連載特集

COPD死亡率減少に向け日本呼吸器学会が「提言」―健康日本21(第三次)基本方針受け公表

公開日

2023年06月09日

更新日

2023年06月09日

更新履歴
閉じる

2023年06月09日

掲載しました。
B7cf2556fa

日本呼吸器学会(理事長:平井豊博・京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学教授)は、「健康日本21(第三次)」推進の基本方針公表に合わせ「COPD(慢性閉塞性肺疾患)死亡率減少に向けた提言」を公表した。提言では2032年度までにCOPDによる死亡率を約25%減少させる目標案を掲げ、実現に向けた実行モデルを提唱。同学会は死亡率減少に向けたプロジェクトを「木洩れ陽(こもれび)2032」と命名し、自治体など関係各機関の活動をサポートするとしている。

「死亡率25%減少」の目標案

厚生労働省が2023年5月31日に公表した「健康日本21(第三次)」推進の基本方針で、COPD対策としては引き続き認知度の向上を行うことに加え、「発症予防、早期発見・治療介入、重症化予防」など総合的に対策を講じていくことが必要と示されている。また、2021年度の統計で人口10万人あたり13.3人のCOPD死亡率を、2032年度には同10.0人にまで約25%減少させるという新たな目標案が掲げられた。

提言によると、この目標達成には未受診患者が90%以上と想定される現状を踏まえ、COPDに対する医療従事者の正しい理解促進に加え、患者(未受診を含む)の病気に対する理解促進も欠かせないことを強調。また、同学会だけでなく▽都道府県や市区町村などの自治体▽関係医療機関、医師会、薬剤師会、理学療法士協会など多職種からなる医療従事者▽関係企業――も含めた早期発見、受診勧奨、疾患啓発によるはたらきかけなどの活動によってこの計画は達成できる、としている。

今後、COPD死亡率の速報値や死亡率減少に向けた取り組みに関する情報、同学会認定呼吸器専門医の情報などを同学会のウェブサイト(https://www.jrs.or.jp/kenkou21/)ほか、さまざまな媒体を通じて発信していく。

これらの取り組みによってハイリスクの“未病”の人や、未受診を含むCOPD患者らに日差しが降り注ぐことを期待し、同学会はプロジェクトを「Project for COPD MOrtality REduction BY 2032(COMORE-By2032、日本呼吸器学会COPD死亡率減少プロジェクト・通称 木洩れ陽2032)」と命名した。

目標数値達成までの2ステップ

死亡率減少に向けた実行モデルとして「早期受診の促進」「専門医による診断率の向上と適切な治療介入」の2つのステップによる目標達成を目指す(図参照)。

日本呼吸器学会提供

ステップ1として疾患啓発、健康診断、受診勧奨により早期受診を促し、ステップ2で客観的検査を経て、禁煙や薬物/非薬物による治療介入、全身状態および健康状態の改善・維持によって健康寿命の延伸と死亡率減少につなげる。

同学会は今後、第1次「COPD死亡率減少に向けた5カ年計画」を作成する予定だ。

「肺の老化が加速する疾患」 COPD

COPDは有害物質を長期にわたって吸入することで生じる肺の慢性の進行性の疾患。男性では死亡原因の9位を占める(2021年人口動態統計)。約530万人の患者がいると推定される(NICEスタディ:2021年)が、大多数が未診断・未治療と考えられている。軽症だと自覚症状がないことも多いが、重症化すると体内にうまく酸素が取り込まれなくなり、日常生活でも息が苦しい状態が続くことになる。

最大の原因は喫煙で、肺の中の気管支が損傷され、慢性のせきやたんに悩まされる。また、吸い込んだ酸素と体内の二酸化炭素のガス交換をする「肺胞」という組織が破壊されて肺気腫になると、息を吸ったり吐いたりすることができなくなり、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下し、若年であっても高齢者と同程度の肺の能力しか発揮できなくなる。破壊された肺胞を元に戻す治療法は今のところない。

症状が進行するにつれて運動能力や身体活動性が低下。筋肉量が減少するサルコペニアや、身体の予備能力が低下するフレイル(虚弱)につながり、それらがCOPDをさらに悪化させる負のスパイラルに陥るとされる。

喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速するため、禁煙が治療の基本となる。また、吸入薬による気管支拡張や呼吸リハビリテーションによって予後の改善や健康寿命の延長が期待できるとされる。悪化して低酸素血症が進行すると、在宅酸素療法が導入され、より重症化した場合には小型の人工呼吸器とマスクを用いた換気補助療法が行われることもある。

  • 一般社団法人日本呼吸器学会ホームページ www.jrs.or.jp/
  • 健康日本21(第三次)「COPD死亡率減少」に向けた呼吸器学会特設ページ www.jrs.or.jp/kenkou21/

 

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

特集の連載一覧