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日本産科婦人科学会が5月、札幌で開催――“第5のがん治療”光免疫療法の紹介も

公開日

2026年04月30日

更新日

2026年04月30日

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2026年04月30日

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第78回日本産科婦人科学会学術講演会が2026年5月15日~17日、札幌市のグランドメルキュール札幌大通公園ほかで開催されます(オンデマンド配信ありのハイブリッド開催)。会長を務める渡利 英道先生(北海道大学大学院医学研究院 産婦人科学教室教授)に、学術講演会の見どころやテーマにかける思い、産婦人科医療の課題と展望などについて伺いました。

提供:渡利 英道先生

提供:渡利 英道先生

北の大地から世界を照らす――テーマに込めた決意

本学術講演会のテーマは「光は、北から~Be Ambitious!~」です。本会が開催される2026年は、北海道大学にとって創基150周年という大きな節目にあたります。ちょうど今年行われる記念事業のテーマ「光は、北から」に、北海道大学発展の礎を築いたクラーク博士の有名なフレーズ「Boys, be ambitious!」を組み合わせ、本学術講演会においてもその志を共有したいと考えました。このテーマには、北海道の地から研究成果や新たな知見を世界へ向けて発信していきたいという思いを込めています。また、私が所属する北大の産婦人科学教室としても、この学会開催を通じてさまざまな研究分野における取り組みをいっそう充実させていくという決意の表明でもあります。

最新医療、地域課題など注目のプログラム

メインとなる3つのシンポジウムに加え、「会長特別企画」では特に注目していただきたいプログラムを多数用意しました。その筆頭が、初日の開会式直後に行われる「光免疫療法」のセッションです。小林 久隆先生(米国国立がん研究所分子イメージング部門、関西医科大学附属光免疫医学研究所)が開発されたこの“第5のがん治療”といわれる画期的な治療法について、ぜひ理解を深めていただければと思います。北大では現在、婦人科系がんを対象に世界初となる光免疫療法の治験を進めており、その最新動向について紹介する予定です。

そのほか、AIの活用に関するセッションや、日本VR医学会との合同企画、米国メモリアルスローンケタリングがんセンターをはじめ海外から著名な研究者を招いた英語セッションなど、多彩なプログラムを準備しています。委員会企画として、私たちを取り巻く重要なトピックである診療報酬改定、出産費用の無償化、PGT(着床前遺伝学的検査)などについても、広く議論できる場を設けます。

また、社会的な視点を取り入れたプログラムも大きな特徴です。株式会社セコマ 取締役会長の丸谷 智保氏をお招きし、北海道を中心に展開する「セイコーマート」の過疎地域での店舗展開や、地域に貢献する活動について伺います。さらに、函館市長の大泉 潤氏にご登壇いただき、人口減少が進行している函館市における「少子化時代のまちづくり」をテーマにお話をいただきます。加えて、昨今被害が増加しているクマへの対策も北海道が直面する喫緊の課題であることから、クマの生理・生態研究を専門とする坪田 敏男先生(北海道大学大学院獣医学研究院)によるセッションも準備しています。

子連れ参加支援の実施と“おもてなし”

本会では、子育て中の先生方も安心して参加できるよう「お子様連れ学会参加」の支援を実施します。これまではお子さんを連れての現地参加を諦めていた方も少なくなかったのではないでしょうか。海外の学会などでは、会場の後方にベビーカーが並ぶ光景を見かけることがあります。こうした事例を参考にしつつ、お子さんを同伴しての入場が可能なスペースを確保するなど、ご家族でのご来場に向けて体制を整えています。

また、会場ではスタンプラリーの企画や、グルメや名産品の“おもてなし”なども用意しています。さらに本会の期間中は、会場間をスムーズに移動できるよう循環バスを運行するほか、引退馬が新たな場で活躍する観光馬車「札幌まちばしゃ」の特別運行も予定しています。会場間のわずかな区間ではありますが、ばんえい競馬で活躍したキタノダイナミック号(愛称:だいちゃん)が引く馬車に乗って、北海道らしさを味わっていただけたらと思います。

日々の診療や研究成果を患者さんの“希望の光”へ

私たち産科婦人科学会の基本的な役割には、新しい治療法や診断法の開発、基礎研究の成果発表といった科学的な部分があります。ただし、“臨床”の学会としては、それだけでは少し不足があり、研究成果を患者さんに還元していくことが重要です。また、産婦人科医療は社会的な側面とも密接につながっているため、医師の働き方改革などの課題も含めてさまざまな角度から話題を取り上げて議論し、医師の勤務環境の改善などにも学会が中心となって取り組み、医療を受ける側と提供する側の双方の幸せを追求することが使命だと考えています。

私自身、日々の診療の中では患者さんとご家族のために何ができるのかを常に考え、患者さんから学ばせていただく姿勢を大切にしてきました。実際に治療を行い、その限界に直面した際に得られた気付きや課題が、研究の原動力となります。先述した光免疫療法の治験も、既存の治療では制御が困難ながんの患者さんに新たな治療選択肢を提供したいという思いで取り組んできました。こうした治験を積極的に実施することは、ドラッグ・ラグ*を解消し、患者さんに1日も早く治療薬を届けることに寄与しています。このように、研究や毎日の診療の先に新たな治療法などの開発があり、それが最終的に患者さんとご家族の希望の光につながるのだと意識して取り組んでいくことが大事だと思っています。

また、個人の研鑽に留まることなく、次の世代を育てることも非常に大切です。産婦人科領域の幅広い分野の発展につながるよう、世代を超えた強力な人材の育成に力を入れていきたいと考えています。

*ドラッグ・ラグ:海外で使用されている薬が日本で承認されて使えるようになるまでの時間差。

学会員の皆さんへのメッセージ

新型コロナウイルス感染症の流行を経て、今回の第78回学術講演会には現地で参加される方も多いのではないでしょうか。遠方ではありますが一人でも多くの皆様に足を運んでいただき、海外からの参加者との交流も含めて、ぜひ直に顔を合わせて語り合う機会としていただけたら幸いです。また、演題数は昨年を上回る1,488題を予定しています。演題発表がない方も含めて、多くの方にご来場いただければと思います。参加を予定されている方は、宿泊や交通手段の手配をお早めにお済ませいただくと安心です。春の北海道でお会いできることを心より楽しみにしています。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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