受けながら化粧をして過ごしていました。ところが、春先に花粉が飛ぶようになると、治療をしてもかゆみが強くなり、いよいよ化粧で隠せなくなりました」と、クリニックの医師からの紹介で受診されました。毎月、白髪染めもしていますが、特に毛染め後にかゆみは出ないとのことです。

拝見すると目の周囲と口の周囲が赤黒くなっており、頬から耳の周囲、首までその症状が広がっていました。この何カ月か皮膚の発疹を繰り返していてずっと原因が除かれていない状況であることをお話しし、毎日使用されている製品を全て一旦中止して内服治療を開始しました。

女性の肌の変化

過剰洗顔は×、化粧は○ そして根本の原因は…

化粧は弱った皮膚を守るもので、化粧で隠すことで気持ちが穏やかになりますから、私は治療継続中も化粧をするように指導します。化粧と治療薬を落とすのに毎日洗顔料を使って洗顔を続けられていたので、年齢的に冬季は洗顔を控えること、化粧はメイク落としを使って後はぬるま湯で洗い流すのみ――と、洗顔方法を指導しました。

機会あるごとに、年齢と季節を考えて過剰洗浄を中止するよう患者さんに指導しているのですが、多くの方は洗顔料で洗顔をするのがお好きです。Aさんには、病的な状態がひどい間は治療薬を塗ってその上に私が指定する遮光剤をつけ、後は自分のファンデーションか粉おしろいを塗って皮膚病変を隠すように指導しました。

皮膚病変の悪化は過剰洗顔に加えて、長いこと問題なかった毛染めがアレルギーを起こしたのだろうと思いながら治療後にアレルギー検査である「パッチテスト」を行いました。結果は、一般的な毛染めに含まれるアレルゲンである「パラフェニレンジアミン(PPD)」が陽性でしたが、初診時の患者さんの状態を説明できるような強い反応ではありません。ただしPPDのアレルギーが起こってしまうと毛染めを繰り返すほどにアレルギー反応は強くなってしまいます。最悪の場合には「アナフィラキシー」という急性の激しい反応を起こすこともあります。白髪対策は継続して頂きたいので、PPDが入っていない「ピロガロール」が主成分の非酸化型染毛剤を使用するように指導しました。

ヘアカラーの洗濯

一方、使用していた化粧品に対してアレルギー反応はなく、香料や防腐剤、界面活性剤にも反応はありませんでした。このため、患者さんには次のように指導しました。

  • 自身の皮膚条件を考えながら、無理のない美容治療ならば継続は可能
  • 何種類も化粧品を使うと皮膚を擦ることになるので、皮膚への負担を軽減するように必要最低限の化粧をする
  • 血液検査でスギ花粉のアレルギーがあることが判明したので、「皮膚のバリア維持に努めるような洗顔」を心がけ、花粉対策に内服薬も検討する

パッチテスト実施時から当科での内服薬は中止しても再発はなかったので継続内服は希望されず、毎日の皮膚観察と皮膚を守る化粧を継続し、悪化時には外用治療薬を使うことで生活の質改善につながりました。

 

「頬のシミが気になる」60歳代糖尿病患者の治療

60歳代後半の男性Bさんは、糖尿病と診断されて治療をし、血糖値はずいぶんと改善されました。ただ、糖尿病だと老化が進むと言われたことが気がかりで、皮膚のシミも気になっています。「男だから申し訳ないかと思いながら、このシミは治療をしてもらうことができますか」と受診されました。

Bさんの右頬には人差し指の先ほどの褐色斑があり、その中央にはイボ状に盛り上がっている部分があります。皮膚がんではないことを診療で確認し、「脂漏性角化症(老人性疣贅<ゆうぜい>)という皮膚の老化変性による良性腫瘍で、保険治療ができることをお伝えしました。

イボ状の変化は液体窒素を当てて凍らせる「冷凍凝固治療」できれいに取れてきます。ただし、毎日紫外線対策をしないと皮膚の老化は進んでしまうので、治療した意味がなくなってしまうことをお話ししたところ、「冷凍凝固治療」の後も塗り薬による外用治療も継続してくれました。

60歳代糖尿病患者の例

「奇麗でいたい」の努力から始まる老化対策

日々の条件により臨機応変に対応して継続すべきスキンケア▽化粧▽シミ、シワ、白髪対策――は、見た目の維持・向上に必要です。

例えば、年齢と共に毛は軟毛化し50歳以降は女性ホルモンの影響もあって、毛の数が減って頭髪の密度が低下してきます。いわゆる老人性脱毛症は男性の方が早く現れ、目立ちますが、女性も70歳代になると深刻になってきます。一方男性では30歳代から眉毛、耳毛、鼻毛が加齢と共に長く伸び、硬毛化してくることが知られています。爪にも老化変性が目立つようになります。爪は老化によって縦溝、縦線、爪甲肥厚(そうこうひこう=足の爪が厚くなること)と黄色化が起こってきます。50歳以降は特に、手指の爪に縦溝、縦線が顕著になってきます。

「老徴」といわれる変化に負けないようにスキンケア、化粧、美容に種々の手段を使って抵抗してもらいたいと思います。ただし、年を取るにつれて一人ひとりの免疫機能に差が出てきますから、他人にとって良いことが全て自分にも良いというものではありません。自身の見た目維持には、自身による観察と、変化に対応することが最も必要で大切です。緊張感無く“ボーっと生きてる”と、老化が進んでしまいます。

抗加齢治療は、各科の医師が総合的に管理し、老化と闘う応援をしています。男女に関わらず、見た目は脳に働き、毎日の生活に潤いを与え免疫機能の亢進にもつながります。奇麗でいること、奇麗でいたいと思うこと、努力することから、老化対策は始まっているのです。

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東邦大学医療センター大森病院 皮膚科 臨床教授

関東 裕美 先生

東邦大学医療センター大森病院勤務。専門は皮膚アレルギー、特殊外来でアトピー性皮膚炎と接触性皮膚炎診療を担当する。「化粧品は皮膚を守るもの」をモットーに、肌荒れをしていても化粧をやめない、乾燥を予防するスキンケアを推奨しており、子どもから大人まで幅広い年代の女性患者が受診している。