一般社団法人日本リウマチ学会(以下、日本リウマチ学会)と株式会社メディカルノートによる第6回の連携ウェビナーが、2025年6月26日に開催されました。今回は、2025年9月に福岡市で開催される国際会議「第27回アジアパシフィックリウマチ学会大会(APLAR 2025)」で会長を務める田中良哉先生(日本リウマチ学会理事長、産業医科大学医学部分子標的治療内科学特別講座特別教授)が、APLARについての解説や大会の見どころなどについて講演しました。内容をダイジェストでお送りします。
第27回アジアパシフィックリウマチ学会大会(APLAR 2025)が2025年9月3~7日、福岡市で開催されます(3、4日はWorkshop , pre-congress)。アジアパシフィックリウマチ学会(Asia-Pacific League of Associations for Rheumatology:APLAR)は1963年にオーストラリア、日本、ニュージーランド、インドの4か国によって「シーパル(SEAPAL)という名称で始まり、現在では東はニュージーランドから西はヨルダンなどの中東諸国まで32か国・地域のリウマチ学会が加盟するまでに拡大しました。APLARには約2万5000人のリウマチ医が所属するとされますが、実際はもう少し多いといわれています。

世界ではEULAR(ヨーロッパリウマチ学会)、ACR(アメリカリウマチ学会)が有名です。APLARはアジア太平洋地域におけるこれら2団体のカウンターパートとして、世界3極の1極を担っています。私たちの願いは、EULARやACRに早く追いつくことで、APLARが国際会議を開くのはその願いを実現するためでもあります。
APLAR2025は、APLARと日本リウマチ学会(JCR)の共催という形で開催されます。現在、APLARの理事長は埼玉医科大学学長の竹内勤先生であり、APLAR2025の会長を私が務めます。
APLAR加盟国のあるアジア太平洋地域は、人口では世界全体の約6割(国連「世界人口予測2022年改訂版」)を占め、さまざまな人々が住んでいます。そこで、今回は「Go beyond with harmony(調和をもって、さらにその先へ)」をテーマとして掲げました。APLAR領域内の多彩な国家、人種、文化、宗教――これらを乗り越え、その先を見据えてリウマチ学の調和と進歩を極めていくことをコンセプトとしています。
APLAR2025が福岡市で行われると決まったのは2021年です。ほかにインド、シンガポール、カザフスタンが立候補し、厳正な投票で開催地が決まりました。2021年に京都で、ほぼオンラインで開催されて以来の日本開催となります。2025年4月14日に締め切った抄録の提出数は1730題にもなり、これはEULARやACRに匹敵します。提出された抄録の数では日本がトップ、2位が中華人民共和国、3位がロシアで、アジアのみならず米国からも40題、欧州各国からも演題が登録され、非常に国際色豊かになりそうです。
APLAR2025の内容について説明していきたいと思います。
まず、Plenary speakers(総会での演者)として、世界中から著名な9人の先生にお越しいただきます。ACR地域から3人、EULAR地域から3人、APLAR地域から3人でジェンダーバランスにも配慮して決定し、スペシャルレクチャーをしていただきます。
たとえば、関節リウマチに関しては9月5日にヨーゼフ・スモーレン先生、エレン・グラバレーズ先生、竹内勤先生に世界最先端のお話をしていただきます。また、SLE(全身性エリテマトーデス)に関しては、6日にジョーン・メリル先生、エリック・モランド先生、マルタ・モスカ先生にご講演いただきます。最先端のトランスリレーショナルリサーチトランスレーショナルリサーチに関しては、7日にバージニア・パスカル先生、ゲオルク・シェット先生、キム・ワンウク先生にお話しいただきます。大変勉強になりますのでぜひご参加ください。
APLARでは各分野の進歩を目指す「スペシャルインタレストグループ(SIG)」を約20作っています。それぞれのグループで共同研究をしながら、アジア太平洋地域におけるそれぞれの領域を極めていこうというものです。それぞれのグループがワークショップ、セッションを行います。たとえば、9月5日には「Genomics in Rheumatology, Unraveling the Genetic Code of Autoimmune Diseases(リウマチ学におけるゲノミクス 自己免疫疾患の遺伝子コードの解明)」というタイトルで、6日には「Navigating the complexities of systemic sclerosis(全身性強皮症の複雑さを乗り越える)」、7日は「Breakthrough Genetics and Emerging Challenges in Systemic Autoimmune Diseases(全身性自己免疫疾患における遺伝学的ブレークスルーと新たな課題)」――といったように、20を超えるSIGセッションが毎日行われます。
一方、日本リウマチ学会としては理事会を中心にLocal Organizing Committee Sessionを20以上設定しています。「Autoimmunity and Precision Medicine(自己免疫と精密医療)」「New treatment strategies for SLE(SLEの新しい治療戦略)」など、世界最先端を目指してプログラムを組みましたので、大変勉強になると思います。
私自身は、APLARの国際領域担当(International Affairs Committee)の委員長をしており、国際領域のセッションをいくつか組んでいます。たとえば、6日の「APLAR – EULAR symposium」にはEULARの元・前・現理事長 がそろって参加してくださるという熱の入りようです。また最終日7日には「Historical Perspectives in Rheumatology(リウマチ学発展の歴史を振り返る)」ということで、3代前の理事長、山本一彦先生と先々代 理事長のアティクル・ハック先生に座長をしていただき、リウマチ学の歴史についてお話していただくことになっています。
また、APLARは若手奨励ということで、各国から代表を募り「APLAR Young Rheumatologists:AYR」というグループを作っており、彼らによるセッションもあり、若い先生方にはぜひ参加していただきたいと思います。さらに、本会議に先立つ9月3、4日には「Workshop , pre-congress」として、APLARのアカデミーを中心とした教育セッションを行います。分かりやすい教育的な内容で、前回大会で非常に好評を博したセッションやレベルの高いセッションが予定されています。特に若い方々は3、4日もぜひお越しください。
APLAR2025の本会議は9月4日17時のオープニングセレモニー、その後 のウェルカムレセプションから始まり、6日にはプレジデンシャルガラディナー、7日にはクロージングセレモニーや授賞式などがあります。9月の福岡は少し暑いと思いますが、食事、観光ともバラエティー豊富な地域です。ぜひとも皆さま声をかけ合っておいでになり、世界の方々との交流、そして学問への貢献などをし、私たちのモットーであるリウマチ学の調和と進歩に寄与していただければと思います。
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