連載皮膚が映すココロとカラダのメッセージ

梅雨までのさわやかな時期は“次の花粉症”と“虫”に注意を

公開日

2019年05月16日

更新日

2019年05月16日

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2019年05月16日

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東邦大学医療センター大森病院皮膚科 臨床教授

関東 裕美 先生

花粉症」の季節もほぼ終わりました。日本では2月ごろから5月まで飛散が続くスギとヒノキ花粉へのアレルギー症状を訴える方が圧倒的に多いため、花粉症とはこの2つに対するものと思っている方がいるかもしれません。しかし、ほかにもさまざまな植物の花粉が、アレルギー症状を引き起こすことが知られています。さらに、植物が生命力を発揮し花咲く頃は虫たちも元気になりますが、中には皮膚炎の原因になるものも。これから梅雨までの時期は気持ちのいい気候が続きますが、“お肌の敵”との戦いもまだまだ続きます。

生きとし生けるもの芽生えの季節!

日本気象協会は、今年の花粉飛散量をほぼ全国的に例年よりも多いと予測していました。悲しいかなその予測通りの飛散量で、目を腫らし、鼻水が止まらず、皮膚に付いた花粉のせいでかゆみや発疹が出て「花粉皮膚炎」と診断された方も多かったのではないでしょうか。 今年の春先は寒暖差が大きかったせいで免疫機能が不安定になって体調管理が難しく、花粉症の方に限らず辛い日々を過ごされたことと思います。

「やっと“花粉”の季節が終わった」と安堵(あんど)している方も多いことでしょう。ところが、これから飛ぶ花粉もあります。スギ・ヒノキの次に飛ぶのは、カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリ、ギョウギシバなどのイネ科の雑草。日本で初めてイネ科花粉症が問題になったのは、1984年に東京都府中市の多摩川沿いにある小中学校での集団発生です。イネ科雑草は河川敷や公園、道路わきなど身近に生育しており、上記のほかにも堤防沿いの地域でイネ科花粉症集団発生が報告されています。5~7月に開花し、これから梅雨の時期に花粉症の症状が出るので注意しましょう。

ただ、背丈が最大でも1m前後のイネ科雑草は、スギやヒノキのような背の高い樹木花粉と違って遠くまで飛ばないため、生育地域周辺での発症が多いのです。飛散地域が限られますから、河川敷などの生育場所に近寄らなければ回避が可能な花粉症のようです。

イネ科雑草の花粉症から逃れても、もう1つこの季節に注意したいのが毒のある毛虫です。こんな患者さんがいらっしゃいました。

花粉症が治まり庭に出てみたら…

「ひどかった花粉症もようやくすっきりして、天気もよいので久々の庭掃除をしました。気持ちよく掃除がすんだ後に腕がかゆくなりぶつぶつも出ていました。どうしたのかと思いながらも放っておいたら、ぶつぶつが体中に広がり、かゆくてたまりません」。そう言って受診したのは50代の女性Aさんです。季節や状況から毒虫による皮膚炎も疑われるため、もう少し詳しく話を聞きます。

全身がかゆい女性

ご本人は「虫に刺された覚えはない」と言います。それでは、庭にはどんな樹木がありましたかと質問しても、答えがすらすらとは出ません。まして隣家の庭に生えているものであれば樹種など分かる方はまれで、そうした樹木から降り注ぐかもしれない樹液や毛虫の毛で皮膚症状が出ることがあるなんて思いもよらないでしょう。

気温の上昇とともに、毛虫たちの活動も盛んになる季節です。モンシロドクガの幼虫はサクラ、ウメ、クヌギなどの樹木の葉を餌にして大量発生。チャドクガの幼虫はツバキ、サザンカ、お茶の木などの庭木の葉を餌にして発生します。ツバキやサザンカは公園やマンションの中庭に植えられていることが多いので、毛虫皮膚炎の中ではチャドクガ皮膚炎の患者さんをよく経験します。

毛虫というと、体に生えた毛に触れて皮膚炎が起こると思う方もいるでしょうが、これらドクガの幼虫は微細な毒の針(毒針毛<どくしんもう>)を飛散させ、それが皮膚に付着することで発症、全身に皮膚炎が拡大することがあります。通常はステロイド外用薬などでかゆみや炎症の対応をしますが、花粉症があるアレルギー体質の方は外用治療だけでは治らないこともあり、その場合はステロイドホルモン注射や内服など全身療法が必要になります。

屋外の虫の活動も活発になりますが、湿度が高くなる5月以降は、同じ“虫”でも水虫の症状を訴える人も増えてきます。ただし、足がかゆいからといってすべて水虫が原因というわけでもありません。

虫は虫でも水虫?「生兵法は大怪我の基」かも…

建設現場で働く30代の男性Bさんは「市販薬で“水虫”治療をしていたらどんどんひどくなってきた」と受診しました。

「仕事で長時間安全靴を履くので、足がかゆいのは水虫だろうと思って市販薬を塗ってみましたが治りません。それどころか、だんだん範囲が広がってジュクジュクするしかゆみだけでなく痛みもでてきたので心配になって……」と訴えます。仕事で長時間、密閉性の高い靴を履きとおして汗と蒸れから逃れられない環境にあれば、かゆみを感じた時には当然水虫と思い、市販薬で対処することが多いようです。

実際に水虫が原因で効果てきめんならばいうことはありませんが、中には汗による湿疹の方もいらっしゃいます。そのような方が水虫用の外用薬を使い続けていると、かぶれによりかえって悪化してしまうこともあります。Bさんのようにジュクジュクしてくる原因としては水虫以外にも(1)外用薬かぶれが悪化した場合(2)化膿(かのう)菌で悪化した場合――があり、どちらも全身症状に発展する恐れも。特に化膿菌が感染すると高熱が出て歩行困難になって入院治療が必要になることもあります。

市販外用薬による接触皮膚炎=筆者提供
市販外用薬による接触皮膚炎=筆者提供


同じようなジュクジュクの状態でも、原因によって治療は異なります。私たち皮膚科医は足の指の間のジュクジュクした部分から一部皮膚を剥がして、顕微鏡で水虫の原因となる白癬菌(はくせんきん)やカンジダ菌が確認できれば抗真菌外用薬(水虫薬)を処方します。外用薬のかぶれを疑う場合はステロイド外用薬を使っていただき、化膿菌の感染が疑われる場合は細菌培養を行って、菌の種類にあった抗菌薬の内服や外用を行います。

これからは、汗で蒸れてしかも血液やリンパ液の循環が良くない足先は重症感染症が起こりやすい季節になります。みなさまご注意を。

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東邦大学医療センター大森病院皮膚科 臨床教授

関東 裕美 先生

東邦大学医療センター大森病院勤務。専門は皮膚アレルギー、特殊外来でアトピー性皮膚炎と接触性皮膚炎診療を担当する。 「化粧品は皮膚を守るもの」をモットーに、肌荒れをしていても化粧をやめない、乾燥を予防するスキンケアを推奨しており、子どもから大人まで幅広い年代の女性患者が受診している。