連載新宿の診察室から 定点“患”測

サプリメントを飲んでいる方へ―紅麹サプリメントの健康被害から学ぶべきこと

公開日

2024年08月06日

更新日

2024年08月06日

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2024年08月06日

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イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教

天野 方一 先生

小林製薬が紅麹(べにこうじ)の成分を含む同社のサプリメントを摂取した人に健康被害が出ていることを報告したのは、今年の3月でした。その後、厚生労働省やの研究所、日本腎臓学会などが調査結果や報告を出しており、一体何が起きたのかがだんだん分かりつつあります。

これまでに判明したことは何か、我々はこの件から何を学ぶべきかについて、日本腎臓学会認定の腎臓専門医であるイーヘルスクリニック新宿院の天野方一先生にお話を伺いました。

クリニックに多くの患者さんが訪れた

今年3月22日に小林製薬が会見し、同社のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人に腎臓病を発症している人がいることを明らかにしました。これを受け、厚生労働省は5月28日に「工場内の青カビが培養段階で混入し、『プベルル酸』などの有害化合物が生成されたと推定される」という調査結果を発表。現在も原因物質の最終的な特定が進められており、今回の健康被害が紅麹そのものによるものか、『プベルル酸』が原因なのか、現段階では決定的な情報は得られていない状況です。

実際、私が診察を行っているイーヘルスクリニックにも3月以降、「紅麹サプリメントを飲んでいたから診てほしい」という方が50~60人ほどいらっしゃいました。血液検査をしたところ腎臓の障害が疑われる方が数人いたため、より詳しく検査や治療ができる大きな病院へ紹介状を書いています。この状況から、今回問題となっているサプリメントを摂取していた人は相当な数に上るのではないかと感じています。

ファンコーニ症候群や尿細管間質性腎炎が認められた

健康被害が起きた原因は今後明らかになると考えられますが、抑えておきたいのは3月31日に日本腎臓学会が出した中間報告です。これによれば、紅麹サプリメントを摂取して腎臓病を発症した方には、ブドウ糖や重炭酸塩などが尿に過剰に排泄される「ファンコーニ症候群」に似た症状が出たとされています。また、腎臓の生検では腎臓にある尿細管と周囲の組織に病変が起こる尿細管間質性腎炎、尿細管壊死(えし)、急性尿細管障害が主に認められました。

典型的なサプリメントや薬剤のアレルギー反応の症状、病変が出ている

実はこれらは、腎臓内科の専門医として診察をしている際によく見かける症状、病変です。多くは薬剤への副作用、アレルギー反応から来るもので、抗菌薬やアスピリンのような非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)を服用することで起こりやすいとされています。今回の原因がこのようなサプリメントや薬剤へのアレルギー反応である、とは現段階では言えませんが、報告された健康被害の内容だけ見れば典型的なアレルギー反応の症状、病変だとは言えるでしょう。

サプリや市販薬を飲む人は定期的な検査を

サプリメントや市販薬の使用は一般的には安全ですが、副作用やアレルギー反応自体はまれではあるものの誰にでも起こり得ます。ここで重要なのは、もしサプリメントや市販薬を飲んで体調の異変が起きたら、見過ごすことなくすぐにクリニックで医師の診察を受けることです。クリニックで血液検査を受ければどのような異変が起きているのかが分かり、その後の治療も明確になります。

また、サプリメントや市販薬を服用している方には、副作用を自覚しにくい方もいらっしゃいます。そのような状態を放置しないためにも、普段から定期的に血液検査を受けて、副作用がないか確認することが大切です。

暑い季節に気をつけたいこと

暑い夏の時期には、サプリメントや市販薬の摂取でもう1点、気をつけていただきたいことがあります。自覚症状が出たらすぐに受診しましょう。たとえば基礎疾患として慢性腎臓病を持ち、腰痛のため市販のロキソプロフェンを使用している方がいるとします。夏になり脱水症状が起こると、ロキソプロフェンが腎機能の低下に寄与し、急性腎不全になる可能性があります。吐き気や倦怠(けんたい)感、尿の異変などの自覚症状が出た場合は、すぐにクリニックを受診しましょう。それとともに、繰り返しとなりますが普段から血液検査を受けて自分の体をモニターしておくことが、サプリメントや市販薬を飲まれる方には重要です。

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イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教

天野 方一 先生

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院 (eHealth clinic 新宿院)」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。