イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教
「更年期障害」と聞くと女性特有の症状というイメージが強いかもしれません。しかし、実は男性にも起こる可能性があります。この「男性更年期障害」は、医学的には加齢性腺機能低下症(LOH症候群)と呼ばれ、加齢に伴い男性ホルモン(テストステロン)の分泌が減少することが主な原因です。
男性の場合、ホルモンの減少は女性のように急激ではなく、20歳代以降から緩やかに進行します。そのため、発症のタイミングには個人差があり、30歳代で症状が現れる方もいれば、50歳代以降に症状が進行する方も、発症しない方もいます。このばらつきが、男性更年期障害の特徴といえるでしょう。
男性更年期障害の症状や注意点などについて、イーヘルスクリニック新宿院の天野方一先生に詳しく教えてもらいました。
男性更年期障害の症状は、身体的・精神的・性的な面で現れることが多く、以下のような特徴があります。
これらの症状が複数みられる場合、男性更年期障害の可能性が考えられます。ただし、症状とテストステロンの分泌量(テストステロン値)は必ずしも一致しないため、正確な診断には専門的な問診や検査が必要です。
男性更年期障害の診断には、AMSスコア(Aging Male Symptomsスコア)と呼ばれる問診票が用いられます。17項目の質問では、身体的、精神的、性的な症状を5段階で評価し、点数化することで症状の程度を把握します。ネット上で「AMSスコア」と検索すると表示されるAMSスコアを利用して自己評価を行ってみるのもよいでしょう。
また、血液検査でテストステロン値を測定することで、減少具合を確認します。ただし、診断では問診が特に重要であり、検査値だけでは結論を出しません。
男性更年期障害の治療法は主に3つあり、症状の重さやテストステロン値によって選ばれる治療法は異なります。
1. 生活習慣の改善
症状が軽い場合は、生活習慣を見直すだけでも改善が期待できます。以下のポイントを実践してみましょう。
男性更年期障害には、栄養バランスの整った食事が重要です。良質なたんぱく質、食物繊維、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを積極的に取り入れましょう。また、テストステロンの生成には適度な糖質とコレステロールが必要です。
ただし、甘いものや炭水化物の取りすぎは内臓脂肪の増加を招き、ホルモンの分泌に悪影響を与えることも。適度な運動を併せて行い、健康的な体を維持しましょう。
2. 薬物療法
生活習慣の改善で効果がみられない場合は、薬物療法を検討します。
3. 男性ホルモン補充療法
ホルモン値が低く、症状が重い場合は、男性ホルモン補充療法を行います。
「やる気が出ない」「集中力がない」「落ち込む」といった症状でメンタルクリニックを受診し、うつ病と誤診されるケースも少なくありません。治療を続けても改善しない場合には、男性更年期障害の可能性を検討することが大切です。
気になる症状がある場合、前述したAMSスコアを利用して自己評価を行いましょう。自分が男性更年期障害かどうかをさらに詳しく知りたい方や治療を希望される方は、専門医療機関での診察をおすすめします。男性更年期を専門としている医療機関などによる診断と適切な治療で、快適な生活を取り戻しましょう。
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イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院 (eHealth clinic 新宿院)」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。