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「足が落ち着かない」病気に光を――レストレスレッグス症候群の診療ガイドライン改訂

公開日

2026年06月26日

更新日

2026年06月26日

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2026年06月26日

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「40年ぶりに生まれて初めてしっかり眠れた」――そう話す患者さんの言葉に、坪井 義夫(つぼい よしお)先生(つつみクリニック福岡 パーキンソン病専門外来センター センター長、順天堂大学 大学院医学研究科 特任教授)は、改めてこの病気が患者さんにもたらす負担の大きさを実感したといいます。足などに不快感が生じ不眠をもたらす“レストレスレッグス症候群”の診断基準や標準的な治療法などをまとめた診療ガイドラインが初版から約12年ぶりとなる2024年に改訂されました。なかなか診断に至らず悩む患者さんを減らすためにはどのような取り組みが求められるのか、ガイドライン作成委員会の委員長を務められた坪井先生に伺いました。

「気付かれない病気」レストレスレッグス症候群とは

レストレスレッグス症候群は一定数の患者さんがいるとされながら、長い間医師同士でもほとんど話題にあがらない「気付かれない病気」でした。私自身も2000年前後に海外へ留学するまで、ほとんど患者さんを診たことがなかったほどです。

この病気には、主に4つの特徴があります。まず、足などに不快感やムズムズ感といった異常な感覚がみられ、その部位を動かしたくて仕方ない衝動があること。これらの症状は静かに座ったり横になったりする状態でみられること。歩いたり足をさすったりすると一時的に楽になるが、じっとしていると再び症状が生じること。そして夕方から夜にかけて症状が出現しやすいことです。

もしかしたら“むずむず脚症候群”という呼び名を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。現在、臨床や研究においては“レストレスレッグス症候群”という名称が使われています。

この病気が患者さんにもたらす最も深刻な問題の1つは不眠です。夜になると症状が強まる性質から、床に就いてじっとしていることができず、なかなか眠れなかったり途中で目が覚めてしまったりということが多くあります。治療を始めた方の中には「40年ぶりに生まれて初めてしっかり眠れた」と語る患者さんもいるほどです。その言葉は、この病気がいかに長く深く患者さんの生活に影響を与え続けるかを物語っています。また、子どもの頃から症状を抱えていた患者さんの中には、授業中に足が落ち着かないため学校の先生から注意された経験を持ったり、お母さんに夜に足をさすってもらったりした方もいます。ご本人も周囲の方も病気とは気付かず、長年苦しみ続けてきた方も少なくありません。命に関わる病気として語られることは多くありませんが、患者さんによっては非常につらい苦しみをもたらす病気といえるでしょう。

症状の表現難しく、正しい診断に至らないことが大きな課題

レストレスレッグス症候群は感じている症状を患者さん自身が表現しづらいため、正しい診断に至りづらいという課題があります。「足が落ち着かない」「足を動かしたくて仕方ない」という病気の核となる訴えが言葉にしにくいのです。この感覚は痛みともかゆみとも異なる独特の不快感であり、日常的に用いる言葉では言い表しにくく、「足がしびれる」「皮膚の下がむずがゆい」といった表現に置き換えられてしまいがちです。

この病気は、主に脳神経内科や睡眠外来で診断・診療されます。しかし実際には、患者さんが最初に受診するのは整形外科や皮膚科であるケースが少なくなく、足や腰、皮膚に明らかな異常が見当たらない場合、正しい診断に至らないこともあります。また、“不眠の中に隠れている”病気でもあるのですが、眠れない原因として疑われにくく、脳神経内科や睡眠外来にたどり着くまでに長い時間がかかってしまうことも珍しくありません。

私の元を訪れる患者さんにも、複数の医療機関を受診された方が多くいます。内科や整形外科、皮膚科などの先生方にも、この病気の存在を知っていただくことが非常に重要だと考えています。

診断・治療の標準化を進める日本神経治療学会の取り組み

日本神経治療学会では、2012年に「標準的神経治療」シリーズの1つである「Restless legs症候群」を公開し、2024年に改訂版として「標準的神経治療:Restless legs症候群診療ガイドライン(2024)」を作成公開しました。

今回の改訂の大きな特徴は、診療ガイドラインの評価と普及を支援するMinds(マインズ、EBM医療情報事業)の作成プロセスに沿って作られたことです。つまり専門家である医師の意見だけに基づくのではなく、研究や臨床試験の結果を基に科学的根拠(エビデンス)のレベルや推奨度を明確に示し、他の学会に所属する医師や患者さんの意見も取り入れたうえでまとめた内容となっています。治療については、具体的な薬の使用方法や治療を続ける中で症状の現れ方が変化する場合への対応などが整理されました。

こうした取り組みの背景には、さまざまな神経疾患に対して、より優れた治療法を確立することを目指す日本神経治療学会の活動があります。患者さんの数がそれほど多くない病気に対してもエビデンスに基づいた診療の標準化を進める、粘り強く地道な積み重ねの1つとして今回の改訂が行われました。

患者さんを「難民化」させないために

この病気を主に診療するのは、脳神経内科医と睡眠障害を専門とする医師です。2026年6月から、内科などと組み合わせて標榜できる診療科に「睡眠障害」が追加されました。今後は「睡眠障害内科」「睡眠障害小児科」といった看板が増え、睡眠に悩む患者さんが適切な治療を受けやすくなることが期待されます。

「知られていない、そして話題にもなりにくい病気をどのように啓発していくか」――そこがこの病気の難しさだと私は感じ続けてきました。今も適切な診断・治療を受けられず、悩みを抱えている方は多くいらっしゃると推測されます。「足が落ち着かない」「夜になると足を動かしたくて仕方がない」「眠れない夜が続いている」――こうした症状が長く続く場合には、ぜひ脳神経内科や睡眠外来などに相談することを選択肢として覚えておいてもらいたいと思います。

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