一般社団法人日本リウマチ学会と株式会社メディカルノートによる第8回の連携ウェビナーが2025年10月30日に開催されました。今回は獨協医科大学 リウマチ・膠原病内科池田 啓主任教授による「画像で診る関節炎」、大阪大学大学院 医学系研究科 免疫細胞生物学 石井 優教授による「リウマチ学基礎研究の魅力:科学の進歩が難病を治す!」の2つの講演がありました。それぞれの内容をダイジェストでお送りします。
関節炎とは、通常、関節の腫れ、朝のこわばりなど、炎症反応を伴う関節症状を指します。狭い意味の関節炎は、滑膜炎、関節包炎、軟骨炎、骨炎といった「関節の中」の炎症です。しかし一般的にはより広い意味で使われることも多く、腱鞘滑膜炎、滑液包炎、腱周囲炎、腱炎(けんえん)、付着部炎といった関節の周囲の構造物を含めた炎症が含まれます。
関節炎には通常原因があり、それによって関節の炎症が起こります。炎症が続いた結果、「ダメージ」といわれる構造変化が起こるのが一般的です。たとえば関節リウマチでは、何らかの遺伝的背景(原因)があって、滑膜炎や腱鞘滑膜炎、骨炎などが起こり、その結果として骨や軟骨の構造変化をきたします。
単純X線(レントゲン)は、ダメージを見る目的で古くから行われてきた画像診断です。X線では、偏位や脱臼・亜脱臼、強直などの診察でも分かる構造変化も見えますが、より細かい変化である関節裂隙の狭小化(軟骨が薄くなる)、関節周囲の骨萎縮、そして特徴的な骨びらん(骨の破壊)などが評価可能です。この骨びらんは、CT、MRI、そして関節超音波(エコー)検査では、X線よりも早期に検出することが可能です。
近年の画像診断で、単純X線では見えなかった炎症そのものを捉えられるようになったことは大きな変化です。関節エコーでは、炎症による滑膜の肥厚や滑液の貯留、さらにドプラ機能を用いて異常な血流シグナルを捉えることで、今まさに関節で起こっている炎症の活動性をリアルタイムで評価できます。また、関節リウマチや強直性脊椎炎などで見られる腱や付着部の炎症も、同様にドプラシグナルで評価できます。MRIでは滑膜の炎症だけでなく、関節エコーでは見えない骨の炎症(骨炎)を見ることができるのが特徴です。さらに、MRIではより大きな関節の炎症、脊椎関節炎の炎症を捉えることもできます。
画像では関節炎の原因を捉えられることもあります。単純X線では、炎症の原因となるピロリン酸カルシウム結晶などカルシウム結晶の沈着が写ります。痛風性関節炎の原因となる尿酸ナトリウム結晶はX線に写らないので評価できませんが、関節エコーでは軟骨の上に沈着しているところや、周囲に浮遊する結晶や炎症も見ることができます。また、デュアルエナジーCTという方法でも尿酸ナトリウム結晶を評価することができます。
2010年の関節リウマチ分類基準では、滑膜の炎症を関節エコーやMRIで捉えることによって診断精度を上げられることが示されています。
治療開始後の関節破壊評価については、単純X線で関節破壊のモニタリングを行うことが重要です。症状がなくても手指や足指は無症状性の骨変化が起きやすいため、1年に一度X線評価を実施するとよいでしょう。また、抗リウマチ薬を変更・追加する際に画像を撮っておくと、その後の変化を追うことができます。
問診・診察・採血に加え、関節エコー・MRIで炎症をモニタリングすることの意義に関しては、明確な答えが出ていません。しかし、臨床的に落ち着いていても、関節エコーやMRIで見られる炎症が骨軟骨破壊をきたすことは従来より示されています。ですから、骨軟骨破壊をゼロに抑えるためには、残存炎症が疑われる症例において関節エコー・MRIで炎症を捉えることが大事だと思っています。
画像を見ながら診療をすることは、患者さんにとっては病態の理解、満足度、積極的な治療の動機づけにつながります。一方、医師側では関節解剖の理解、穿刺技術(せんしぎじゅつ)の向上、そして何よりも診察技術の向上が得られ、画像診断はリウマチ診療の質を多角的に高めると考えております。特に若手はトレーニング過程において、関節エコーを始めとする関節の画像診断の技術を学んでほしいと思っています。
本日は、科学の進歩がいかにして難病の治療を変えてきたか、それに加えて私自身の研究もご紹介いたします。
関節リウマチは、関節に慢性の炎症が起こり、骨や軟骨が破壊されていく自己免疫疾患で以前は「不治の難病」と考えられていました。骨破壊を起こしているのは破骨細胞という特殊なマクロファージです。
かつての治療は炎症や痛みを抑えるステロイドなどが中心でした。その後さまざまな抗リウマチ薬(csDMARDs)ができ、その中でも時代が後になってメトトレキサート(免疫抑制作用を持つ抗リウマチ薬)などが登場して治療はかなり改善しました。しかし、旧来の方法では完治しにくく、最終的には外科手術に至るケースもありました。
免疫学あるいは基礎のリウマチ学の進歩により、関節リウマチの病態に関して非常に多くのことが分かってきました。たとえば、リウマチで炎症が起こるときにどういった細胞がどのような分子を出しているのか、特にTNF(腫瘍壊死因子(しゅようえしいんし))やIL-6といった炎症性サイトカインが、非常に重要な役割を果たしていることなどです。これらをターゲットにした抗体(バイオ)製剤が登場したことで、リウマチ治療は大きく変わりました。
私自身は、そうした薬剤がどのようにしてはたらいたり効果を出したりしているかを、イメージングという手法を使って研究してきました。骨は固い組織で中を見るのは難しいのですが、私たちは特殊な顕微鏡で骨の中を見る技術を世界に先駆けて開発しました。
この技術で、破骨細胞が実際にどのように骨を壊しているかを明らかにしました。破骨細胞には、骨の上で止まって活発に骨を溶かしている細胞(R型)と、動き回ってはいるが骨を溶かしていない細胞(N型)の2つのタイプが存在したのです。バイオ製剤がこれらの細胞にどう作用するかを調べました。抗TNF抗体製剤や抗IL-6抗体製剤を投与すると、R型破骨細胞は劇的にその動きを変え、N型へと変化しました。一方で、CTLA4-Igという別のバイオ製剤は、R型破骨細胞の機能を抑える効果はあまり認められませんでした。しかし、破骨前駆細胞(破骨細胞になる前の段階のマクロファージ)に作用し、その動きや骨への定着を抑えていました。
このように同じ「骨破壊を抑える」薬であっても、生体内での「作用点」が異なることが、イメージングによって初めて明らかになりました。
近年、バイオ製剤に続き「JAK阻害薬」という新しいタイプの経口薬が登場しました。サイトカインの情報伝達を細胞の内側でブロックする薬剤です。JAK阻害薬は、破骨細胞が骨を壊すのを止める効果が認められました。一方で、破骨前駆細胞の動きを抑えてもいたのです。
つまり、JAK阻害薬は、「成熟した破骨細胞」と「その前駆細胞」の両方の段階に作用するという、二重のメカニズムで骨破壊を抑えているという結果が得られました。
リウマチ学ではさまざまな基礎研究が進んでいます。自己免疫疾患の病因は難しいのですが、ゲノム解析によってどういった遺伝子が発症と相関があるかを網羅的に調べる研究が大きく進みました。
そうした遺伝的背景に加えて細胞1個レベルでRNAを調べる技術や、質量分析により網羅的に細胞を解析する技術も出てきています。それらの技術によって、リウマチエリアに存在する新たな病的細胞集団を見つけることに成功しています。
そのような細胞がどのように病気を作っているのかは、イメージング技術によって研究できます。たとえば、イメージを見ることで、正常な骨代謝を担う善玉の破骨細胞と、病的に骨を破壊する悪玉の破骨細胞(AtoMと命名)が存在することを突き止めました。そして、AtoMを制御している転写因子も発見しました。この転写因子のはたらきを抑えると、リウマチによる病的な骨破壊が劇的に抑制されます。
この結果から、我々は「善玉」には作用せず、「悪玉」だけ非常に強く抑えるような薬を作っています。これができると、悪いものだけをピンポイントで抑制するような治療もできるのではないかと考えています。
リウマチは100年前、あるいは数十年前と比べて劇的に治療が変わってきました。それは基礎研究のたゆまぬ進歩によってもたらされたのです。
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