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連載髙久史麿先生厳選 世界の医療情報

緑茶は認知症にも肥満にも効果あり?

公開日

2020年09月29日

更新日

2020年09月29日

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2020年09月29日

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公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長

髙久 史麿 先生

以前、アルツハイマー病についての男女間の差、男性では身長による発症の差を紹介した。これ以外にも、この病気に関してはさまざまな観点から多くの研究が進められている。今回はそうした研究からいくつか、新しい知見を紹介する。

おなか周りで認知症リスクが予測可能?

最初の報告は2019年11月5日のMEDICAL NEWS TODAYで紹介された韓国・高麗大学九老病院(Korea University Guro Hospital in Seoul)のHye Jin Yoo准教授によって行われた研究「Does waist size predict dementia risk?(腹囲によって認知症リスクを予測できるか)」である。Yoo氏らは65歳以上の87万2082人を対象にして2009年から2015年にわたって認知症発症までの経過を追っている。その結果としてウエストのサイズが男性では90cm、女性では85cm以上の人は認知症になる危険度が高いことを報告している。対象者は同時に喫煙、アルコール摂取量、運動量、収入、糖尿病や血管障害の有無などについて検査し、危険度の上昇は、年齢、BMI、血圧、血中コレステロール値、肝機能、その他の生活様式などの要因による補正を行っても存在するとのことである。

わが国では以前からBMIと生活習慣病との関係が周知の事実とされており、最近ではBMIの中でも特にウエストサイズと生活習慣病との関係が注目されている。その中に認知症も含まれているというこの報告は、注目に値すると考える。

オリーブ油で認知症の早期兆候が減少

次にオリーブ油とアルツハイマー病との関連についての報告をご紹介したい。この記事は2019年11月27日発行のMEDICAL NEWS TODAYにAna Sandoiuが報告した、エキストラバージン(一番しぼり特上)オリーブ油が認知症を防ぐという、マウスを使った実験結果である。

エキストラバージンオリーブ油が血中コレステロール値を下げ、心疾患の危険度を下げることは以前から知られていた。MEDICAL NEWS TODAYは数年前にエキストラバージンオリーブ油がマウスのアルツハイマー病の早期兆候を減少させることを紹介している。更に最新情報として、米国フィラデルフィアのテンプル大学、薬学・微生物学トランスレーショナルメディシンセンター教授、Dr. Domenico Praticò氏の研究を紹介している。

Praticò教授らは、認知症の要因となる脳の神経細胞の変性を引き起こすと考えられている「タウたんぱく」が脳内に蓄積するよう遺伝的に改変したマウス(taupathyマウス)を用い、このマウスに生後6カ月(ヒトでは30歳)からエキストラバージンオリーブ油を投与し始め、生後1年目(ヒトでは60歳)に対照群のマウスの脳と比較した。その結果、エキストラバージンオリーブ油投与群のマウスの脳では、対照群に比べてタウたんぱくの蓄積が60%少なかったことを見出している。

オリーブ油を多く使った「地中海食」の効能は2017年7月17日にCNNで報告されている。今回の記事の内容は、改めてオリーブ油の認知症に対する有効性を確認したといえよう。ちなみに、私は毎朝オリーブ油を敷いたお皿にヨーグルトを盛り付けて食べている。

緑茶で原因物質の形成を阻止

アルツハイマー病に関する次の報告は、やや以前の2017年10月16日発行のMEDICAL NEWS TODAYで紹介されたカナダ・マクマスター大学化学・化学生物学部に所属するGiuseppe Melacini氏によってJournal of the American Chemical Societyに報告された研究である。

この研究でMelacini氏のグループは、緑茶のポリフェノールであるエピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate=EGCG)がアルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドβプラークの形成を阻止することを、核磁気共鳴を用いて見出している。

Melacini氏らはEGCGが毒性のあるアミロイドβオリゴマーを覆い隠すことにより、アミロイドβたんぱくが増大して正常な脳神経を傷害するのを防ぐことを報告している。著者らは緑茶から有効成分を抽出してアルツハイマー病の初期症状が表れる前に投与するとよいと推奨している。

私の知識では、この論文が出された2017年にはアルツハイマー病におけるタウたんぱくの関与の重要性は現在ほど強調されていなかったと思うが、Melacini氏が推定したEGCGの役割がタウたんぱくの形成にも当てはまるかもしれないと想像される。

いずれにせよ日本人が長年愛飲してきた緑茶がアルツハイマー病の発症に予防的に働く可能性が示唆されたことは、朗報であるといえよう。

緑茶は肥満にも効果?

ウエストを測る女性
写真:Pixta


緑茶に関しては肥満に対する効果も報告されている。2019年3月14日のMEDICAL NEWS TODAYで報告された緑茶に関する記事「Could green tea help fight obesity?(緑茶は肥満との戦いに役立つか)」である。研究を行ったのは米オハイオ州立大学のRichard Bruno教授らで、その結果はJournal of Nutritional Biochemistryに掲載されている。

彼らは緑茶の摂取が腸内細菌に作用し、肥満や、肥満に関連して起こる疾患の発症に影響を与えるのではないかということを研究している。

彼らは実験にマウスを使い、標準食群と高脂肪食群に分け、8週間にわたって観察している。両群中の半分のマウスに緑茶の抽出物を投与し、8週目にマウスの腸管の透過性、腸管壁の浸漏性(leaky gut)を測定している。なおleaky gutは腸管の炎症に関係するとされている。彼らはマウスの腸内細菌叢(さいきんそう)や血中エンドトキシン値の測定も行っている(エンドトキシンは腸内細菌叢によって作られ、炎症、更にインスリン抵抗性を引き起こすことが知られている)。その結果、緑茶が腸管内の善玉菌を増加させ、同時に肥満も有意に抑えることを見出し報告している。また、緑茶投与マウスでは炎症が軽く、かつ血中エンドトキシン値の低下がみられたとのことである。

なお、緑茶をとった通常食のマウスでも同様な効果がみられたが、高脂肪食のマウスほど顕著ではなかったと記載している。人間の場合、この実験に使った緑茶抽出物に相当する量を摂取するためには1日10杯ほどの緑茶を飲む必要があり、あまり現実的ではないかもしれない。

いずれにしても緑茶が健康に良いことは間違いなく、安心してお茶を飲めることは我々日本人には朗報である。

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公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長

髙久 史麿 先生

公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長。1954年東京大学医学部卒業後、シカゴ大学留学などを経て、自治医科大学内科教授に就任、同大学の設立に尽力する。また、1982年には東京大学医学部第三内科教授に就任し、選挙制度の見直しや分子生物学の導入などに力を注ぐ。1971年には論文「血色素合成の調節、その病態生理学的意義」でベルツ賞第1位を受賞、1994年に紫綬褒章、2012年には瑞宝大綬章を受賞する。