連載クリニックの現場から

若い世代に多い炎症性腸疾患(IBD)――治療を続けながら、やりたいことを諦めないために

公開日

2026年09月03日

更新日

2026年09月03日

更新履歴
閉じる

2026年09月03日

掲載しました。
Cee127d27a

東海内科・内視鏡クリニック 岐阜各務原院 院長/神谷 友康 先生

繰り返す下痢や腹痛――。こうした症状を「体質」や「ストレスのせい」と考え、なんとなく様子を見ている人もいるのではないだろうか。だがその背景には、炎症性腸疾患(IBD)という病気が隠れていることがある。

IBDは、近年、日本で患者数が増加傾向にあり、特に若い世代で多く発症することが知られている。進学や就職、妊娠・出産といった人生の節目と治療を続ける時期が重なり、将来や日々の生活に不安を抱く人もいる。

一方で、治療を続けて病状を管理しながら、問題なく学業や仕事、日常生活を送れている人も少なくない。

若い世代は、IBDとどのように向き合い、治療と生活を両立していけばよいのだろうか。東海内科・内視鏡クリニック 岐阜各務原院の院長で、日本消化器病学会認定 消化器病専門医の神谷 友康(かみや ともやす)先生に話を伺った。

IBDは、若い世代で発症しやすい病気

IBDは、腸に慢性的な炎症が起こる病気の総称で、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)とクローン病が代表的です。日本では患者数が増加傾向にあり、決してまれな病気ではなくなってきました。

主な症状は、繰り返す下痢や腹痛、血便などです。こうした症状を「体質」や「ストレスのせい」と思い込み、受診が遅れてしまう方もいらっしゃいます。

IBDは特に10代から30代といった若い世代で多くみられますが、幅広い年代で発症します。年齢にかかわらず、気になる症状が続くときは早めにご相談いただきたいと考えています。

進学・就職・妊娠――ライフイベントと治療の両立が課題

若い世代での発症が多いということは、この病気との付き合いが、進学や就職、結婚、妊娠、出産といった人生の大切な節目と重なりやすいということでもあります。

まずお伝えしたいのは、症状が落ち着いている状態を保てていれば、通学や就労は十分に可能だということです。IBDは症状がよくなったり悪くなったりを繰り返す病気なので、体調に波があることを前提に、無理のない生活リズムを整えることが大切です。必要に応じて、学校や職場に病気や体調、配慮してほしい点について伝えることは、治療と日常生活を両立するうえで役立ちます。 

妊娠や出産についても、IBDだからといって直ちに諦める必要はありません。病状が落ち着いている時期に、主治医と相談しながら計画的に臨むことが大切です。

特に注意していただきたいのが、薬を自己判断で中断しないことです。「妊娠したから薬をやめたほうがよいのでは」と考えて服薬を中止すると、症状が悪化することがあります。妊娠を考え始めた段階で、使用している薬や今後の治療方針について、 早めに主治医へ相談してください。

「難病」という言葉に、必要以上に身構えないで

IBDの代表格である潰瘍性大腸炎やクローン病は、国の指定難病です。そのため「難病」という言葉の響きに、強い不安を抱かれる方もいらっしゃいます。

一方、これらの病気については研究が進められており、近年は治療薬の選択肢も増え、病状や生活背景に応じて治療を検討できるようになってきました。一定の認定基準を満たす場合には医療費助成の対象となる制度も設けられています。

もちろん、完全に治すことが難しく、長く付き合っていく病気であることに変わりはありません。それでも、病状を管理しながら、学業や仕事など、それぞれの日常生活を続けている方も多くいらっしゃいます。 

「難病だから、これまでの生活を諦めなければならない」と1人で思い詰める必要はありません。ご自身の病状や、今後やりたいことについて主治医に伝え、それらを続けるためにどのような治療や生活上の工夫ができるのか、一緒に考えていくことが大切です。 

早めの診断が、適切な治療への第一歩

IBDでは、早い段階で診断を受け、適切な治療につなげることが、病状を管理していくうえで重要です。

診断にあたっては、症状や経過を丁寧に確認したうえで、血液検査、病理組織検査、細菌培養検査、大腸内視鏡検査などを組み合わせます。若い方にとって、特に内視鏡検査は心理的なハードルが高いかもしれませんが、腸の粘膜を直接観察し、診断や病状の評価を行ううえで重要な検査です。

繰り返す下痢や腹痛は、「よくあること」とつい後回しにしてしまうことが多いかもしれません。しかし、症状が長引いている場合は、原因を確認し、必要な治療につなげるためにも、一度医療機関に相談していただきたいです。気になる症状が続くときは、消化器内科などへの相談を検討してください。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

クリニックの現場からの連載一覧