「ドラッグラグ」をご存じだろうか。海外で承認されている薬(ドラッグ)が日本国内で承認されるまでに長い時間を要する(タイムラグ)という問題を指す言葉だ。5~14歳の子どもの死因1位(自殺を除く)の小児がんは、ドラッグラグが解消されれば治療の選択肢を増やすことができ、「生きたい」と願う幼い子どもたちに希望をもたらすことが期待されている。そのための機運を盛り上げようと、小児がんに関わる団体などが連携して治療の歩みを支えるプロジェクトをスタート。クラウドファンディングによる資金調達への協力を呼びかけている。
「小児がん」とは、14歳以下の子どものがんのことだ。医療の進歩で小児がんの治療成績が向上し、現在は7~8割が治るようになってきた。しかし、裏を返せば2~3割は治すことがかなわないということになる。国立がん研究センターのがん情報サービスによると、日本では年間2000~2500人、1万人に1人の子どもが小児がんと診断され、5歳以上の死亡原因としては自殺を除けばがん(悪性新生物)が1位になっている。
治療にあたる医療者は幼い子どもの死に直面して苦悩することもあり、治療開発が進むことを切に望んでいるという。
小児がんの治療開発には
――といった課題があるという。
このうちドラッグラグは、解消すれば治療の選択肢を増やすことにつながり、治療成績のさらなる向上、ひいては1人でも多くの子どもの救命にも貢献する可能性がある。
ドラッグラグはなぜ生じるのだろうか。そこには「臨床試験」「承認体制」という2つの課題があるという。海外で使用できる薬を日本でも使用できるようにするための最初のステップとして、国内の患者で安全性や有効性を確認する臨床試験を実施する必要がある。しかし、日本では海外に比べて臨床試験ネットワーク体制が整っていないため、時間がかかっている。
さらに、臨床試験で有効性、安全性が確認された薬は、国内で使用できるよう薬剤承認を取得する必要がある。日本は審査当局の人員が十分ではなく、承認のスピードが速まらないことが、もう1つの大きな問題として横たわっている。
こうした根本的な問題の解決には、医療者だけではなく社会全体の認知と賛同が求められるのだが、一般の認知は限られているのが現状だ。そこで、小児がんに関わる団体スタッフ、医師、研究者らが治療に新しい希望の光がともることを願い「元気にな~れ こどもたちプロジェクト(代表:水谷修紀・東京医科歯科大学名誉教授)」を開始。小児がん治療に関わるさまざまな支援の実現を目指す。
*プロジェクトの連携団体:日本小児血液・がん学会、日本小児がん研究グループ、国立成育医療研究センター、日本癌学会、国立がん研究センター
プロジェクトでは1000万円を目標にクラウドファンディングを実施し、集まった資金は
――の活動に充てるとしている。
クラウドファンディングは5月31日まで。プロジェクトは「All or Nothing」形式で、目標額に達しない場合は全額返金される。
プロジェクトメンバーは「一刻も早く、日本でがんの子どもたちに新しい薬が届く仕組みを整えたい。ここから、日本の小児がん治療の“今”を変えていきたい」などとメッセージを寄せている。
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