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肺がん予後改善につなげるための遺伝子診断―呼吸器学会と連携ウェビナーを初開催

公開日

2025年11月04日

更新日

2025年11月04日

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2025年11月04日

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一般社団法人 日本呼吸器学会(以下、日本呼吸器学会)と株式会社メディカルノートによる第1回連携ウェビナー「肺癌遺伝子診断Update―日本呼吸器学会の紹介も含めて―」が2025年9月24日に開催されました。日本呼吸器学会 理事長 髙橋和久先生(順天堂大学大学院医学研究科 呼吸器内科学 教授)より、日本呼吸器学会が目指す目標と肺がんの遺伝子診断に関するお話がありました。当日の講演内容をダイジェストでお送りします。

世界の死因上位10のうち半分を占める呼吸器疾患

2021年、WHOが発表した世界の死因ランキングでは、上位10個の死因のうち5つが呼吸器疾患でした。今回のテーマである肺がんは6番目に多い死因となっており、世界的に見ても問題となっている疾患であるといえます。

その一方で、日本の内科系学会の会員数と専門医数を見てみると、日本循環器学会(会員数:36,972名、専門医数:16,858名)や日本消化器病学会(会員:36,365名、専門医数:23,706名)と比較して日本呼吸器学会の会員(13,574名)、専門医(7,993名)は非常に少ないのが現状です。これはつまり、世の中のニーズに対して呼吸器専門医が十分ではないということを示しています。

*日本循環器学会及び日本消化器病学会は2023年度、日本呼吸器学会は2025年度の数

呼吸器学会が目指す世界と、そのための取り組み

こうした状況をふまえ、日本呼吸器学会では、専門医の養成を通じて実現すべきビジョンを設定しました。それが「私たちは、肺の病気の予防と肺の病気が治る世界を目指します」というものです。そしてこれを実現するために、具体的な7つの目標を設定しています。

  1. コアバリュー:患者さんを中心とした安全で質の高い医療を提供する
  2. 科学・研究:先進的で独創的な研究を推進する
  3. 教育:知識の普及と次世代の育成を推進する
  4. チーム医療:チーム医療を推進し、すべての力を結集する
  5. 社会連携:国内外の関連団体との連携を推進する
  6. 行動規範:高い倫理性に基づき行動し、専門性の向上に努める
  7. 学会運営:学会員と社会に開かれた、社会的責任を果たす組織

こうした目標の下、日本呼吸器学会は高い研究のレベルを維持、促進することで、持続可能な研究体制を構築したり、高い臨床レベルの維持のために医師の教育を行ったりしています。厚生労働省などと強固な連携を取りながら、呼吸器疾患を取り巻く社会課題の解決にも取り組んでいます。また今後、新型コロナウイルスに続く新興・再興感染症が起こる可能性もあるため、国民を守ることも重要なミッションです。

遺伝子変異を確認し、患者さんに合った肺がん治療を

近年は「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」といった薬剤の登場により、肺がんの治療を開始する前に、より適した薬剤を選択するためのバイオマーカー検査が行われます。細胞の設計図である遺伝子のうち、特定の遺伝子に何らかの理由で変異が生じるとがんになることがあるといわれており、この変異を「ドライバー遺伝子変異」といいます。ドライバー遺伝子変異がある場合には分子標的薬の使用が望ましいとされており、実際にドライバー遺伝子変異がみられた患者さんのうち、分子標的薬を使用したか否かで予後が異なるという研究結果もあります。つまり、肺がんの治療前には、しっかりとドライバー遺伝子変異の有無を確認したうえで、変異がある場合には適切な分子標的薬を使用することが、予後改善において極めて重要であるということを意味しています。

2024年7月時点で非小細胞肺がんについては9つの遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET、RET、NTRK、KRAS、HER2)の異常が同定されており、それぞれに対する分子標的薬による治療が推奨されています。一方、ドライバー遺伝子変異がない場合には、PD-L1というタンパク質の発現を確かめ、免疫チェックポイント阻害薬での治療を検討していく流れとなっています。また、治療方針決定のために行う遺伝子診断では、9つの変異に対して1つ1つを順番に検査していくと非常に時間がかかります。そのため、肺癌診療ガイドライン2024年版では、治療開始までの時間の短縮や最適な投与タイミングを逸さないために、複数のドライバー遺伝子変異を同時に検出するマルチ遺伝子検査が推奨されています。

検査の適切な使い分けで効率的かつ確実な診断を目指す

肺がん治療において、マルチ遺伝子検査が可能なコンパニオン診断薬(薬の効果を事前に予測する検査)は、現在4つ承認されています。それぞれの検査によって検出可能な遺伝子の数や結果が判明するまでの日数が異なるほか、特に重要な違いは腫瘍細胞含有量(検査するうえで必要ながん細胞の含有量)と、どれほどの感度で遺伝子変異を検出できるかという点です。患者さんの予後改善につなげるためには、各検査の特性を理解したうえで、効率的かつ確実に診断することが望まれます。

最近は以前よりも少量の組織・細胞でも検査が可能になっており、患者さんの負担も軽減しつつあります。また、検査結果が出るまでの時間の短縮や検査精度の向上も進んでおり、今後、ますます治療開始時に欠かせないものになっていくことでしょう。

 

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