医療情報の発信における連携協定を締結している一般社団法人日本泌尿器科学会とメディカルノートの第1回連携ウェブ講演「日本泌尿器科学会の現況と第112回総会の概要について」が、2025年4月3日に開催された。江藤正俊理事長(九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野教授)が、同学会の活動状況と、4月に福岡市で開催される総会などについて説明した。講演内容をダイジェストで掲載する。
日本泌尿器科学会の会員数は、2024年の段階で9886人、うち女性医師の割合が9.3%という状況です。女性医師の数は2014年と比較して94パーセント増加しています。過去10年間に新たに泌尿器科医になった先生の29%が女性でした。以前は男性医師が非常に多かったのですが、最近は特に若い世代で女性医師の数が増加しています。
後期研修を始めた医師数は順調に増加しており、2024年には過去最高の年間343人が泌尿器科を専攻しました。
学会の理事会では、2人の女性理事が誕生し、各種委員会の委員長も担当してもらっています。昨年、代議員選挙があり、新たに女性枠を創出して女性代議員が増えました。代議員は会員約40人に1人の割合で、最終的には女性枠の代議員が21人増加し、全体としても代議員数が18人増えました。学会総会でも、一般講演などで女性の座長を意識的に増やしています。
泌尿器科の専門医研修プログラムについてご紹介します。領域専門制度の理念としては、高度の泌尿器科専門知識と技能、地域医療にも対応できる総合的診療に必要な基本的臨床能力を習得することを目指しています。
プログラムの整備基準では、領域専門医の使命として「小児から成人に至るさまざまな泌尿器疾患、高齢化に伴い増加が予想される排尿障害、尿路性器悪性腫瘍、慢性腎疾患などに対する専門的知識と診療技能を持つこと。地域医療との連携や他の専門医への紹介・転送の判断も的確に行えること。社会に対する責任を果たし、地域医療にも配慮した国民の健康・福祉の増進に貢献すること」――を教えています。
研修カリキュラムでは
――の4つを大事な要件と考えています。
若い先生方に対する教育にも非常に力を入れており、さまざまな領域で企業から助成金を募って1泊2日の教育プログラムを年間6~7回開いています。
また、ウィンターセミナーやスプリングセミナーという形で、初期研修医1年目の先生を募って泌尿器科の魅力、やりがい、奥深さを伝える会を行っています。この冬に神戸で実施したウィンターセミナーは定員90人に対し応募多数のため抽選になりました。
教育委員会の企画として、泌尿器科で留学を経験した人、臨床中心にさまざまな病院を回っている人、大学院で基礎研究を行っている人などさまざまな異なった状況の若い先生4~5人が登壇してどういう生活をしているかといったことを知ってもらうプログラムも行いました。
このような形で、初期研修医に対して泌尿器科学会全体として勧誘するシステムも動いております。
学会全体のワークショップとして4年に1度、泌尿器科学会が次の4年間、どういう方向に進むか、医療安全、専門医制度、学術集会のあり方、関連学会との関わりなどさまざまなテーマを設けて話し合います。直近では2022年に「Sustainable Development in JUA 2022」という形で行いました。ただ、4年に1度だとほとんど進捗していないテーマもありました。そのため今回から、2年経過した2024年に各セッションの進捗についての中間報告会を行いました。その際、今後の開放手術の教育、がん薬物療法に対するかかわり方などの新たな議題についてもフリーディスカッションとして話し合いました。
最近は、学会発表の演題に倫理審査が要求されます。開業医の先生など倫理委員会のない施設の会員もいることから、総会での発表に必要な倫理審査を泌尿器科学会の中で行うシステムを構築しました。審査を受けることで、総会に演題を出せるようになります。
国際委員会は国際交流を中心に活動しています。昨年、サンアントニオ(米テキサス州)で開催された米国泌尿器科学会(AUA)では、AUAと日本泌尿器科学会のジョイントプログラムを行い約130人が参加しました。シカゴで行われた前回は、新型コロナウイルス感染症の流行時ということもあって56人の参加に終わっていましたが、国際交流がコロナ前に戻ってきていることが、こうした数字からも分かります。
泌尿器科学会の現状についてまとめますと、会員数がほぼ1万人に届きつつあり、女性の増加が著明です。学会としても女性泌尿器科医の活躍に対する施策を積極的に進めております。また、若手を対象とした教育ワークショップなども精力的に行っています。
学会の方針を決める、ワークショップの中間報告会を行いました。倫理審査を学会内で行うシステムも構築しました。コロナ禍で失われた国際交流の再活性化は、着実に進みつつあります。
2025年4月17~19日に第112回日本泌尿器科学会総会を、福岡にて私が主催する形で行います。テーマは「次の100年に向けて Aiming toward the next 100 years of urology」という形にしております。2024年は、九州大学泌尿器科学教室の創立100周年でした。そして2025年は101年目になります。そこで、私どもの100年の歴史、今まで教室で行ってきた研究・診断・治療を振り返って、次の100年に向けてどのような形で進めていけばよいかを、皆さんと一緒に話し合う機会にできればと考えました。
プログラムもほぼ固まっております。
目玉としては、主催校企画として、私どもの教室で特に力を入れている以下の6分野について「次の100年に向けた〇〇」という形でテーマに挙げています。
――これらについて、泌尿器科学会員だけでなく各領域の第一人者の他科の先生も含めてご登壇いただく特別企画です。
サージカルセッションとしては、泌尿器科の各手術の中で皆さんが興味深いものをピックアップして短時間でそれらを一気に見られるようなセッションを設けております。
アップデートシリーズは、各領域で毎年どんどんアップデートされている項目に関して、昨年1年間でどう変わったかを専門の先生に短時間でまとめていただき、一気に見てもらうセッションです。
海外の学会でもよく行われている「ミート・ザ・エキスパート」は、予約をしてもらい、それぞれの分野のエキスパートの先生と少人数でお会いいただくセッションです。
国際関連のさまざまなジョイントシンポジウムや保険教育、卒後教育などのプログラムも用意しております。
学会の領域部会がコントロールして作るセッションもあります。泌尿器腫瘍、エンドウロロジー・腹腔鏡(ふくくうきょう)、小児泌尿器科、腎不全・腎移植、尿路結石、排尿機能・神経泌尿器科、女性泌尿器科、内分泌・生殖機能・性機能、副腎・後腹膜、基礎研究、オフィスウロロージー、尿路性器感染症、医療制度・保険等、老年泌尿器科・前立腺肥大症、外傷・救急医療・再建――各領域部会が、学会として一貫して進めていくテーマを取り上げています。
最後に文化人講演の紹介です。今回、福岡で開催しますので福岡にゆかりのある方、あるいは泌尿器科学会はダイバーシティーを非常に重要に考えているためそれに合う方を選びました。
学問の神様、菅原道真公を祭る太宰府天満宮最高顧問の西高辻信良さん。そして水素自動車や水素エネルギー研究の第一人者、九州大学水素エネルギー国際研究センターの佐々木一成副学長。福岡県出身ジャーナリストで、自らもがんサーバイバーである鳥越俊太郎さん。フリーアナウンサーの膳場貴子さん――による文化人講演を用意しております。多くの先生方に福岡へお越しいただけるようお待ち申し上げております。
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