連載難病・希少疾患患者に勇気を

希少難病の1つPAH(肺動脈性肺高血圧症)の患者アンケート―市民公開講座「60 minutes together –PAHバーチャルキャンプ–」レポート

公開日

2021年06月04日

更新日

2021年06月04日

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2021年06月04日

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心臓から肺へ血液を送る血管(肺動脈)の圧力が高くなる希少難病の1つ「PAH(肺動脈性肺高血圧症)」。その患者数は近年増加傾向にあります。PAHは、病気の認知度が低く初期症状に特異性がないことから、診断・治療までに長い時間がかかることが問題とされてきました。そこで、PAHの認知を広げるために2021年5月27日に市民公開講座「PAHバーチャルキャンプ」が行われました。本記事では患者さんが何に困っているのかなど、アンケートの結果をレポートします。

【プログラム】主催:ヤンセンファーマ株式会社

・PAHについて:田村雄一先生(国際医療福祉大学医学部循環器内科 教授)

・PAH患者さんのアンケート結果発表:土屋美寿々さん(ヤンセンファーマ広報)

・PAHとともに:重藤啓子さん(NPO法人肺高血圧症研究会 代表理事/声楽家)

・6 minutes togetherプロジェクト紹介:土屋美寿々さん(ヤンセンファーマ広報)

・歌に込めた想い:一青窈さん(歌手)

PAH患者さんアンケート結果発表

ヤンセンファーマ(以下、ヤンセン)広報の土屋美寿々さんより、PAH患者さん28名を対象とした事前アンケート(集計期間2021年3月29日〜4月16日)について発表がありました。

土屋美寿々さん

まずは患者さん同士のつながりについてです。

患者さん同士のつながり

「病気や治療のことを気軽に相談できるほかのPAH患者さんがいるか」をお伺いしたところ、43%が「当てはまる」「やや当てはまる」と回答し、57%は「当てはまらない」「あまり当てはまらない」と回答しました。

回答者の中には、家族では分かり得ないことをブログに投稿し、同じ気持ちを抱くブロガーからの励ましのコメントをもらったという方がいました。このように患者さん同士だからこそ分かる気持ちを共有できる機会が大事である一方、アンケート結果からは半数以上の方がそのような機会を持てていない状況が伺えました。

PAH患者さんと社会のつながりや周囲の理解

次に、社会とのつながりや病気への理解です。

PAH患者さんと社会のつながりや周囲の理解

「就職することや仕事を続けることは問題ないか」については、57%が「当てはまらない」「あまり当てはまらない」と答え、就職や仕事を続けることに困難を感じていることが分かりました。また、「PAHという病気に対して周囲からの理解はあるか」については、61%が「当てはまらない」「あまり当てはまらない」と回答しています。

回答者の中には「人に説明するときにどうしたら理解してもらえるかとても悩んだ」という方や、「高血圧と勘違いされる」「症状が息切れといっても大げさだと受け取られる」という方がいました。PAHという病気に対する周囲の理解不足は、患者さんの社会生活を困難にしている要因の1つかもしれません。

一方で、「家族や友人がサポートしてくれるか」については、86%が「当てはまる」「やや当てはまる」と回答しています。

家族や友人がサポートしてくれるか

また、「元気になったら◯◯をしよう」と自分が元気になるのを心待ちにしてくれる方の存在が励みになっている、恋人が歩く速度を自分に合わせてくれた、諦めかけていたことを治療後に家族に支えられながら1つずつ叶えている、という方がいました。身近な方のサポートが患者さんの希望になるのだと分かります。

本人の意思や希望を共有する「SDM」の浸透

田村雄一先生のお話にもありましたが、患者さんと医療者が共同で、本人の意思や希望を共有しながら治療における決定を検討する過程を「共同意思決定(SDM:シェアード・ディシジョン・メイキング)」といいます。

SDMに関するアンケートでは「治療法の選択・決定について、あなたの考えや理想にもっとも近いもの」を伺いました。

治療法の選択・決定について、あなたの考えや理想にもっとも近いもの

すると、「医師に決めてもらいたい」方が11%、「医師からの情報提供や選択肢の提示を受けて、自分で決めたい」方が43%、「医師からの情報提供だけでなく、自分からも価値観や希望・社会的役割・ライフスタイルなどの情報を伝え、話し合いながら一緒に決めたい(SDMの実施)」方が46%でした。

この結果から、SDMを選択される方は半数近くいること、自分で決めたい方は多いもののSDMを選択されていない方もいるため、SDMの理解の浸透がまだ十分でないことが分かりました。

また、診断後年数と治療法の選択・決定に関する考え方の相関について見てみました。

診断後年数と治療法の選択・決定に関する考え方の相関

すると、診断後10年以上の方はSDMの意識を持っていますが、10年未満の方はSDMを知らなかったり、医師への相談を遠慮してしまったりする傾向が見られました。

アンケート結果から分かったこと

今回の調査を通して、気軽に相談できる患者さん同士のつながりが十分でないこと、周囲の病気への理解不足により社会生活を送ることに困難を感じる患者さんが多いこと、SDMの浸透は不十分であり、特に診断後間もない患者さんにSDMが認知されていない現状が明らかになりました。

このような背景から、ヤンセンでは患者さんが前向きに希望を持って生活できるよう、患者さん同士のつながりを深めるや社会への疾患理解をサポートするための取り組みを続けていきます。また、患者さん一人ひとりにあった治療を目指すSDMを普及させる活動にも引き続き尽力します。

アンケート結果から分かったこと

PAH患者さんやご家族におかれましては、PAHの情報提供・社会生活のサポートを行うウェブサイト「Produce A Hope」をご覧ください。また、歌手・一青窈さんと協働した疾患啓発プロジェクト「6 minutes together(シックスミニッツトゥギャザー)」をスタートしました。1人でも多くの方にPAHという病気を知っていただき、適切な診断と治療につなげられることを願います。

※レポートの続きはこちらのページをご覧ください。

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