夏休みで海外への渡航者が増加するシーズンを控え、国立国際医療研究センター病院は「海外旅行で気を付ける8つのポイント」をウェブサイトで公開した。「旅行前」「旅行中」「旅行後」に分けて、旅先で体調不良になったときにすべきことを、国際感染症センター・総合感染症科の日本感染症学会認定感染症専門医、守山祐樹医師が説明している。
同病院が実施したインターネット調査(有効回答数400)によると、海外旅行中に気を付けていること(複数回答)として生水を飲まない、常備薬を持っていく、生ものを食べない――を挙げるなど、9割以上の人が何かしら体調維持のために気を付けていると回答した。その一方で過半数が旅行中に体調不良になった経験があり、特に下痢、腹痛、発熱が多かった。また、約3割の人が海外で抗菌薬(抗生物質)を購入した経験があると回答した。
こうした調査結果について守山医師は「海外旅行には大きく分けて2つの注意すべきリスクがある」と注意を促す。その1つは「日本ではかかりにくい病気にかかるリスク」。日本ではかかることがほとんどないマラリアやデング熱、腸チフス、狂犬病といった感染症にかかる可能性がある。海外では医師の処方箋なしにドラッグストアなどで抗菌薬を購入できる地域がある。しかし、抗菌薬は病原体の種類によって使うべき薬剤が異なる。病気にかかったときに不用意に抗菌薬を服用すると重大な病気の発見が遅れたり、薬剤耐性菌*が出現したりする可能性につながるので注意が必要だ。
*薬剤耐性菌:抗菌薬に対する抵抗性が高くなり薬が効かない細菌のこと
もう1つが「薬剤耐性菌に感染するリスク」だ。世界には日本よりも薬剤耐性菌が多く分布していたり、感染対策が十分でなかったりする地域がある。
旅先で体調を崩さないためには準備が大切だ。守山医師は「3つの事前準備」を推奨する。
1つ目は「旅先の情報収集」だ。厚生労働省や外務省など公的機関のウェブサイトで渡航先の感染症流行状況をしっかり調べることをすすめている。
2つ目が「トラベルクリニックの受診」。上記調査で旅行前のワクチン接種の有無を尋ねたところ、接種していたのは4人に1人だった。渡航先の感染症流行状況に応じてワクチンを接種することも体調維持には重要だ。トラベルクリニックでは渡航の目的に応じた相談や抗体検査、ワクチン接種もできる。
3つ目が「体調不良時に備える」こと。海外で医療機関にかかると高額な費用がかかることもある。訪問地の医療機関をあらかじめ調べておくと、もしものときにスムーズに治療を受けられる可能性が高まる。また、海外旅行保険に加入しておくと体調不良時や不慮の事故の際の負担を軽減できる。
1.旅行先の国・地域の危険情報、注意事項を調べておく
2.必要な場合はトラベルクリニックでワクチンを接種
3.海外旅行保険の加入を検討
4.体調不良時(特に発熱)は医療機関の受診を検討
※受診の際は日本人スタッフや日本語が話せるスタッフが在籍する機関が望ましい
5.自己判断で抗菌薬を購入・服用しない
6.薬を服用した場合は、処方箋やパッケージの写真を撮っておく
7.旅行後に医療機関にかかるときは、過去1年にさかのぼり、海外渡航歴を医師に伝える
8.過去1年、海外で入院した場合は、医師に伝える
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