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「つながる知」が支える、患者さんの明日――日本がんサポーティブケア学会 学術集会開催に向けて

公開日

2026年05月08日

更新日

2026年05月08日

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2026年05月08日

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一般社団法人 日本がんサポーティブケア学会(以下、日本がんサポーティブケア学会)による第11回学術集会が2026年5月16日〜17日に富山で開催されます。「心のケア」をテーマに掲げ、多彩なプログラムが予定されている同学術集会。会長を務める矢野 真吾(やの しんご)先生(東京慈恵会医科大学 腫瘍(しゅよう)・血液内科 教授)は、2026年4月13日に行われた日本がんサポーティブケア学会と株式会社メディカルノートによる連携ウェビナーで「職種の垣根を超えて多角的な視点から議論を行う場にしたい」とお話しされました。企画に込めた思いなど、当日の講演内容をダイジェストでお送りします。

病気ではなく病人を診る――心のケアが開くがん医療

日本がんサポーティブケア学会は、「がん治療を安全で効果的に実施するための支持療法を発展させ、学際的・学術的研究を推進し、その実践と教育活動を通して国民の福祉に貢献すること」を目的に2015年に設立されました。活動を通じて、がん患者さんの生活の質(QOL)を向上させるとともに、がん治療におけるサポーティブケアの重要性を広く認識していただくことを目指しています。

私が所属する東京慈恵会医科大学の建学の精神は「病気を診ずして病人を診よ」です。これは、悩みや生活背景などを含め、1人の人間である患者さんに向かい合うことの大切さを説いたものです。この考え方に共鳴し、今回の学術集会のテーマを「心のケア」としました。がん患者さんとご家族の身体的、精神的、社会的なケアを統合的に議論し、多様化した治療のアプローチに対応できる実践的な支援方法と、それを支える医療従事者のネットワーク構築について考えていく場にしたいと考えています。また、心のサポートに焦点を当て、がん支持医療に関する最新の研究報告、シンポジウム、ワークショップ、パネルディスカッション、症例検討、特別企画に加えて、今回のメインテーマである「心のケア」に関するセッションも企画しました。

富山の地で語り合うサポーティブケアの未来

今回の学術集会は富山県富山市で行います。初めてこの地を訪れた際、目の前に広がる雄大な立山連峰の姿に一瞬で心を奪われたことが、この場所を開催地に選んだ理由の1つです。がん治療におけるサポーティブケアは、患者さんの「生」を支える土台だと考えています。立山連峰が富山の豊かな恵みを支えるように、本学会が困難に立ち向かう方々の心の支えとなり、未来への展望を切り開く一助となることを願っています。

また、富山には古くから「薬売りの町」として日本の医療と養生を支えてきた歴史があります。「先用後利(せんようこうり)」、つまり「先に薬を配置し、後で代金を支払う」という精神は、患者さんのニーズを第一に考えるサポーティブケアの原点とも重なります。雄大な立山連峰のエネルギーに触れながら、現在の多職種連携や患者支援のあり方を深く語り合える場にしたいと考えています。

会場である富山県民会館は、富山駅から徒歩圏内という立地に加え、富山空港からもスムーズにアクセスが可能です。会館の目の前を通る国道41号線は、ノーベル賞受賞者を多く輩出した地にちなみ「ノーベル街道」と呼ばれており、この知の拠点でがんサポーティブケアの未来を切り開く熱い議論が交わされることを大変意義深く感じています。

多彩なプログラムで広がる学びと連携

学術集会のプログラムの一部をご紹介したいと思います。日本がんサポーティブケア学会は、17の部会と13のワーキンググループを中心に活動していますが、これらの活動成果は教育講演と「Year in Review」で発表していただく予定です。

ほかにも、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップ、合同・特別企画プログラム、患者・市民参画プログラム、事前参加研修プログラムなど、30の企画を用意しました。一般演題は223題の申し込みがあり、この中から特に査読者の点数が高かった7演題を「優秀演題セッション」で発表いただく予定です。

本学会は他学会との連携が活発なことも特徴です。前回に引き続き、韓国のがんサポーティブケア学会であるKASCC(The Korean Academy for Supportive Care in Cancer)との合同シンポジウムを予定しています。そのほか、日本腫瘍循環器学会、日本がん口腔支持療法(こうくうしじりょうほう)学会、日本がん看護学会、日本サイコオンコロジー学会、全日本鍼灸学会との合同企画も進めています。

5月17日には市民公開講座を開催します。「とやまのがん医療最前線:あなたを支える『技』と『心』と『知識』〜がんの専門医と感染症のプロが語る、安心の日常〜」をテーマに、がん治療と緩和ケア、治療中の感染症対策とおすすめのワクチンについて専門の先生方にご講演いただきます。会場は富山県民会館 3F 304で15時30分開始となります。学術集会ホームページへ詳細を掲載しておりますので、ご参照ください。事前登録は必要ありません。多くの方のご参加をお待ちしております(https://www.c-linkage.co.jp/jascc2026/public_lecture.html)。

多職種連携による新たなサポーティブケアへ

本学会の大きな特徴は、がん治療の質を支えるあらゆる専門家が集う「多職種連携」と「学際的な対話」です。一般的な専門学会が特定の臓器や技術を深掘りする場であるのに対し、本学会は医師、看護師、薬剤師、栄養士、リハビリテーションの専門職、心理士、ソーシャルワーカーなど、多様な背景を持つ専門家が同じ壇上に立ちます。期待しているのは、1つの職種だけでは解決できない複雑な問いを職種の垣根を超えて共有し、多角的な視点から議論する場となることです。

サポーティブケアという共通言語のもと、最新のエビデンスと現場の知恵が融合する学際的な交流こそが、患者さんの明日を支える新たなケアの形を創造します。職種の枠を超えた「知の連鎖」を、ぜひ体感してほしいと思っています。多くの皆さんのご参加を心よりお待ちしています。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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