イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教
花粉症は3人に1人が悩む一大問題だ。くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状は、日常生活のみならず、集中力や睡眠の質にも悪影響を及ぼし、花粉症が仕事のパフォーマンスに影響を与えると回答した人は患者の約8割に上る。花粉症による経済損失は、推定で5兆円とも言われている。
そこで、花粉症とうまく付き合う秘訣をイーヘルスクリニック新宿院(東京都新宿区)の天野方一院長に聞いた。
「花粉の飛散量は年によって異なります。飛散量によって症状が例年よりも辛い方も多いでしょう。病態の特徴として、年々症状が重くなる傾向にある患者さんもいます。しかし、従来の治療法で効果を感じられなかった方も、諦める必要はありません。新しい薬や治療法が次々と登場しています」と天野氏は語る。
一般的に利用される抗アレルギー薬は、薬局やドラッグストアで購入可能な市販薬として「OTC医薬品」として販売されており、副作用が少なく安全性の高い医療用医薬品を市販薬に転用した「スイッチOTC医薬品」もある。
しかし、医療機関を受診する患者の中には、これらの薬で効果が不十分と感じる方が多い。
「市販薬には手軽に手に入る花粉症薬も多く、患者さんにも定着してきました。ですが、クリニックを受診される方は、症状が重かったり、仕事や学業に支障をきたすため、何とかしてほしいと訴える患者さんが増えています。そのため、我々クリニックはより効果が期待できる新しい抗アレルギー薬の処方にも力を入れています」と天野氏は述べる。
天野氏は、「花粉症は市販薬だけで我慢すればよい」という誤った考え方を改めるべきで、従来の治療が効果を示さない場合でも、新たな治療法を試す価値があると強調する。
以下、クリニックを頼ることでできる花粉症対策のエッセンスを3つにまとめた。
2.の抗体医薬は最も新しい治療法で効果的とされる。
「当院では昨年に抗体医薬(オマリズマブ)注射を受けた患者に対するアンケート調査を実施しました。20名の患者のうち、治療開始前の症状を10とした際の接種後の症状改善度を尋ねたところ、11人が『2以下』と回答。また約85%の方が来年も接種を希望し、約60%の方が花粉症で悩む家族や同僚にオマリズマブ(商品名:ゾレア)を推奨したいと回答した」と天野氏は言う。
一方で現時点ではあくまで重症者が対象という制限がある。
「オマリズマブはすべての患者に適しているわけではありません。保険適用の条件には、『前シーズンでも重症な症状があった』『スギ花粉のアレルギー検査の結果が陽性』などが含まれます。治療前には慎重な検査が必要です」と天野氏は説明する。
費用も高額になることがあるため、注意が必要だ。
「高い効果が期待されるものの、バイオ医薬品は製造工程が異なり、薬価が高い傾向にあります。オマリズマブの投与量と投与間隔は血中IgE濃度と体重に基づきますが、自己負担額は月に約4500円から7万円です」
花粉症の治療は、症状の程度や体質、治療の経済合理性をどう捉えるかによって、さまざまな選択肢がある時代になった。アレルギーの程度は血液検査等によって定量的に示されるものであり、自分に合った治療法を選択するためにも、まずは自身の体について知ることから始めることが良いだろう。
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イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院 (eHealth clinic 新宿院)」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。