ひびきこころのクリニック 院長/安藤 悦子 先生
朝、どうしても起きられない。学校に行こうとすると体が動かない。そんなわが子の姿を見て、「怠けているのでは」「気持ちの問題では」と感じてしまう親御さんは少なくない。
兵庫県芦屋市にあるひびきこころのクリニック 院長で、日本専門医機構認定・精神科専門医、子どものこころ専門医機構・子どものこころ専門医でもある安藤 悦子(あんどう えつこ)先生に、子どもの不登校との向き合い方についてお話を伺った。
お子さんが朝起きられなくなったり、学校に行くことを渋ったりするようになると、親御さんの中には、「夜ふかしをしたせいではないか」「気持ちがゆるんでいるのでは」と考える方もいるかもしれません。
しかし、こうした変化の背景には、適応障害などの心の不調が関係していることがあります。適応障害は、環境の変化などによるストレスが本人の対処できる範囲を超えたときに、情緒面や行動面の不調が生じる状態です。その発症には、本人の特性やストレスの受け止め方、身を置いている環境など、複数の要因が関係すると考えられます。
ストレスの原因というと学校を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、本人が負担を感じている場所が学校とは限りません。塾でのプレッシャーや、家庭内の人間関係が負担になっていることもあります。
「好きなことはできるのに、学校や塾には行けない」という様子が見られたときは、怠けと決めつけず、本人が何に負担を感じているのかを丁寧に見ていくことが大切です。
頭痛や腹痛、めまいが生じる。学校へ行く前になるとお腹が痛くなる。よく眠れない。食欲がない。適応障害では、気持ちの落ち込みといった感情面の症状よりも先に、こうした体の症状が現れることが少なくありません。本人も親御さんも「体の具合が悪い」と考えて、最初に内科や小児科を受診されることもあります。
こうした状態のお子さんに、「早く起きなさい」「早く行きなさい」と促すことは、自然な親心です。しかし、本人がすでに精いっぱいの状態にあるとき、その言葉が強い圧力となり、さらに追い詰めてしまうことがあります。
ここでお伝えしたいのは、「朝起きられない」「頭やお腹が痛いと訴える」といった変化はあるものの、「家では比較的元気に過ごしている」「好きなことはできている」という段階で、医療機関に相談していただくことの大切さです。
早い段階で相談することで、本人が何に負担を感じているのかを整理し、親御さんがどのように関わればよいかを一緒に考えることができます。親御さん自身の不安や戸惑いを整理するきっかけにもなります。
不登校と聞くと、「どうすれば学校に行けるようになるか」に目が向きがちです。親御さんの中には「このままで、将来ひとりで生きていけるのだろうか」と不安を抱く方もいらっしゃいます。しかしその思いの根底には、学校に行かせたいというより、お子さんに健やかに暮らしてほしいという願いがあるのではないでしょうか。
大切なのは、まずお子さん本人が心の元気を取り戻すことです。心身の状態が落ち着くことで、自然に学校へ足が向くようになることもあります。反対に、心身の余裕がない時期に無理をさせると、かえってお子さんの自信や意欲を損なうこともあります。
まずは本人のペースを尊重し、無理なく取り組める目標を立てて、小さな「できた」を重ねていくことが、自信を取り戻す一歩になります。
こうした回復を支えるためにも、家庭だけで抱え込まず、必要に応じて学校や地域の相談窓口にも相談しながら、お子さんを取り巻く環境全体を整えていくことが大切です。
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