連載新宿の診察室から 定点“患”測

重い花粉症の方に朗報!花粉症の最新治療で快適な生活を手に入れよう

公開日

2024年03月08日

更新日

2024年03月08日

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2024年03月08日

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イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教

天野 方一 先生

花粉症は3人に1人が悩む一大問題だ。くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状は、日常生活のみならず、集中力や睡眠の質にも悪影響を及ぼし、花粉症が仕事のパフォーマンスに影響を与えると回答した人は患者の約8割に上る。花粉症による経済損失は、推定で5兆円とも言われている。

そこで、花粉症とうまく付き合う秘訣をイーヘルスクリニック新宿院(東京都新宿区)の天野方一院長に聞いた。

イーヘルスクリニック新宿院 天野方一院長

市販薬と医療機関で処方される医療用医薬品の違い

「花粉の飛散量は年によって異なります。飛散量によって症状が例年よりも辛い方も多いでしょう。病態の特徴として、年々症状が重くなる傾向にある患者さんもいます。しかし、従来の治療法で効果を感じられなかった方も、諦める必要はありません。新しい薬や治療法が次々と登場しています」と天野氏は語る。

一般的に利用される抗アレルギー薬は、薬局やドラッグストアで購入可能な市販薬として「OTC医薬品」として販売されており、副作用が少なく安全性の高い医療用医薬品を市販薬に転用した「スイッチOTC医薬品」もある。

しかし、医療機関を受診する患者の中には、これらの薬で効果が不十分と感じる方が多い。

「市販薬には手軽に手に入る花粉症薬も多く、患者さんにも定着してきました。ですが、クリニックを受診される方は、症状が重かったり、仕事や学業に支障をきたすため、何とかしてほしいと訴える患者さんが増えています。そのため、我々クリニックはより効果が期待できる新しい抗アレルギー薬の処方にも力を入れています」と天野氏は述べる。

天野氏は、「花粉症は市販薬だけで我慢すればよい」という誤った考え方を改めるべきで、従来の治療が効果を示さない場合でも、新たな治療法を試す価値があると強調する。

医療用医薬品による花粉症への3つのアプローチ

以下、クリニックを頼ることでできる花粉症対策のエッセンスを3つにまとめた。

  1. 早めの対策で症状軽減
     花粉症は、シーズン前からの対策が重要だ。花粉飛散開始の2週間前から抗アレルギー薬を服用することで、症状の出現を抑え、ピークを緩やかにすることができる。
  2. 重症患者には抗体医薬(オマリズマブ)注射
    従来の治療法で効果が不十分な重症患者には、抗体医薬という新たな治療法が認可された。体内のIgE抗体を抑制することで、アレルギー症状を根本から改善する医薬品だ。
  3. 寛解を目指す舌下免疫療法
    花粉症を根本的に治したい患者には、舌下免疫療法という選択肢がある。スギ花粉エキスを舌下投与することで、体質を徐々に改善し、症状を抑えていく。内服期間は数年に及び、治療開始時期は花粉症の飛散時期を避ける必要があるなど制約もあるが、現状唯一の寛解を目指す治療法だ。

2.の抗体医薬は最も新しい治療法で効果的とされる。

「当院では昨年に抗体医薬(オマリズマブ)注射を受けた患者に対するアンケート調査を実施しました。20名の患者のうち、治療開始前の症状を10とした際の接種後の症状改善度を尋ねたところ、11人が『2以下』と回答。また約85%の方が来年も接種を希望し、約60%の方が花粉症で悩む家族や同僚にオマリズマブ(商品名:ゾレア)を推奨したいと回答した」と天野氏は言う。

花粉症グラフ

一方で現時点ではあくまで重症者が対象という制限がある。

「オマリズマブはすべての患者に適しているわけではありません。保険適用の条件には、『前シーズンでも重症な症状があった』『スギ花粉のアレルギー検査の結果が陽性』などが含まれます。治療前には慎重な検査が必要です」と天野氏は説明する。

費用も高額になることがあるため、注意が必要だ。

「高い効果が期待されるものの、バイオ医薬品は製造工程が異なり、薬価が高い傾向にあります。オマリズマブの投与量と投与間隔は血中IgE濃度と体重に基づきますが、自己負担額は月に約4500円から7万円です」

花粉症の治療は、症状の程度や体質、治療の経済合理性をどう捉えるかによって、さまざまな選択肢がある時代になった。アレルギーの程度は血液検査等によって定量的に示されるものであり、自分に合った治療法を選択するためにも、まずは自身の体について知ることから始めることが良いだろう。

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イーヘルスクリニック新宿院 院長、帝京大学大学院公衆衛生学研究科 非常勤講師、久留米大学医学部公衆衛生学講座 助教

天野 方一 先生

埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院 (eHealth clinic 新宿院)」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。