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リウマチ医療の未来予想図―第3回連携ウェビナー開催

公開日

2025年04月15日

更新日

2025年04月15日

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2025年04月15日

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2025年1月30日に、一般社団法人日本リウマチ学会(以下、日本リウマチ学会)と株式会社メディカルノートによる、第3回の連携ウェビナーが開催されました。今回は、2025年4月に開催される第69回日本リウマチ学会総会・学術集会の会長を務める、長崎大学リウマチ・膠原病(こうげんびょう)内科学分野 教授の川上純先生より、リウマチ医療の展望について、お話がありました。当日の講演内容をダイジェストでお送りします。

リウマチ医療の進歩―予防・早期診断から治療まで

病気は、さまざまなプロセスを経て発症します。関節リウマチを例に説明すると、最初は遺伝的な要因や生活環境などのリスクがあるだけの段階から始まり、症状はないものの免疫異常がある段階、関節炎はあるが診断はされないという段階を経て、関節リウマチへと進展していきます。発症後の治療だけでなく、関節リウマチの早期診断や予防のため、これらの各段階に応じた検査や治療法の開発が進んできています。

長崎大学でも、関節リウマチの患者さんを対象とした研究や、長崎市五島の住民の方々を対象とした調査を通じて、関節リウマチなどの予防・治療の研究を進めています。

また、治療薬の開発でも新しい取り組みが始まっています。バイオマーカーと呼ばれる、患者さんの体の状態を示す複数の指標を活用することで、どのような特徴のある患者さんに、どの薬が効果的なのかについて、正確性の高い判断を行えるようになってきています。これによって、患者さん一人ひとりに合わせた、より効果の期待できる治療法が選択できるようになります。

進化する画像診断の技術

関節リウマチの診断においては、従来からのX線検査に加え、より早い段階から異常を検出できる新しい画像診断の技術も活用されてきています。MRIや超音波検査は関節リウマチを発症する前の段階から、関節の内側で起こっている炎症や骨の変化を評価することができます。さらに、HR-pQCTという高解像度CTスキャンにより、通常のX線では見つけられない微細な変化まで捉えられるようになりました。画像診断技術が進化したことで、関節リウマチの病態を早期かつ詳細に評価できる時代になってきています。

遺伝子解析で広がる新しい治療の可能性

遺伝子を解析する技術も大きく進歩しています。「シングルセルRNA解析」という新しい技術により、細胞一つひとつの特徴を詳しく調べることができるようになりました。この技術を活用することで、より効果的な治療薬の開発や、患者さんそれぞれの体質に合った治療法の選択が可能になってきています。

さらに、体の中と同じような状態で組織を構成する細胞それぞれの特徴を調べることができる「空間トランスクリプトーム」という解析技術も登場しています。病気の仕組みをより正確に理解することができ、新しい治療法の開発につながることが期待されています。

IoT活用で遠隔医療も―最新テクノロジーが変えるリウマチ医療

時代の潮流である人工知能(AI)や、さまざまなモノをインターネットにつなげるIoT(Internet of Things)といったテクノロジーは、医療分野においても大きな可能性を秘めています。

IoTは、特に遠隔医療の分野で活躍しています。長崎大学病院では、離島の病院とIoTで接続し、遠隔にいる専門の医師がかかりつけ医と連携して、患者さんの診察や治療の提案を行う、ハイブリッド診療を始動しています。さらに、病院への通院が困難な地域の患者さんのために、医療機器を搭載した専用車両による遠隔診療サービス「医療MaaS(Mobility as a Service)」も展開しています。この車両に乗車した患者さんに対し、医師によるオンライン診療や、薬剤師による服薬指導、栄養士による栄養指導まで、幅広く提供しています。

また、テクノロジーの進歩によって、患者さんの顔などの映像データから病気を早期発見するAIシステムの開発や、機械学習により画像診断を高度で精密にする取り組みが進められています。これらの技術は、一人ひとりの患者さんにより適した治療の実現に貢献することが期待されます。関節リウマチをはじめとするリウマチ・膠原病の診療においても、病気の検出・診断・進行予測のAI支援や、機械学習によるゲノムデータ解析など多岐にわたって応用され、進歩を加速させると考えられます。

専門分野を超えた連携による研究

ここまでお話ししたように医療の発展には、医学だけでなく、さまざまな分野の専門家との協力が欠かせません。それぞれの分野が持つ知識や技術を組み合わせることで、新たな治療法や診断技術の開発が進められています。国内外、多分野の研究者が連携して行う「学際的研究」により、医療の可能性は着実に広がっています。

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