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連載皮膚が映すココロとカラダのメッセージ

寒さで現れる皮膚障害 本人も気付いていない病気が原因のことも

公開日

2019年11月05日

更新日

2019年11月05日

更新履歴
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2019年11月05日

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東邦大学医療センター大森病院 皮膚科 臨床教授

関東 裕美 先生

想定外の台風被害に多くの人々が被害をこうむり、いまだに復興が進まない状況が続いています。台風襲来時は激しく気流が変化する影響で、ぜんそく、鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が悪化してしまうことが多いようです。東京では10月になっても2度の真夏日が観測されるなど暑い秋の始まりとなりましたが、さすがに朝晩の冷えは少しずつ進んで、冬の訪れの準備が必要な季節になってきました。自己免疫疾患や糖尿病、脳血管障害などの基礎疾患があると寒冷により四肢末端の神経や血管の障害が起こりやすく、適切なケアをしていないと重篤な症状まで進行してしまうことも。患者さんご本人がそうした基礎疾患に気づいておらず、寒冷暴露による皮膚の症状から我々皮膚科医が診断し、治療が適切でないと指摘することもあります。

「手の指が白く」…驚いて受診した女性の病名は

ある寒い朝、手の指がまだら状に白くなっていた、と40代の女性が驚いて受診に来ました。発症してから数時間がたっているそうですが、指は白いままでチクチクした感じがすると訴えています。

これは「レイノー現象」と呼ばれ、寒さにさらされ指の細い動脈が急速に収縮することで起こります。温めると正常な皮膚の色と感覚が回復します。

レイノー現象は膠原病(こうげんびょう)の患者さんでよく見られるため、この女性も原因となる基礎疾患を疑い、検査をしました。その結果、皮膚や内蔵が硬くなる「全身性強皮症」の初期症状だったことが分かり、治療につなげることができました。

「しもやけ」の原因は膠原病?

登山の遭難報道で時に聞かれることがある凍傷は、皮膚の直接冷却によって組織が凍結することによる末梢循環不全で起こります。血流が途絶すれば組織は腐ってしまいますから、救命されても壊死(えし)した部位を失うことになってしまうのです。

似た言葉に「凍瘡(とうそう)」があります。これはいわゆる「しもやけ」のことで、凍傷の一種とされています。寒暖の差がある初冬と春先に起こりやすく、血管が狭くなる狭窄(きょうさく)やふさがってしまう閉塞などの器質的障害はありません。小児期や女性に多くみられ、遺伝が関与することが多いようです。

しもやけは、時に「エリテマトーデス」や「強皮症」、「シーェグレン症候群」など自己免疫疾患(膠原病)の症状の可能性もあり、積極的な検査が必要な場合もあります。

重症化したしもやけ様皮疹からエリトマトーデスなどが診断されることも=筆者提供
 

しもやけ予防には防寒と早期からの治療が大切で、局所の血流改善マッサージや炎症を取る目的でステロイド外用薬を使用すると軽快します。

糖尿病足病変…寒さで悪化することも

豊かな食生活に伴い脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などの血管障害、糖尿病患者が増えてしまいました。現在は、これら生活習慣病の予防を多くの方が心がけていると思います。それでもなお糖尿病の足病変患者、いわゆる「足壊疽(えそ)」に陥って足を失うことになってしまう方が年間を通じ、当院皮膚科で入院加療されています。

血糖管理がうまくいかないと末端の血管神経障害が日々悪化し、糖尿病足病変は次第に重症化してゆきます。

靴を長時間履く生活では荷重で「たこ」や「うおのめ」ができやすくなり、真菌(水虫)や細菌(黄色ブドウ球菌などの化膿菌)の感染も心配です。血糖管理が悪いと容易に感染を引き起こすようになり、小さな傷の修復も難しくなります。また、神経障害により足の感覚が低下することも多く、傷の悪化に気付かないまま放置し、足が腐ってしまう糖尿病性壊疽へと進行してしまうのです。寒冷時期には血管が収縮して末梢循環障害はより悪化しますから、小血管の血栓を生じるリスクもあります。

ケアが不十分な患者さんには「適切な治療、自身の食事・運動療法で血糖管理に励み、四肢末端のマッサージと毎日の足洗浄、観察が必要」と指導しています。

じんましんの原因にもなる寒風

「じんましん」というと、アレルギーなどが原因で起こるものというイメージがあるかと思います。しかし、それ以外にも日光や温熱、水との接触などで引き起こされる「物理性じんましん」というものもあります。冷たい風などが物理的刺激となって発疹やかゆみが現れる「寒冷じんましん」もその1つです。まれに常染色体の変異が優性遺伝することで家族性に発症するケースもあります。

通常、じんましんなどのかゆみは患部を冷却すると和らぐことがありますが、こと、この寒冷じんましんには逆効果です。寒冷じんましんは、急激な冷却で重症化し、ショック症状をきたすことがあります。抗ヒスタミン剤の内服により、生活の質改善をすることができますので、適切な検査と指導を受けてください。

暖房器具の使い方にはご用心

寒い季節には安眠のため眠るときに暖房器具を使うこともあると思います。低温やけどは、あんかや湯たんぽ、こたつなどの比較的低温の暖房器具などで、時間をかけてゆっくりとやけどが進行した状態です。皮膚表面から真皮下方まで徐々に組織障害が進み、細胞が死滅するので潰瘍化してしまいます。血行が悪いと傷の治癒にはより多くの時間がかかり、治っても痕が残ります。小児や温度感覚が鈍くなってしまうことがある糖尿病患者さん、高齢者は、以下のような暖房器具対策が必要です。

  • 電気あんか、電気カーペット、電気敷毛布、湯たんぽなどは、直接体に接触しないように使用する
  • 電気あんか、湯たんぽなどは布などを巻いて伝わる熱を少なくして使用する
  • 長時間同じ部位に当てて使用しない
  • 就寝時に使用する場合は特に注意する
  • 痛みや違和感があるときは直ちに使用をやめる

温湿度低下に合わせて保湿対策を

健康な皮膚の方でも、気温や湿度などの変化が激しい時期には加齢とともに皮膚バリア機能も正常に対応できなくなって、皮膚トラブルが多くなります。年間を通じて保湿と遮光を心がけることが最も大切なアンチエイジング。男女ともに日々のスキンケアを心がけたいものです。温度と湿度の低下にあわせて洗顔料や回数の調整、保湿対策に励みましょう。

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東邦大学医療センター大森病院 皮膚科 臨床教授

関東 裕美 先生

東邦大学医療センター大森病院勤務。専門は皮膚アレルギー、特殊外来でアトピー性皮膚炎と接触性皮膚炎診療を担当する。「化粧品は皮膚を守るもの」をモットーに、肌荒れをしていても化粧をやめない、乾燥を予防するスキンケアを推奨しており、子どもから大人まで幅広い年代の女性患者が受診している。