日本肺高血圧・肺循環学会による第11回学術集会が2026年5月30日〜31日に神戸で開催されます。診療と研究、教育の融和をテーマに掲げ、国内外の専門家のみならず患者団体との交流も予定されています。会長を務める小垣 滋豊先生(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科 主任部長)は、2026年4月28日に行われた日本肺高血圧・肺循環学会と株式会社メディカルノートによる第1回連携ウェビナーで「多領域・多職種の力を結集し、克服すべき課題への足がかりとなる場にしたい」と語りました。当日の講演内容をダイジェストでお送りします。
日本肺高血圧・肺循環学会は、前身となる2つの学会が統合して2015年に発足した比較的新しい学会です。本学会が対象とするのは、右心室から肺を経由して左心房に至る血液の経路である「肺循環系」における肺高血圧症(PH)とその関連疾患です。国の指定難病である特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)や慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)など、いまだ完全には病態が解明されていない難治性疾患が多く含まれています。
本学会の強みは、幅広い領域から多職種の専門家が集っている多様性にあります。臨床医は循環器、膠原病、呼吸器、血液腫瘍といった内科領域から、呼吸器、心臓血管などの外科領域、小児科や新生児科、画像診断科や放射線科、リハビリテーション科、さらには基礎医学の研究者に至るまで、まさに多岐にわたる専門家が「肺循環」というキーワードのもとに集結しています。また、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師といったコメディカルが対等に議論に参加していることも大きな特徴です。
これまでの診療や研究の歩みの中で、患者さんの治療成績や予後は確実に改善してきました。しかし、まださまざまな困難を抱えている患者さんが存在し、克服しなければならない課題が残っているのも事実です。今回の学術集会では、これまでの成果を融和させ、次なる解決策を見出す場にしたいと考えています。
今回の学術集会のテーマは「肺高血圧診療・研究・教育のさらなる融和を求めて〜胎児から成人へ、そしてアジアから世界へ〜」としました。テーマに込めた思いは大きく2つの視点に集約されます。
1つは「胎児から成人へ」というライフステージの時間軸です。肺高血圧症は先天性の病気から成人期に発症するものまで、全ての生涯に関わる可能性があります。会長特別企画では「Developmental Lung DisorderとPH 〜胎児・小児から成人へ〜」といったセッションも設けています。学術集会の中で小児領域と成人領域の医師が議論しスムーズな移行期医療のあり方についても考えていきたいと思っています。
もう1つは「アジアから世界へ」という空間軸です。今回は、日本、韓国、中国、台湾を中心とした東アジアのネットワークであるEASOPH(East Asia Society of Pulmonary Hypertension)の第6回学術集会も学会初日に同時開催します。サウジアラビアや米国からもゲストをお迎えし、国際的な知見を共有いただく予定です。海を臨む国際都市である神戸の地で、日本そしてアジアの肺高血圧診療の力を融合し、世界へと発信していく機会になることを願っています。
本学会が何より大切にしているのは、患者さんとのパートナーシップです。今回は、25年以上の歴史を持つ「NPO法人PAHの会 肺高血圧症患者と家族の会」とのコラボレーション企画を行います。PAHの会は、日本循環器学会や日本循環器協会をはじめ全国の専門医と連携しながら、製薬企業、行政、海外の患者会とも手を取り合い、患者さん・ご家族と医療をつなぐ架け橋としての活動をされてきました。
特に注目いただきたいのは、初公開となる「レイサマリー(Lay Summary)」です。レイサマリーとは、治療方針などについてまとめた医師向けの診療ガイドラインの内容を、分かりやすい言葉と図で再構成した「患者さん向けの要約」です。医師と患者さんが同じ内容を共有しながら、納得して治療方針を決定していくための新たなツールとして、その意義を広く伝えていきたいと考えています。
さらに、EASOPHと連携して「東アジア患者会」の設立も予定しています。日本、台湾、韓国の患者会と専門医が集い、国境を越えた交流を行うとともに、将来的な国際協同への意思表明である「Statement of Intent(意向表明書)」への署名セレモニーを行います。
プログラムは、基礎研究から臨床の最前線までを盛り込み、非常に充実した内容となっています。
会長特別企画では、「PH遺伝子診療の現在・未来」や、期待の集まる「PH治療薬の近未来」といったトピックスを取り上げ、遺伝学的検査やカウンセリング、個別化治療、新薬開発の最新情報を共有します。また、シンポジウムでは「CTEPH治療の最前線」や「肺高血圧の救急診療(PHクライシスへの急性期対応)」といった演題のほか、リハビリテーションや学童期の生活管理など患者さんのQOL(生活の質)に直結するテーマも網羅しています。
学会の若手会員部門である「PH48」による特別セッションでは、麻酔科、リハビリテーション、看護の視点から多角的にPH診療を見つめ直します。また、日本小児循環器学会とのジョイントシンポジウムでは、フォンタン循環という特殊な病態における治療について深く議論します。
さらに、教育講演やセミナーも充実させ、基礎からしっかり学びたい先生方への間口も広く設けています。2日間で1つでも多くの知識やネットワークを持ち帰っていただけるような、厚みのある構成を目指しました。神戸で皆さんにお会いできることを心より楽しみにしています。ぜひ多くの方のご参加をお待ちしております。
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