連載特集

夢の再生医療を現実へ、学会と共に社会実装を議論する患者代表を募集

公開日

2026年02月27日

更新日

2026年02月27日

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2026年02月27日

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第25回日本再生医療学会総会が2026年3月19~20日に神戸国際会議場・神戸国際展示場で開催されます。続けて21日には、国際細胞遺伝子治療学会(ISCT)とのジョイントシンポジウムも開催。本総会は日本再生医療学会では初めて、企業が主催を務めるという点でも大きな注目を集めています。

臨床研究から生まれた再生医療をいかにして標準治療として社会に届け、持続可能な仕組みを構築するのか。会長を務める髙橋 政代先生(株式会社 VC Cell Therapy 代表取締役社長)に、総会の見どころや企画に込めた思い、再生医療の未来への展望を伺いました。

提供:髙橋政代先
髙橋 政代先生

「希望の光を失わせない」に込めた2つの意味

今回の総会のテーマは「希望の光を失わせない」としました。このテーマには、2つの意味を込めています。1つは、常に患者さんの存在を意識することです。再生医療はそれ以上治療がなく絶望に陥っている患者さんに希望を与えるものであると思います。再生医療に関わるうえでは基礎研究からビジネスまで、常に患者さんの存在を意識して患者さんの利益を目指すこと、つまり患者さんの希望を形にすることが何よりも大切だと考えています。この視点を持つことが進むべき道を間違えない方法であることを、今一度確認したいという思いを込めました。

もう1つは、サイエンスのライフサイクルをまわすことです。今回は25年目にして初めて企業が主催を務める学会です。再生医療学会は、約3分の1の会員が企業関係者という非常にユニークな構成ですが、日本のアカデミアには依然としてビジネスを避けようとする傾向が残っています。しかし、今の日本には基礎研究で見出された優れたシーズが知財を生み、事業となり利益が出て、それが次の研究につながり国力となるというサイエンスのライフサイクルをまわすことが絶対に必要です。アメリカのように、研究者が特許を取得し、会社を興して利益を上げ、それを次の研究へつなげるというサイクルを、日本でも定着させたいと考えています。総会のポスターに採用した惑星の輪は、このライフサイクルを象徴したものです。

日本の課題は患者さんに治療を届ける「社会実装」

日本はiPS細胞を用いた臨床研究だけでも10以上のプロジェクトが進行中の世界でも稀有な国です。しかし、実際に患者さんに治療として届けるための出口である「ビジネス化」で停滞しています。スタートアップ企業は増えましたが、それらを適切に育てていくための仕組みが日本にはまだ十分ではないのです。日本の企業には「社会のために役に立ちたい」と高い志を持つ人が多くいます。学会はこのような現状と課題を周知し、アカデミアと企業など立場が異なる人をつなぎ、海外の資本主義的な利益追求モデルとは異なる日本独自の解決策を見出す場でありたいと思います。

私は「世界最先端であること」と「患者さんに利益があること」が両立できるように、そして何よりも患者さんを治すために研究を続けてきました。しかし、現状の制度のままでは患者さんに治療を届けることができません。だからこそ、私は企業を設立したのです。製品を作るのが2次元、治療をつくり医療として完成させるのは3次元で、ここまではできました。現在は、社会の制度を変えて患者さんに届ける仕組みを実装する4次元を企業として目指しています。

患者さんと共に未来を作る「PPI」

再生医療は「夢の治療」から「現実の治療」になりました。これは喜ばしいことである反面、医療費の負担や規制(レギュレーション)の改訂というシビアな現実に向き合う時期に来たことを意味します。今回の総会では、いわゆる一般的な市民公開講座は行いません。代わりに科学や経営などの専門的な知識を持つ患者さんや一般の方を招待し、学会員と共に議論に加わっていただく「PPI(Patient Public Involvement)」の準備を行います。2月28日までを申し込み期限としていますので、多くの皆さんのご応募をお待ちしています(https://site.convention.co.jp/jsrm2026/invitation/)。

患者さんの声には現状を打破する大きな力があります。日本でも、アメリカのように患者さん自身が治療開発のパートナーとして、主体的に関わる文化を作っていきたいと考えています。

次世代の人材を育てる「中高生のためのセッション」

総会にあわせて、中学生や高校生が再生医療への理解を深め、自己の将来、科学の真理探究や発展社会への貢献など広い視野に立ち研究者の卵として自由な発想で創造することを目指す「中高生のためのセッション」も開催します。アドバンストコースとベーシックコースでは、チームで再生医療に関するプレゼンテーションやポスター発表を行っていただき、優秀なチームには表彰を行う予定です。

どの分野も優秀な若手の人材なくして発展はありません。中高生のうちに再生医療の可能性に触れてもらうことは非常に重要です。長年続けている企画ですが、この場で発表される研究レベルは驚くほど高く、純粋な興味を抱く若い世代を育成することこそが、業界全体の未来につながると確信しています。実際にかつてこのセッションに参加していた子が、医師となり再生医療の研究を始めたケースも出てきています。

極めて現実的な課題を議論する3日間に

今回、総会は2日間にわたって魅力的なプログラムを多数用意しています。なかでも、山中 伸弥先生(京都大学iPS細胞研究所、京都大学iPS細胞研究財団)との特別対談「iPS細胞の思い出話と未来」では、昔の苦労話を含めた率直なお話をいただく予定です。北野 宏明先生(株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所、沖縄科学技術大学院大学)の特別講演では、「ノーベル・チューリング・チャレンジ:科学的発見のワープドライブとしてのAI科学者の開発」と題してAIの未来予測について語っていただきます。そのほか多数の専門家をお招きしたシンポジウム「組織幹細胞と未病~レジリエンス破綻と老化・疾患発生メカニズム」など、今聴くべきプログラムをそろえました。

また、国際細胞遺伝子治療学会(ISCT)とのジョイントシンポジウムにも注目いただきたいと思います。ISCTは企業関係者が多い学会であり、再生医療が実用化フェーズに入ったからこそ直面している細胞製造、規制(レギュレーション)、保険償還など、極めて具体的で現実的な課題について議論が行われる予定です。

私たちは今、再生医療を「特別な医療」から「標準治療」へと押し上げる最終段階にいます。単に治療として承認を得るだけでなく、実際に患者さんの元へ届けるための解決策をみなさんと共に議論できればと考えています。今回は総会としては2日間というタイトなスケジュールで、英語セッションも多いイレギュラーな構成ですが、これまでにない新しい学会の形をぜひ体感していただければと思います。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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